2022年02月27日 (日) | 編集 |
FC2 トラックバックテーマ:「新型コロナウイルスが流行る前に戻りたいなーと思う時は?」
宇宙開闢(かいびゃく)の雷(いかずち)、ビッグバン。 ありとあらゆる出来事の
始まりです。 138億年の時が流れた今、私たち人類は流れる時間の中、命を
つないでいます。過去から未来へと向かう、あらがう事のできない時間の矢。
一方、SFでは、時間が巻き戻る不思議な様子も描かれます。 しかし、これは
空想の世界の話しではないかも知れないのです。
物理学では… “したがって、運動法則の中には、時間の矢は、ないのだと
いう事が結論できます” 時間の矢がないとは、一体、どういう事なのか?
最新の時間研究から、私たちの知らない時間の姿が見えて来ました。
“時間って、場所によって変わるものなんだ。そういう考えが、当然のものに
なって来る” 私たちの感覚をくすぐる、時間の謎。
そして、それを紐解く、不思議に満ちた物理ワールド。 この宇宙を形づくり、
私たちの存在のカギを握る時間。 今回は、その秘密に迫ります。
時を知りたい。 それは人類の根源的な欲求です。 私たちの祖先は太古の
昔から、天文現象を利用して時間を計って来ました。 時間を知り、それを
集団で共有する事で、社会そのものが変わって行ったと考えられています。
飛鳥時代の日本で、正確な時間を計ろうとしていた事を示す遺跡があります。
時計の歴史を調べている、明石市立天文科学館の館長です。 訪れたのは、
こちらの遺跡。 1972年に発掘された、飛鳥水落(みずおち)遺跡です。
この遺跡は、分析の結果、日本書記にも書き残されていた、時計の遺跡で
ある事が分かったのです。
“この場所は、日本で最初に時計が置かれた場所なのです。日本書記により
ますと、斉明(さいめい)天皇6年、庚申(こうしん)3月、皇太子が初めて漏刻
(ろうこく)を造るという記録があります”
日本で最初の本格的な時計。 それは、後の天智(てんち)天皇、中大兄皇子
(なかのおおえのおうじ)によるもので、漏刻という、水を使った時計でした。
川から水を引き入れる水路が刻まれ、水を通した銅の管や、木で出来た樋
(とい)も見つかりました。
時計の本体は、何段もの水槽を使い、水が一定にたまる仕組みです。 1日で
僅か15分ほどの誤差だったと考えられています。
“階段状に4段の水槽が置かれていたと思われます。こちらで水を入れて、
その水がだんだんに伝わって行き、ここで水を受けて、その水がたまって行く
様子を見て時間を調べた”
大がかりな仕掛けを造り、夜でも雨でも、正確な時間が計れる事にこだわった
のには理由がありました。
“飛鳥の時代というのは、人々が社会の制度を整えて行った時代です。そう
いう意味で、この時計が社会の制度を整えるうえで大変重要な役割を果たし
ていた。こうした時間を元にして、人々が社会生活を行う。これは、現在に
つながる仕組みと言えるのです”
時計を造って、人々を治めようとした権力者。 時間を管理する事で、社会が
発展して行ったのです。 以降、社会の進歩に合わせて、時計は姿を変えて
行きます。
当初、日の光や水や砂等、自然の中にある身近なものを利用していた時計は
機械式時計へと発達し、やがて、水晶の振動を利用したクォーツ時計へと
進んで行きます。 そして現在では、原子の性質を使った時計が、私たちの
生活の基準となっています。
“この原子時計は、セシウム原子の持つ固有の信号を取り出して、1秒間に
およそ92億回の振動を取り出すという仕組みになっています”
原子時計の仕組みです。 物質を作る原子は種類ごとに、それぞれ決まった
固有の周波数の電磁波に当たった時だけ、励起(れいき)と呼ばれる、高い
エネルギー状態になる事が分かっています。
そこで、その周波数を測り、励起した時の1周期にかかる時間をもとに特定の
倍数を掛け、1秒を定めます。 セシウム原子時計では、1つの周期にかかる
時間に、およそ92億回を掛けた時間を、1秒と決めています。
しかし今、このセシウム原子時計の精度をはるかに超えた、世界一の精度を
持つ時計が現れています。 それが、教授たちが開発した光格子時計です。
“ビッグバンで宇宙が誕生してから138億年ですが、138億年経っても、1秒も
狂わないというのが、この時計です”
驚異的な精度で、正確に1秒という時間を決められる時計。 それが、この
光格子(ひかりこうし)時計なのです。 一体なぜ、そのような高い精度が出る
のでしょうか? まず、1つ目の秘密は、使っている原子の種類にあります。
それは、ストロンチウムと呼ばれる原子です。 ストロンチウムが励起する時の
振動数は、1秒間に429兆回。 セシウムに比べて4万倍を超える細かい振動
です。 そのため、より正確な時計が作れるはずです。
ただし、この高い精度を持つ振動を測るには、極めて精密な仕組みが必要
でした。 そのカギとなる仕組みが、時計の名前にもなっている、光格子。
原子を捕まえる入れ物です。 教授は、光格子の様子を、あるものに例えて
います。 “それはまるで、この卵パックのような感じです”
光格子を作るには、まずレーザー光を鏡で反射させ、重ね合わせます。すると
波が一定の場所で上下する、定常波(ていじょうは)が生まれます。
こうして出来上がるのが、卵パックのような原子の容器、光格子です。原子は
定常波のエネルギーが低い場所へと落ち込み、捕らえられます。 卵パックに
何万個という原子を入れ、一気に測る事でより正確な時間が分かるのです。
しかし光格子の卵パックを使って時計を作るには大きな壁がありました。 レー
ザー光で作った卵パック自体が、逆に、計測の邪魔をしてしまうというのです。
時計を作るために探したいのは、ストロンチウム原子に励起するエネルギーを
与えるレーザーの周波数です。ところが、卵パックに入った原子をレーザーで
励起させると、励起した原子の影響で卵パック自体が形を変えてしまいます。
こうなると励起させるためのエネルギーの差が変わってしまい、正確な1秒が
求まりません。そこで教授は、卵パックを作るレーザー光の周波数に注目して
計算を繰り返しました。 その結果、ある重要な発見をしたのです。
“ある特定の周波数にしておくと、基底状態と励起状態の卵パックの形が、
全く同じになるという発見をしました。これを、魔法周波数と名付けました”
魔法周波数で作られる卵パックのイメージです。 教授が見つけたのは、励起
状態でも卵パックの形が変わらない、ある特定のレーザーの周波数でした。
こうして作った卵パックでは励起させてもエネルギーの差が、どこも同じになり
時計の周波数を正確に測る事ができるのです。
ストロンチウム原子を使い、光格子で大量の原子を1度に狙い、魔法周波数で
精度を保つ工夫を凝らす。 このさまざまな仕組みを組み上げ、なんと1秒を、
10の18乗分の1の誤差で決める事に成功しました。
“パズルを1個ずつ、ピースを埋めて行って、最後のピースまで埋まったという
時は、非常に嬉しかったです”
2019年、教授たちは、この光格子時計を使う事で、私たちの時間の見方を
変える大実験を行いました。 スカイツリーの下に、1台の光格子時計を設置。
もう1台を、450メートル上空の部屋に設置し、2台をつなげて、それぞれの
時間の進み方を比べてみたのです。
この実験の狙いは、アインシュタインの一般相対性理論の実証と検証でした。
地球の中心に近いほど重力は強く、離れて行くほど重力は弱くなります。
一般相対性理論によると、重力が強い所では時間は、ゆっくり流れ、弱い所
では、速く流れます。 そこで高度差、僅か450メートルの上と下とで、時間の
進む速さを比べてみました。
実験の結果、450メートルでは、10の14乗分の5秒だけ、時間が速く進んで
いました。 まさしく高さにより、時間の進み方は違っていたのです。
時間と高さ。 私たちがこれまで、全く別々だと考えて来た、この2つが、つな
がったものである事を、光格子時計の実験が教えてくれたのです。
この光格子時計の高さが分かるという特徴を、逆に、道具として使おうとして
いる人がいます。測地学を研究している准教授は、光格子時計を防災研究に
役立てられないかと考えています。
“地下に蓄積するひずみを正確にとらえるカギとなるのが、光格子時計だと考
えています” 准教授の研究で、もともと使っているのが、極めて精密な
重力が測れる重力計です。
“この時に、落下距離と時刻とを調べて1つひとつの重力値を9桁まで出せる”
准教授は、この重力計を使って地下での物質の動きを捉えようとしています。
“その動きとか、マグマの動きとか…”
例えば火山の周囲に重力計を置き、地下の重力を調べます。 マグマが上昇
すると、その質量により重力計の値が僅かに大きくなります。 こうしてマグマ
の動きを捉えようというのです。 しかし実際には、山自体も膨張します。
そのため、重力計の位置も変化し、データに誤差が生まれてしまいます。
これまではGPSを使い位置を補正して来ましたが、GPSは水平方向に比べて
高さの精度が十分でなく、そのズレを、うまく測れませんでした。
そこで准教授は、高さが精密に測れる、光格子時計に注目したのです。
“急激な山体膨張が起きた時には、人工衛星の代わりに光格子時計を用い
ます。この事により重力計の高さの変化を、非常に正確に知る事ができて、
マグマの上昇を正確に捉える事ができるようになります”
准教授は、今後の光格子時計の普及に、強い期待を寄せています。
“将来、光格子時計が、どこにでもあるような状態になると、地下で、ひずみが
どのように、たまっているか?マグマや水が、どう動いているか?などが手に
取るように分かるようになるかも知れません”
今、光格子時計を生み出した教授たちは、この新たな時計を社会に応用する
ための取り組みを開始しています。 光格子時計のシステムを小型化して、
車に積み込めるように改良したのです。
“今まで光格子時計って、ラボ(研究室)の40平方メートルぐらい、一面に展開
してました。今度は、それを実用的な道具として見た場合に、どこまで小さく
なるか。こういうハイエース(車)には十分、収まりますよというのが、まず最初
のステップ。最終的には、持ち運べるかも知れない”
時間の精度を究極まで突き詰める事で、社会が変化し、更に発展して行く
原動力になるのです。
“時間って、場所によって変わるものなんだ。そういう考えが当然のものに
なって来ると、逆に、それを使って、どんな新しいサービスができるのかって
皆さんに想像力たくましく、新たな相対論的な世の中の社会像を描いてもら
えるのではないか。そういうのに我々の時計が役立ったらいいなと思います”
宇宙開闢(かいびゃく)の雷(いかずち)、ビッグバン。 ありとあらゆる出来事の
始まりです。 138億年の時が流れた今、私たち人類は流れる時間の中、命を
つないでいます。過去から未来へと向かう、あらがう事のできない時間の矢。
一方、SFでは、時間が巻き戻る不思議な様子も描かれます。 しかし、これは
空想の世界の話しではないかも知れないのです。
物理学では… “したがって、運動法則の中には、時間の矢は、ないのだと
いう事が結論できます” 時間の矢がないとは、一体、どういう事なのか?
最新の時間研究から、私たちの知らない時間の姿が見えて来ました。
“時間って、場所によって変わるものなんだ。そういう考えが、当然のものに
なって来る” 私たちの感覚をくすぐる、時間の謎。
そして、それを紐解く、不思議に満ちた物理ワールド。 この宇宙を形づくり、
私たちの存在のカギを握る時間。 今回は、その秘密に迫ります。
時を知りたい。 それは人類の根源的な欲求です。 私たちの祖先は太古の
昔から、天文現象を利用して時間を計って来ました。 時間を知り、それを
集団で共有する事で、社会そのものが変わって行ったと考えられています。
飛鳥時代の日本で、正確な時間を計ろうとしていた事を示す遺跡があります。
時計の歴史を調べている、明石市立天文科学館の館長です。 訪れたのは、
こちらの遺跡。 1972年に発掘された、飛鳥水落(みずおち)遺跡です。
この遺跡は、分析の結果、日本書記にも書き残されていた、時計の遺跡で
ある事が分かったのです。
“この場所は、日本で最初に時計が置かれた場所なのです。日本書記により
ますと、斉明(さいめい)天皇6年、庚申(こうしん)3月、皇太子が初めて漏刻
(ろうこく)を造るという記録があります”
日本で最初の本格的な時計。 それは、後の天智(てんち)天皇、中大兄皇子
(なかのおおえのおうじ)によるもので、漏刻という、水を使った時計でした。
川から水を引き入れる水路が刻まれ、水を通した銅の管や、木で出来た樋
(とい)も見つかりました。
時計の本体は、何段もの水槽を使い、水が一定にたまる仕組みです。 1日で
僅か15分ほどの誤差だったと考えられています。
“階段状に4段の水槽が置かれていたと思われます。こちらで水を入れて、
その水がだんだんに伝わって行き、ここで水を受けて、その水がたまって行く
様子を見て時間を調べた”
大がかりな仕掛けを造り、夜でも雨でも、正確な時間が計れる事にこだわった
のには理由がありました。
“飛鳥の時代というのは、人々が社会の制度を整えて行った時代です。そう
いう意味で、この時計が社会の制度を整えるうえで大変重要な役割を果たし
ていた。こうした時間を元にして、人々が社会生活を行う。これは、現在に
つながる仕組みと言えるのです”
時計を造って、人々を治めようとした権力者。 時間を管理する事で、社会が
発展して行ったのです。 以降、社会の進歩に合わせて、時計は姿を変えて
行きます。
当初、日の光や水や砂等、自然の中にある身近なものを利用していた時計は
機械式時計へと発達し、やがて、水晶の振動を利用したクォーツ時計へと
進んで行きます。 そして現在では、原子の性質を使った時計が、私たちの
生活の基準となっています。
“この原子時計は、セシウム原子の持つ固有の信号を取り出して、1秒間に
およそ92億回の振動を取り出すという仕組みになっています”
原子時計の仕組みです。 物質を作る原子は種類ごとに、それぞれ決まった
固有の周波数の電磁波に当たった時だけ、励起(れいき)と呼ばれる、高い
エネルギー状態になる事が分かっています。
そこで、その周波数を測り、励起した時の1周期にかかる時間をもとに特定の
倍数を掛け、1秒を定めます。 セシウム原子時計では、1つの周期にかかる
時間に、およそ92億回を掛けた時間を、1秒と決めています。
しかし今、このセシウム原子時計の精度をはるかに超えた、世界一の精度を
持つ時計が現れています。 それが、教授たちが開発した光格子時計です。
“ビッグバンで宇宙が誕生してから138億年ですが、138億年経っても、1秒も
狂わないというのが、この時計です”
驚異的な精度で、正確に1秒という時間を決められる時計。 それが、この
光格子(ひかりこうし)時計なのです。 一体なぜ、そのような高い精度が出る
のでしょうか? まず、1つ目の秘密は、使っている原子の種類にあります。
それは、ストロンチウムと呼ばれる原子です。 ストロンチウムが励起する時の
振動数は、1秒間に429兆回。 セシウムに比べて4万倍を超える細かい振動
です。 そのため、より正確な時計が作れるはずです。
ただし、この高い精度を持つ振動を測るには、極めて精密な仕組みが必要
でした。 そのカギとなる仕組みが、時計の名前にもなっている、光格子。
原子を捕まえる入れ物です。 教授は、光格子の様子を、あるものに例えて
います。 “それはまるで、この卵パックのような感じです”
光格子を作るには、まずレーザー光を鏡で反射させ、重ね合わせます。すると
波が一定の場所で上下する、定常波(ていじょうは)が生まれます。
こうして出来上がるのが、卵パックのような原子の容器、光格子です。原子は
定常波のエネルギーが低い場所へと落ち込み、捕らえられます。 卵パックに
何万個という原子を入れ、一気に測る事でより正確な時間が分かるのです。
しかし光格子の卵パックを使って時計を作るには大きな壁がありました。 レー
ザー光で作った卵パック自体が、逆に、計測の邪魔をしてしまうというのです。
時計を作るために探したいのは、ストロンチウム原子に励起するエネルギーを
与えるレーザーの周波数です。ところが、卵パックに入った原子をレーザーで
励起させると、励起した原子の影響で卵パック自体が形を変えてしまいます。
こうなると励起させるためのエネルギーの差が変わってしまい、正確な1秒が
求まりません。そこで教授は、卵パックを作るレーザー光の周波数に注目して
計算を繰り返しました。 その結果、ある重要な発見をしたのです。
“ある特定の周波数にしておくと、基底状態と励起状態の卵パックの形が、
全く同じになるという発見をしました。これを、魔法周波数と名付けました”
魔法周波数で作られる卵パックのイメージです。 教授が見つけたのは、励起
状態でも卵パックの形が変わらない、ある特定のレーザーの周波数でした。
こうして作った卵パックでは励起させてもエネルギーの差が、どこも同じになり
時計の周波数を正確に測る事ができるのです。
ストロンチウム原子を使い、光格子で大量の原子を1度に狙い、魔法周波数で
精度を保つ工夫を凝らす。 このさまざまな仕組みを組み上げ、なんと1秒を、
10の18乗分の1の誤差で決める事に成功しました。
“パズルを1個ずつ、ピースを埋めて行って、最後のピースまで埋まったという
時は、非常に嬉しかったです”
2019年、教授たちは、この光格子時計を使う事で、私たちの時間の見方を
変える大実験を行いました。 スカイツリーの下に、1台の光格子時計を設置。
もう1台を、450メートル上空の部屋に設置し、2台をつなげて、それぞれの
時間の進み方を比べてみたのです。
この実験の狙いは、アインシュタインの一般相対性理論の実証と検証でした。
地球の中心に近いほど重力は強く、離れて行くほど重力は弱くなります。
一般相対性理論によると、重力が強い所では時間は、ゆっくり流れ、弱い所
では、速く流れます。 そこで高度差、僅か450メートルの上と下とで、時間の
進む速さを比べてみました。
実験の結果、450メートルでは、10の14乗分の5秒だけ、時間が速く進んで
いました。 まさしく高さにより、時間の進み方は違っていたのです。
時間と高さ。 私たちがこれまで、全く別々だと考えて来た、この2つが、つな
がったものである事を、光格子時計の実験が教えてくれたのです。
この光格子時計の高さが分かるという特徴を、逆に、道具として使おうとして
いる人がいます。測地学を研究している准教授は、光格子時計を防災研究に
役立てられないかと考えています。
“地下に蓄積するひずみを正確にとらえるカギとなるのが、光格子時計だと考
えています” 准教授の研究で、もともと使っているのが、極めて精密な
重力が測れる重力計です。
“この時に、落下距離と時刻とを調べて1つひとつの重力値を9桁まで出せる”
准教授は、この重力計を使って地下での物質の動きを捉えようとしています。
“その動きとか、マグマの動きとか…”
例えば火山の周囲に重力計を置き、地下の重力を調べます。 マグマが上昇
すると、その質量により重力計の値が僅かに大きくなります。 こうしてマグマ
の動きを捉えようというのです。 しかし実際には、山自体も膨張します。
そのため、重力計の位置も変化し、データに誤差が生まれてしまいます。
これまではGPSを使い位置を補正して来ましたが、GPSは水平方向に比べて
高さの精度が十分でなく、そのズレを、うまく測れませんでした。
そこで准教授は、高さが精密に測れる、光格子時計に注目したのです。
“急激な山体膨張が起きた時には、人工衛星の代わりに光格子時計を用い
ます。この事により重力計の高さの変化を、非常に正確に知る事ができて、
マグマの上昇を正確に捉える事ができるようになります”
准教授は、今後の光格子時計の普及に、強い期待を寄せています。
“将来、光格子時計が、どこにでもあるような状態になると、地下で、ひずみが
どのように、たまっているか?マグマや水が、どう動いているか?などが手に
取るように分かるようになるかも知れません”
今、光格子時計を生み出した教授たちは、この新たな時計を社会に応用する
ための取り組みを開始しています。 光格子時計のシステムを小型化して、
車に積み込めるように改良したのです。
“今まで光格子時計って、ラボ(研究室)の40平方メートルぐらい、一面に展開
してました。今度は、それを実用的な道具として見た場合に、どこまで小さく
なるか。こういうハイエース(車)には十分、収まりますよというのが、まず最初
のステップ。最終的には、持ち運べるかも知れない”
時間の精度を究極まで突き詰める事で、社会が変化し、更に発展して行く
原動力になるのです。
“時間って、場所によって変わるものなんだ。そういう考えが当然のものに
なって来ると、逆に、それを使って、どんな新しいサービスができるのかって
皆さんに想像力たくましく、新たな相対論的な世の中の社会像を描いてもら
えるのではないか。そういうのに我々の時計が役立ったらいいなと思います”
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