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宇宙空間に急増するゴミの山スペースデブリを取り除く世界の挑戦
2022年01月26日 (水) | 編集 |
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夜空に連なる光の列。 これ、何だか分かりますか? 実は、アメリカの宇宙
開発企業が打ち上げた、人工衛星です。 1機のロケットで打ち上げられた、
数十もの小型衛星が、列をなしているのです。

大量の人工衛星が地球を取り囲み、私たちの暮らしを支える時代。 深刻に
なっているのが、スペースデブリ、宇宙ゴミの問題です。 デブリは速いもので
秒速8キロほど。 弾丸よりも速いスピードで、飛び交っています。

デブリが衝突すると…(爆発音) たった数センチのデブリでも、衝突すれば、
衛星は、ひとたまりもありません。 人類は、自らが生み出した廃棄物によって
宇宙空間まで危機に陥れようとしているのです。

“この問題は、気候変動と同じく重要な環境問題です。私たちの未来に大きな
影響を及ぼすのです”

こうした中、デブリを取り除き、宇宙の環境を守ろうという取り組みが、世界で
始まっています。 ヨーロッパ宇宙機関は、長いアームを使い巨大なデブリを
捕まえる衛星を開発。

イギリスは衛星から網を発射し、デブリを捕らえる実験に成功。 そして日本の
ベンチャー企業も、この開発競争に名乗りを上げています。 磁石を使って
デブリを捕まえる、世界初のチャレンジ。

“このデブリ除去というのは、5年やれば終わりじゃないので、宇宙開発が続く
限り、ずっと続けなければいけない”

“今、多くの国が宇宙ゴミ除去の研究開発や、実際のミッションに乗り出し始め
ています。まさに、デブリ除去を進めるべき時が来ているのです”

地球から宇宙へ。 環境問題が拡大する21世紀。 人類の英知は、スペース
デブリの問題を克服できるのでしょうか?

地上から、およそ400キロ上空にある、国際宇宙ステーション。 2021年5月。
宇宙のゴミ、スペースデブリが原因とみられる、あるトラブルが発生しました。

ロボットアームの肘にあたる部分に、小さな穴が開いているのが見つかった
のです。 穴の直径は、およそ5ミリ。 砂粒ほどの小さなデブリが衝突した事が
原因だとみられています。

実はデブリによる被害は、これが初めてではありません。2007年には、やはり
デブリの衝突で、外壁のアルミパネルに穴が開きました。 そして窓にも、7ミリ
ほどの衝突の跡が見つかったのです。

デブリとの衝突は、絶え間なく起きている。 それを、身をもって体験したという
人がいます。 日本人宇宙飛行士です。 これまで、3度、宇宙に滞在した彼。

直近では、2020年11月から半年間、国際宇宙ステーションで活動しました。
およそ7時間に及ぶ船外活動を行った彼。 その時、デブリの問題を実感する
ある出来事に直面します。

“今回、久しぶりに外に出て、あとは、もう明確に感じたのは、どれだけ国際宇
宙ステーションが、日夜、スペースデブリに、さらされてるかという事ですよね。
それが宇宙ステーションの外側の壁、あるいは手すりに無数に開いている穴
として見えると。15年前3回、船外活動やってたんですけれども1度も手すりに
穴が開いてるというのは見てないのですよ”

手すりについた無数の傷。 もう少しで船外活動に重大な影響が出るところ
だったといいます。

“手すりに穴が開いた時に、我々、それが気が付かずに握ってしまうと手袋に
穴が開くというケースが結構、頻繁に起きるようになったっていう…もう本当に
すごい鋭利なナイフのようなエッジになってますから、それでスパッと切れて
しまって、そのせいで空気漏れが起きると。こちらの方は、実は、今回の私の
船外活動中に実際に起きてしまったと。私の相棒の方が、手袋に傷がついて
しまったかも知れないと。で、空気漏れを起こしたかも知れないと。もしこれで
空気漏れが大きくなってきたら、私がやってるフレームを、ネジを締めるという
作業を一旦、止めて相手の体を僕にくくりつけて戻って来るというのを、常に
頭の中で考えながらやってました。宇宙ステーション、満身創痍だなと思い
ながら帰って来ましたけどね…”

宇宙のゴミ、スペースデブリ。 それは、宇宙開発の結果、生み出されて来た
ものです。 ロケット打ち上げの際に、切り離されたパーツ。 運用を終えた
人工衛星。 ネジなどの小さな部品や、破片などもあります。

これらが速いものでは、およそ秒速8キロで、地球の周りを、さまざまな方向に
飛び交っているのです。 デブリが衛星に衝突すると、どれほどのダメージが
もたらされるのか?

ドイツのフラウンホーファー研究機構では、デブリと同じ超高速で、弾を撃ち
出せる特殊な装置で、衝突実験を行っています。

画面中央に置かれているのは、宇宙船の外壁パネルと同じ素材。 秒速7キロ
直径、僅か2.8ミリのアルミの弾が、パネルをあっさりと貫く事が分かりました。

“僅か1~2ミリ程度の宇宙ゴミでも宇宙船の外壁を貫通し船内の電子機器や
光学機器などにダメージを与えます。更に1センチ2センチと大きくなった場合
確実に宇宙船を破壊します。一部の損傷でも当たりどころが悪ければ宇宙船
にとっては大きなダメージとなるのです”

デブリ対策を、世界に先駆けて進めているのがアメリカです。 こちらはアメリカ
宇宙軍。 宇宙空間の安全保障を目的として創設されました。

デブリの問題に当たっているのは、連合宇宙運用センター。 通称、CSpOC。
地上から、観測可能な全ての衛星やデブリを24時間、365日追跡しています。

観測できるのは直径およそ10センチ以上ソフトボールよりも大きな物体、3万
2000個以上に上るデブリ全てに番号を振り1つ1つの軌道を予測しています。

万が一、人工衛星にデブリが衝突するリスクが高まったら、その衛星の運用
者に、警告のメッセージを送ります。

“衝突リスクは、ここ数年、急増しています。警告メッセージの送信は、2019年
には、およそ100万件だったのが、2020年には3200万件、そして2021年は、
8月までに、すでに5200万件に及んでいます。今後、デブリとの衝突リスクを
回避して安全に衛星を運用する事は、ますます難しくなると思います。特に
懸念されるのは、国際宇宙ステーションなどに滞在する人間が非常に大きな
リスクを負う事です。私たちの使命は、彼らの安全を守る事です”

CSpOC(シースポック)の警告メッセージは、世界中の衛星運用者に送られて
います。 地球観測衛星だいちなどの人工衛星の運用を行っているJAXA。

デブリ対策を担う、追跡ネットワーク技術センターには、毎日、CSpOCからの
警告が届くといいます。

“とにかく日々、もの凄い数の危ないと思われる接近通知を受けております。
その中の、どれか1つでも、やはり見逃すと衛星を失ってしまいます。衝突と
いうと本当に、こんなイメージを持ちますが、本当に、カスリでもすれば衛星は
失ってしまうものだという覚悟で臨んでおりますので、現場は、日々、365日、
24時間、緊張状態が続いております”

CSpOCからの警告を受け取ると、衝突のリスクを、更に精度を上げて再計算
します。  “衝突確率は、10のマイナス3乗オーダーですので、とても危険な
接近となっています”

危険と判断した場合、衛星運用チームと会議を開き、回避行動を取るかどうか
を決定します。 回避行動とは、一時的に衛星の軌道を変えデブリとの衝突を
避ける運用です。

予定の軌道では、衛星がデブリに衝突すると分かった場合、前もって、推進
装置を噴射して、軌道を変更し、衝突を回避。 その後、軌道を元に戻します。

回避行動は、多くの燃料を消費する奥の手。 判断は慎重に行いますが、
それでも1年に数回、こうした運用が必要になるといいます。

“目の前のスペースデブリ接近を避けたならば、その先に更にスペースデブリ
接近が待ち構えているという事象も、多々、起こっております。スペースデブリ
問題は、深刻になっているというのが、私たち現場の肌感覚です”

なぜ、近年、これほど急激に、デブリとの衝突の危険が増えているのか?
背景にあるのが、加速する民間企業の宇宙進出です。

人工衛星の数は、この数年で急激に増加。 そのほとんどが、宇宙関連の
民間企業が送り込んだ、商用衛星です。 その多くは、メガコンステレーション
と呼ばれる、衛星ネットワークに使われます。

数千から数万の小型衛星で地球を取り囲み、山奥や海の上、また災害時にも
高速なインターネットが使える、次世代の通信サービスです。

アメリカのスペースX社が進めている、スターリンク計画では、すでに1500基
以上の衛星を打ち上げています。

これは2020年、スペースX社が打ち上げた小型衛星。 1つのロケットに搭載
された60もの衛星が、列をなして軌道に送り込まれ、地上からは、まるで銀河
鉄道のように見えました。

スペースX社以外にも、アマゾンなどの民間企業が、同様の衛星打ち上げを
計画。 今、かつてない高い密度で、人工衛星が地球を取り囲む時代が到来
しているのです。

こうした状況が続けば、デブリの更なる増加を招き将来の宇宙利用に深刻な
影を落とす。 科学者たちは、大きな危機感を抱いています。

“今でも新しくロケットを打ち上げる時には、他の宇宙物体と、ぶつからないか
解析をしています。実際に、ぶつかる事が分かったら、打ち上げを少し延ばし
たりとかはしています。このまま、スペースデブリの環境を改善して行かないと
打ち上げを遅らせるだけではなくて、打ち上げそのものが出来なくなるかも
知れません”

将来の宇宙利用のため、軌道上の衝突リスクを下げるには、どうすればいい
のか? イギリスの研究チームが着目したのは、デブリの除去です。

サリー大学が民間企業とともに挑んだのは、リムーブ・デブリ・ミッション。
実際の宇宙空間で、デブリを捕まえる技術を確立するため、世界で初めて、
実証実験の衛星を送り込みました。

“私たちには、実証したい2つの技術がありました。1つ目は、小さなデブリを
どうやって捕まえるかという事です。そこで考えたのが、古代ローマの剣闘士
グラディエーターの投網(とあみ)です。投網でデブリを捕獲して、地球の大気圏
に落として燃やすのです”

アイデアのもととなったのは、古代ローマの剣闘士、グラディエーターです。
グラディエーターが、相手の動きを封じるのに使ったのが、投網。 これを使う
事でデブリが、どのような形であっても、確実に捕獲できると考えたのです。

“この技術のポイントは、投網を投げた時、狙い通り、完全に広がるかどうか
です。万が一、網がきちんと開かないとターゲットを捕らえる事はできません。
そこで私達は無重力状態を再現し、投網がうまく展開するよう何度もテストを
行いました”

一方、大きなデブリを捕獲するのは、グラディエーターの槍(やり)です。 槍の
先端部分を高速で発射してデブリに突き刺すモリに似た機構を開発しました。

“大型の宇宙ゴミを捕らえるのは、技術的に、非常に難しいと考えています。
そこで私たちが考えたのが、モリを使うアイデアです。デブリとなった衛星には
外壁パネルがあります。そこにモリを突き刺す事で確実にターゲットを捕らえ、
処分できると考えました”