2022年03月17日 (木) | 編集 |
FC2 トラックバックテーマ:「子供の時に好きだったおもちゃは?」
太陽が沈むと、辺りは、夜の闇に覆われます。 日中、活動する動物たちに
とっては、恐怖の時間の始まりです。 目は、もはや全く頼りになりません。
不安をかきたてる恐ろしい鳴き声が、暗闇に響き渡ります。 1つ1つの音が、
背筋を凍らせます。 そんな夜の闇を物ともせずに気ままに動く動物がいます。
フクロウです。 闇の世界に君臨するハンター。 鋭いカギ爪と、鋼のような
口ばしで、音もなく獲物に襲いかかります。 暗闇のスーパーハンター。
フクロウの、その知られざる生態に迫ります。
ワシミミズクの繁殖は凍てつく冬に始まります。夕暮れが迫る渓谷に求愛の鳴
き声がこだまします。 オスとメスは互いに鳴き合い相手の縄張りを訪れます。
冷たい空気によって遠くまで運ばれた鳴き声は、こだまとなって渓谷中に響き
渡ります。 森に春は、まだ訪れていません。 落葉樹の枝が、枯れた葉を
とどめています。 この森には、また別のフクロウが暮らしています。
モリフクロウです。 モリフクロウには、ワシミミズクにある、耳のように見える
飾り羽はありません。 羽の色は、日中でも森に溶け込む事ができる保護色
です。 目を、ほぼ閉じて、動かずに日が沈むのを待っています。
そして夕暮れ時。 暗闇のハンターが本領を発揮します。 モリフクロウは、
暗闇でも優れた視力を誇り、月明かりがかすかに照らす木々の間も飛ぶ事が
できます。 更に、他のフクロウと同じように、ほぼ音を立てずに飛行します。
ネズミは、モリフクロウが近くにいる事に気付いていません。 モリフクロウは、
毎晩、7匹ほどのネズミを捕らえます。 150グラムのステーキ肉と同じぐらいの
量です。
モリフクロウは、落葉樹の森の生態系において、ネズミなど、げっ歯類の数を
コントロールする重要な役割を担っています。
一方、南方の平野では冬が、ほぼ終わりを迎え、春が訪れようとしています。
けたたましい鳴き声が、辺りの空気をかき乱します。 コキンメフクロウです。
畑に積み上げられた石の隙間や太いオリーブの木の幹を住みかとしています。
今は、繁殖期の真っただ中…。 コキンメフクロウの体長は、20センチあまり、
小柄なフクロウです。
畑など、人間の領域に踏み込んで来る事も珍しくありません。 夕暮れの中、
パートナーに出会えたようです。
コキンメフクロウのように、人間の存在をあまり意識せずに暮らすフクロウが
いる一方で、多くは人間を避ける傾向にあります。 ワシミミズクも人里離れた
自然の環境での暮らしを好みます。
ワシミミズクは、雨風を避けられる岩場に直接、卵を産みます。 暗闇を物とも
しない恐ろしいハンターですが、無敵というわけではありません。
日中、その縄張りを支配しているのは… 他の猛きん類やキツネ。
ワシミミズクにとって、宿敵ともいえる捕食動物です。
メスは、敵に見つからないようにジッとしています。 卵と自分の身を守るため
です。 メスが卵を温める間、オスも、そばで見守っています。 食料を調達し
家族を支えるのは、オスの役目なのです。
日が落ちると、夜行性の動物たちが活発に活動を始めます。 夜の世界の
頂点に立つのが、フクロウです。 ほぼ真っ暗闇の中でも、難なく狩りをする
事ができます。
フクロウの目は、鳥類の中でも極めて大きく、何千もの光受容細胞があり、
僅かな光を捉える事ができます。 そのため、ほぼ完ぺきな夜間視力が
備わっています。 とはいえ、夜しか狩りをしない、というわけではありません。
ワシミミズクの獲物の1つ、ハリネズミ。 夕暮れ時になると、食べ物を探しに
出掛けます。 その動きは、とても、のんびり。 体を覆う鋭い針が、大半の
敵から身を守ってくれるので、ハリネズミは素早く動く必要がありません。
キツネです。 とがった針は、賢いキツネからも身を守ってくれるのでしょうか?
キツネは、かみつく場所を見つけられず、引き揚げました。
しかし、突き刺すような鎧を身にまとっているハリネズミも、いつも安全でいら
れるわけではありません。
アメリカワシミミズクが、ハリネズミを視界に捉えました。 ハリネズミの針の
鎧を破る方法を心得ている、数少ないハンターです。 アメリカワシミミズクの
前には、ハリネズミも、なす術がありませんでした。
アメリカワシミミズクの1番の好物は、ウサギです。 とはいえ、夜のスーパー
ハンターであるフクロウは、猛きん類から幼いキツネまで、あらゆるものを
獲物にします。 他の捕食者を狩る事は、有効な戦略です。
食料を巡るライバルを、消し去る事ができるからです。 捕食者同士の戦いは
残酷かつ、熾烈です。 キツネが、岩場をウロついています。
キツネとフクロウは、どちらもウサギなどの小動物を獲物にしており、食料を
巡ってライバル関係にあります。
メスのワシミミズクが、キツネの動きを見つめています。 キツネもフクロウも、
ライバルを倒し獲物にできるならば、そのチャンスを逃しません。(威嚇する声)
何とか、追い払いました。 しかしキツネは、フクロウから見えないように回り
込みます。 メスのワシミミズクは、間一髪で逃れますが、卵を守る事はでき
ませんでした。 ほんの一瞬にして、新しい家族を奪われてしまいました。
今回は、キツネの勝利です。 将来のライバルを、一気に片付けました。
しかし、捕食者同士の戦いは、これからも続きます。
敵に襲われるリスクを避けるため、人間の建物を住みかにするフクロウもいま
す。 メンフクロウです。 この小柄なフクロウは、人けのない廃屋を、自然の
崖に見立てて暮らしています。
人間が造った建物で暮らす事には、利点があります。 悪天候や捕食者から
守ってくれるからです。 屋根裏から声がします。 ヒナです。 メンフクロウの
母親は、卵を産むと、すぐに温め始めます。
母親が全部の卵を産むまでには、10日ほどかかり、ヒナは母親が卵を産んだ
順に、かえります。 そのため、ヒナの大きさが異なるのです。 食料が十分、
手に入れば、全てのヒナが生き延びる事ができるでしょう。
人間が暮らす周辺には、ネズミが多く生息しています。 ネズミの狙いは人間
の食料や作物。 ネズミを獲物とするフクロウにとっては、理想的な場所です。
巣では、お腹を空かせた、4羽のヒナが待っています。 親は、食料の調達に
絶えず奮闘しなくてはなりません。 食料の調達は、主に父親の仕事です。
優れた感覚を駆使して、休む事なく縄張りをチェックします。
メンフクロウは、ネズミなどの小動物を毎晩、3~5匹、捕獲しなければなりま
せん。 他の多くの動物とは異なり、鳥類は脂肪をため込む事ができないから
です。 脂肪をためられないと、エネルギーを貯蓄できません。
そのため、フクロウは餓死しないよう、休みなく狩りをしなければならないの
です。 フクロウの視覚と聴覚は極めて鋭く、ほぼ真っ暗闇の中でも、狩りを
行う事ができます。 ネズミたちは、一心不乱に食事をしています。
オスは、すぐさま、子供たちの待つ巣へと戻ります。 子供たちは、いつだって
お腹を空かせています。
一方、河辺の切り立った崖では、キツネに卵を奪われたワシミミズクのつがいが
2度目の子育てをしています。 今度は、キツネの手が届かない安全な場所に
巣を構えました。 ヒナたちは、すでに卵から、かえっています。
これから、およそ4カ月の間、両親はヒナたちのために、暖かさと安全、そして
食料を確保する必要があります。 そうしてヒナたちは、恐ろしい夜のハンター
へと成長を遂げるのです。
しかし、今はまだ、ヒナたちは、無邪気な毛玉の塊にしか見えません。
田園地帯では、コキンメフクロウが、忙しい日々を送っています。 大人の
コキンメフクロウの体のサイズは、ワシミミズクの小さいヒナと同じくらい。
しかし小さくとも恐ろしいハンターです。 コキンメフクロウも子育て真っ最中。
数日前に生まれたばかりのヒナたちのために懸命に狩りをします。ヒナたちは
オリーブの木の穴の中にいます。 生後数週間は、食事と同じくらい体温を
保つ事も大切です。 母親は狩りから戻ると、何時間もヒナの体を温めます。
フクロウには、さまざまな種があり、それぞれ体のサイズに見合った量の獲物
を食べます。 体が小さいコキンメフクロウが狩るのは、小鳥やネズミ・昆虫
です。 こちらは、コキンメフクロウの数倍大きい、トラフズク。
ネズミなどの、げっ歯類を獲物にしています。 トラフズクは、人里離れた松林
などに、ひっそりと暮らしています。 日中は、周囲を観察する目も半開き。
羽を体にペタリと寝かしたまま、僅かに動くだけです。
ところが日が陰り始めると目を覚まし、驚くほど変貌します。 狩りの時間です。
お気に入りの枝へ移動し、地上の様子を探ります。 トラフズクも他の夜行性の
猛きん類と同様、聴力を駆使して狩りをします。
高い位置から獲物であるネズミが立てる、かすかな音を捉えます。音を捉えた
トラフズクは、頭を回転させて、音が発せられた場所を探ります。 フクロウは
目は、ほとんど動かせませんが、頭は自在に動かせます。
ついに、音の出どころを特定しました。 食べる事に夢中のネズミは、全く気付
いていません。 あとは、静かに舞い降りるだけ…。 (狩りに成功)
フクロウの武器は、並外れた視覚と聴覚だけではありません。 カーブした長く
鋭い爪も、狩りには欠かせません。 フクロウなどの捕食動物が生き残れる
かは、ネズミの数にかかっています。
一方で、捕食動物は生態系におけるネズミの数を適正に抑える役割も担って
います。 捕食動物がいなければネズミは増え続け、旺盛な食欲で森を丸裸
にしてしまうでしょう。
ネズミの数の変化は、捕食動物の生態にも大きく影響します。 メンフクロウの
ヒナは、ネズミの数が多ければ10羽以上、育つ事もあります。 しかし少ないと
全てのヒナが生き残る事はできません。
この年は、ネズミの数が十分ではありませんでした。 卵から、かえった4羽の
ヒナのうち、1番小さなヒナが死んでしまいました。 先に生まれたヒナたちが、
親の運ぶ食料を全て平らげてしまったからです。
1番小さなヒナは、自分の分け前を得るために、戦う事ができませんでした。
全てのヒナに行き渡るだけのネズミが、いなかった事による悲劇です。
一方、高い崖の上に巣を構えたワシミミズクの一家には、食料不足の心配は
ないようです。 ヒナたちは、すくすくと育ち、体も大きくなりました。 それでも
母親は、まだ、そばに寄り添っています。
父親は、家族のために食料を探しています。 ワシミミズクは、夜のハンターの
中でも頂点に立ちます。 1番の好物はウサギですが、魚からヘビまで300種
以上もの動物を獲物にします。
とはいえ、ウサギがいるなら迷う事はありません。 どうやら、ここはウサギが
多く生息する場所のようです。 ウサギもフクロウも、日が暮れる頃に目を覚
まします。 いよいよ、狩りのスタートです。
すばしっこいウサギを狩るのは、簡単な事ではありません。フクロウにとっても
命懸けです。 しかし、フクロウは究極のハンターです。 スピード、静けさ、
そして粘り強さ。 卓越した狩りの能力を、遺憾なく発揮します。
何度も襲撃を繰り返し、ようやく獲物を捕まえる事ができました。 ヒナたちが
待つ、巣へと戻りました。
田園地帯ではコキンメフクロウのヒナも、ぐんぐん成長し外の世界に興味津々
です。 安全なオリーブの木の穴から出て、親の帰りを待っています。 親は、
子供たちのために、休みなく狩りをしています。
子供たちは、いつも、お腹を空かせています。 巣穴の前で待ち構える子供
たち。 ただし、異変があれば、すぐに避難します。 春が訪れてから、だいぶ
時が経ちました。
アフリカで冬を越していたコノハズクが繁殖のために涼しい森林地帯に戻って
来る季節になりました。 コノハズクは、渡りをする珍しいフクロウです。 体重
100グラム、体長20センチほどの小さな体で、何千キロもの距離を旅します。
越冬地から到着するとコノハズクは、まず繁殖相手を見つけ、卵を産むために
ちょうどよい木の穴を探します。 子供を育てるための時間は、一夏しかありま
せん。 春は、足早に終わりを迎えようとしています。
廃屋では、メンフクロウのヒナが大きく成長しています。 最終的に、3羽の
ヒナが生き延びました。 もうすぐ、巣立ちの時を迎えます。 父親は、夜通し
狩りを続けています。 目まぐるしい毎日です。 次々にネズミを運ぶものの、
子供たちは、一気に飲み込んでしまいます。
崖の上では、ワシミミズクの子供も、大きく育ちました。 巣から飛び出したい
願望が強まり、翼を広げて練習をします。
試しに飛んでみたり、初めて見るものに、興味を引かれたりしています。
それでも、両親は常に、近くにとどまっています。 幼いフクロウちの羽は、
生えそろっていますが、あと数週間は、親に頼って生きる必要があります。
初夏。 ほとんどのフクロウは、子育てのラストスパートに入っています。
アフリカから戻って来た小さなコノハズクは、子育て真っ最中。 父親は日中は
木々に姿を紛らせながら、巣の近くで周囲を監視しています。 母親は、卵を
温めながら、すでに、かえった2羽のヒナも温めています。
ヒナたちは、猛スピードで成長しています。 日が暮れて、父親が夜の狩りを
始めるまで、食事には、ありつけません。 コノハズクは、昆虫を食料としてい
ます。 主な獲物は、バッタやイナゴ、チョウなどです。
コノハズクは小柄ですが、ワシミミズクと同じくらい、どう猛なハンターです。
毎晩、何十匹もの昆虫を捕らえます。 コノハズクが家族のために、せっせと
狩りをする頃… ワシミミズクの子供たちは、それぞれの縄張りを求めて、
すでに巣立って行きました。
ワシミミズクが、キツネに最初の卵を奪われてから、数カ月が経ちました。
ハンター同士の戦いに終わりはありません。 ワシミミズクが、まだ幼いキツネ
の子供に狙いを定めます。
宿命のライバルとの戦いは容赦なく繰り広げられます。 夜の生態系に君臨し
ネズミや昆虫の数をコントロールするフクロウ。
しかし卓越したハンターも無敵ではありません。 獲物の数と直結する生存率。
ライバルたちとの終わりなき戦い。 暗闇のスーパーハンター、フクロウもまた
過酷な自然を生きているのです。
太陽が沈むと、辺りは、夜の闇に覆われます。 日中、活動する動物たちに
とっては、恐怖の時間の始まりです。 目は、もはや全く頼りになりません。
不安をかきたてる恐ろしい鳴き声が、暗闇に響き渡ります。 1つ1つの音が、
背筋を凍らせます。 そんな夜の闇を物ともせずに気ままに動く動物がいます。
フクロウです。 闇の世界に君臨するハンター。 鋭いカギ爪と、鋼のような
口ばしで、音もなく獲物に襲いかかります。 暗闇のスーパーハンター。
フクロウの、その知られざる生態に迫ります。
ワシミミズクの繁殖は凍てつく冬に始まります。夕暮れが迫る渓谷に求愛の鳴
き声がこだまします。 オスとメスは互いに鳴き合い相手の縄張りを訪れます。
冷たい空気によって遠くまで運ばれた鳴き声は、こだまとなって渓谷中に響き
渡ります。 森に春は、まだ訪れていません。 落葉樹の枝が、枯れた葉を
とどめています。 この森には、また別のフクロウが暮らしています。
モリフクロウです。 モリフクロウには、ワシミミズクにある、耳のように見える
飾り羽はありません。 羽の色は、日中でも森に溶け込む事ができる保護色
です。 目を、ほぼ閉じて、動かずに日が沈むのを待っています。
そして夕暮れ時。 暗闇のハンターが本領を発揮します。 モリフクロウは、
暗闇でも優れた視力を誇り、月明かりがかすかに照らす木々の間も飛ぶ事が
できます。 更に、他のフクロウと同じように、ほぼ音を立てずに飛行します。
ネズミは、モリフクロウが近くにいる事に気付いていません。 モリフクロウは、
毎晩、7匹ほどのネズミを捕らえます。 150グラムのステーキ肉と同じぐらいの
量です。
モリフクロウは、落葉樹の森の生態系において、ネズミなど、げっ歯類の数を
コントロールする重要な役割を担っています。
一方、南方の平野では冬が、ほぼ終わりを迎え、春が訪れようとしています。
けたたましい鳴き声が、辺りの空気をかき乱します。 コキンメフクロウです。
畑に積み上げられた石の隙間や太いオリーブの木の幹を住みかとしています。
今は、繁殖期の真っただ中…。 コキンメフクロウの体長は、20センチあまり、
小柄なフクロウです。
畑など、人間の領域に踏み込んで来る事も珍しくありません。 夕暮れの中、
パートナーに出会えたようです。
コキンメフクロウのように、人間の存在をあまり意識せずに暮らすフクロウが
いる一方で、多くは人間を避ける傾向にあります。 ワシミミズクも人里離れた
自然の環境での暮らしを好みます。
ワシミミズクは、雨風を避けられる岩場に直接、卵を産みます。 暗闇を物とも
しない恐ろしいハンターですが、無敵というわけではありません。
日中、その縄張りを支配しているのは… 他の猛きん類やキツネ。
ワシミミズクにとって、宿敵ともいえる捕食動物です。
メスは、敵に見つからないようにジッとしています。 卵と自分の身を守るため
です。 メスが卵を温める間、オスも、そばで見守っています。 食料を調達し
家族を支えるのは、オスの役目なのです。
日が落ちると、夜行性の動物たちが活発に活動を始めます。 夜の世界の
頂点に立つのが、フクロウです。 ほぼ真っ暗闇の中でも、難なく狩りをする
事ができます。
フクロウの目は、鳥類の中でも極めて大きく、何千もの光受容細胞があり、
僅かな光を捉える事ができます。 そのため、ほぼ完ぺきな夜間視力が
備わっています。 とはいえ、夜しか狩りをしない、というわけではありません。
ワシミミズクの獲物の1つ、ハリネズミ。 夕暮れ時になると、食べ物を探しに
出掛けます。 その動きは、とても、のんびり。 体を覆う鋭い針が、大半の
敵から身を守ってくれるので、ハリネズミは素早く動く必要がありません。
キツネです。 とがった針は、賢いキツネからも身を守ってくれるのでしょうか?
キツネは、かみつく場所を見つけられず、引き揚げました。
しかし、突き刺すような鎧を身にまとっているハリネズミも、いつも安全でいら
れるわけではありません。
アメリカワシミミズクが、ハリネズミを視界に捉えました。 ハリネズミの針の
鎧を破る方法を心得ている、数少ないハンターです。 アメリカワシミミズクの
前には、ハリネズミも、なす術がありませんでした。
アメリカワシミミズクの1番の好物は、ウサギです。 とはいえ、夜のスーパー
ハンターであるフクロウは、猛きん類から幼いキツネまで、あらゆるものを
獲物にします。 他の捕食者を狩る事は、有効な戦略です。
食料を巡るライバルを、消し去る事ができるからです。 捕食者同士の戦いは
残酷かつ、熾烈です。 キツネが、岩場をウロついています。
キツネとフクロウは、どちらもウサギなどの小動物を獲物にしており、食料を
巡ってライバル関係にあります。
メスのワシミミズクが、キツネの動きを見つめています。 キツネもフクロウも、
ライバルを倒し獲物にできるならば、そのチャンスを逃しません。(威嚇する声)
何とか、追い払いました。 しかしキツネは、フクロウから見えないように回り
込みます。 メスのワシミミズクは、間一髪で逃れますが、卵を守る事はでき
ませんでした。 ほんの一瞬にして、新しい家族を奪われてしまいました。
今回は、キツネの勝利です。 将来のライバルを、一気に片付けました。
しかし、捕食者同士の戦いは、これからも続きます。
敵に襲われるリスクを避けるため、人間の建物を住みかにするフクロウもいま
す。 メンフクロウです。 この小柄なフクロウは、人けのない廃屋を、自然の
崖に見立てて暮らしています。
人間が造った建物で暮らす事には、利点があります。 悪天候や捕食者から
守ってくれるからです。 屋根裏から声がします。 ヒナです。 メンフクロウの
母親は、卵を産むと、すぐに温め始めます。
母親が全部の卵を産むまでには、10日ほどかかり、ヒナは母親が卵を産んだ
順に、かえります。 そのため、ヒナの大きさが異なるのです。 食料が十分、
手に入れば、全てのヒナが生き延びる事ができるでしょう。
人間が暮らす周辺には、ネズミが多く生息しています。 ネズミの狙いは人間
の食料や作物。 ネズミを獲物とするフクロウにとっては、理想的な場所です。
巣では、お腹を空かせた、4羽のヒナが待っています。 親は、食料の調達に
絶えず奮闘しなくてはなりません。 食料の調達は、主に父親の仕事です。
優れた感覚を駆使して、休む事なく縄張りをチェックします。
メンフクロウは、ネズミなどの小動物を毎晩、3~5匹、捕獲しなければなりま
せん。 他の多くの動物とは異なり、鳥類は脂肪をため込む事ができないから
です。 脂肪をためられないと、エネルギーを貯蓄できません。
そのため、フクロウは餓死しないよう、休みなく狩りをしなければならないの
です。 フクロウの視覚と聴覚は極めて鋭く、ほぼ真っ暗闇の中でも、狩りを
行う事ができます。 ネズミたちは、一心不乱に食事をしています。
オスは、すぐさま、子供たちの待つ巣へと戻ります。 子供たちは、いつだって
お腹を空かせています。
一方、河辺の切り立った崖では、キツネに卵を奪われたワシミミズクのつがいが
2度目の子育てをしています。 今度は、キツネの手が届かない安全な場所に
巣を構えました。 ヒナたちは、すでに卵から、かえっています。
これから、およそ4カ月の間、両親はヒナたちのために、暖かさと安全、そして
食料を確保する必要があります。 そうしてヒナたちは、恐ろしい夜のハンター
へと成長を遂げるのです。
しかし、今はまだ、ヒナたちは、無邪気な毛玉の塊にしか見えません。
田園地帯では、コキンメフクロウが、忙しい日々を送っています。 大人の
コキンメフクロウの体のサイズは、ワシミミズクの小さいヒナと同じくらい。
しかし小さくとも恐ろしいハンターです。 コキンメフクロウも子育て真っ最中。
数日前に生まれたばかりのヒナたちのために懸命に狩りをします。ヒナたちは
オリーブの木の穴の中にいます。 生後数週間は、食事と同じくらい体温を
保つ事も大切です。 母親は狩りから戻ると、何時間もヒナの体を温めます。
フクロウには、さまざまな種があり、それぞれ体のサイズに見合った量の獲物
を食べます。 体が小さいコキンメフクロウが狩るのは、小鳥やネズミ・昆虫
です。 こちらは、コキンメフクロウの数倍大きい、トラフズク。
ネズミなどの、げっ歯類を獲物にしています。 トラフズクは、人里離れた松林
などに、ひっそりと暮らしています。 日中は、周囲を観察する目も半開き。
羽を体にペタリと寝かしたまま、僅かに動くだけです。
ところが日が陰り始めると目を覚まし、驚くほど変貌します。 狩りの時間です。
お気に入りの枝へ移動し、地上の様子を探ります。 トラフズクも他の夜行性の
猛きん類と同様、聴力を駆使して狩りをします。
高い位置から獲物であるネズミが立てる、かすかな音を捉えます。音を捉えた
トラフズクは、頭を回転させて、音が発せられた場所を探ります。 フクロウは
目は、ほとんど動かせませんが、頭は自在に動かせます。
ついに、音の出どころを特定しました。 食べる事に夢中のネズミは、全く気付
いていません。 あとは、静かに舞い降りるだけ…。 (狩りに成功)
フクロウの武器は、並外れた視覚と聴覚だけではありません。 カーブした長く
鋭い爪も、狩りには欠かせません。 フクロウなどの捕食動物が生き残れる
かは、ネズミの数にかかっています。
一方で、捕食動物は生態系におけるネズミの数を適正に抑える役割も担って
います。 捕食動物がいなければネズミは増え続け、旺盛な食欲で森を丸裸
にしてしまうでしょう。
ネズミの数の変化は、捕食動物の生態にも大きく影響します。 メンフクロウの
ヒナは、ネズミの数が多ければ10羽以上、育つ事もあります。 しかし少ないと
全てのヒナが生き残る事はできません。
この年は、ネズミの数が十分ではありませんでした。 卵から、かえった4羽の
ヒナのうち、1番小さなヒナが死んでしまいました。 先に生まれたヒナたちが、
親の運ぶ食料を全て平らげてしまったからです。
1番小さなヒナは、自分の分け前を得るために、戦う事ができませんでした。
全てのヒナに行き渡るだけのネズミが、いなかった事による悲劇です。
一方、高い崖の上に巣を構えたワシミミズクの一家には、食料不足の心配は
ないようです。 ヒナたちは、すくすくと育ち、体も大きくなりました。 それでも
母親は、まだ、そばに寄り添っています。
父親は、家族のために食料を探しています。 ワシミミズクは、夜のハンターの
中でも頂点に立ちます。 1番の好物はウサギですが、魚からヘビまで300種
以上もの動物を獲物にします。
とはいえ、ウサギがいるなら迷う事はありません。 どうやら、ここはウサギが
多く生息する場所のようです。 ウサギもフクロウも、日が暮れる頃に目を覚
まします。 いよいよ、狩りのスタートです。
すばしっこいウサギを狩るのは、簡単な事ではありません。フクロウにとっても
命懸けです。 しかし、フクロウは究極のハンターです。 スピード、静けさ、
そして粘り強さ。 卓越した狩りの能力を、遺憾なく発揮します。
何度も襲撃を繰り返し、ようやく獲物を捕まえる事ができました。 ヒナたちが
待つ、巣へと戻りました。
田園地帯ではコキンメフクロウのヒナも、ぐんぐん成長し外の世界に興味津々
です。 安全なオリーブの木の穴から出て、親の帰りを待っています。 親は、
子供たちのために、休みなく狩りをしています。
子供たちは、いつも、お腹を空かせています。 巣穴の前で待ち構える子供
たち。 ただし、異変があれば、すぐに避難します。 春が訪れてから、だいぶ
時が経ちました。
アフリカで冬を越していたコノハズクが繁殖のために涼しい森林地帯に戻って
来る季節になりました。 コノハズクは、渡りをする珍しいフクロウです。 体重
100グラム、体長20センチほどの小さな体で、何千キロもの距離を旅します。
越冬地から到着するとコノハズクは、まず繁殖相手を見つけ、卵を産むために
ちょうどよい木の穴を探します。 子供を育てるための時間は、一夏しかありま
せん。 春は、足早に終わりを迎えようとしています。
廃屋では、メンフクロウのヒナが大きく成長しています。 最終的に、3羽の
ヒナが生き延びました。 もうすぐ、巣立ちの時を迎えます。 父親は、夜通し
狩りを続けています。 目まぐるしい毎日です。 次々にネズミを運ぶものの、
子供たちは、一気に飲み込んでしまいます。
崖の上では、ワシミミズクの子供も、大きく育ちました。 巣から飛び出したい
願望が強まり、翼を広げて練習をします。
試しに飛んでみたり、初めて見るものに、興味を引かれたりしています。
それでも、両親は常に、近くにとどまっています。 幼いフクロウちの羽は、
生えそろっていますが、あと数週間は、親に頼って生きる必要があります。
初夏。 ほとんどのフクロウは、子育てのラストスパートに入っています。
アフリカから戻って来た小さなコノハズクは、子育て真っ最中。 父親は日中は
木々に姿を紛らせながら、巣の近くで周囲を監視しています。 母親は、卵を
温めながら、すでに、かえった2羽のヒナも温めています。
ヒナたちは、猛スピードで成長しています。 日が暮れて、父親が夜の狩りを
始めるまで、食事には、ありつけません。 コノハズクは、昆虫を食料としてい
ます。 主な獲物は、バッタやイナゴ、チョウなどです。
コノハズクは小柄ですが、ワシミミズクと同じくらい、どう猛なハンターです。
毎晩、何十匹もの昆虫を捕らえます。 コノハズクが家族のために、せっせと
狩りをする頃… ワシミミズクの子供たちは、それぞれの縄張りを求めて、
すでに巣立って行きました。
ワシミミズクが、キツネに最初の卵を奪われてから、数カ月が経ちました。
ハンター同士の戦いに終わりはありません。 ワシミミズクが、まだ幼いキツネ
の子供に狙いを定めます。
宿命のライバルとの戦いは容赦なく繰り広げられます。 夜の生態系に君臨し
ネズミや昆虫の数をコントロールするフクロウ。
しかし卓越したハンターも無敵ではありません。 獲物の数と直結する生存率。
ライバルたちとの終わりなき戦い。 暗闇のスーパーハンター、フクロウもまた
過酷な自然を生きているのです。
| ホーム |