2021年12月03日 (金) | 編集 |
FC2 トラックバックテーマ:「〇〇1年分!もらえるとしたら何がいい?」
古代ローマの円形闘技場で、1人の勇猛な剣闘士が、最後の戦いに臨もうと
しています。 過去5年間、数々の死闘を制しローマ帝国中に名をとどろかせた
タウルスです。 2万人の観衆が、タウルスに望む事は、ただひとつ。
恐るべき宿敵との対決です。 タウルスは、最強の相手を倒す事ができるの
でしょうか? 脳裏に、さまざまな記憶が、よみがえります。栄光・屈辱・憎しみ
そして、愛。 しかし、これほどの恐怖に襲われるのは初めてです。
かつて、この日ほど神々の救いを求めた事はありませんでした。
タウルス心の声‘神々よ、我に与えたまえ。威厳と勇気、そして勝利する力を’
これまで培ってきた経験と力で、タウルスは強敵に打ち勝つ事ができるので
しょうか? 日没までに、勝者と敗者が決します。
西暦122年。 ローマから1000キロ離れたローマ帝国の属州。 午後の活気に
満ちた街で、人々は、これから公共浴場でのひとときを楽しもうとしています。
古代ローマの人々は、ほぼ毎日、浴場に行きました。 欠かせない日課です。
現代人がカフェでゆったりと過ごすように、古代ローマ人は日中、公共浴場で
くつろぎました。
険しい表情で公共浴場へ向かう若者がいます。 名前は、ティトゥルス。のちに
剣闘士タウルスとして名をはせる人物の若き日の姿です。 良家の子息として
生まれながら、決められた人生から逃れようと放蕩の日々を送っています。
公共浴場では食事や賭け事を楽しむ事もできました。 人々が楽しめる社交の
場だったのです。 ティトゥルスが公共浴場にやって来た目的は、賭博です。
スリルを求めて大金を賭け、すでに家の財産を相当、浪費していました。
浴場には、ティトゥルスの父であり、この属州の有力者であるリキヌスも来て
いました。 リキヌスは、息子ティトゥルスに我慢がなりません。 このままでは
自分の名声を汚され、目指す将来へ妨げとなるからです。
父と子は、口論が絶えず、不仲になりました。 ティトゥルスは、この日も負け
続け、借金が更に増えて行きました。翌日、気分転換をしようとティトゥルスは
円形闘技場へ向かいました。ある有力者が剣闘士の闘技会開催したのです。
ティトゥルスは、闘技会が何よりも好きでした。
闘技場での見せ物は、古代ローマの生活の一部でした。 年間、280日以上、
催されていたのです。 特に剣闘士の戦いには奴隷から皇帝まで夢中でした。
多くの人々が席を確保しようと円形闘技場へ急ぎます。ローマのコロッセオは
5万人を収容しました。
特等席に座るティトゥルス。 周りの歓声にあおられ、気持ちが高ぶって行き
ます。 ティトゥルスは、幼い頃から剣闘士に魅せられて来ました。 剣闘士は
まさに闘技場のシンボルと言える存在です。
賭博での負けを取り戻す、絶好のチャンスです。 ティトゥルスは、大金を賭け
ました。 ティトゥルスが賭けた剣闘士は負け、またしても大金を失いました。
闘技会の熱狂が終わり、街には日常が戻りました。奴隷たちは日々の労働に
追われます。 古代ローマは不平等な社会でした。 生まれつき自由な市民と
労働に縛られる奴隷という、2つの身分が存在していました。
ティトゥルスの父リキヌスが、騎士としての礼服を身につけ正装しています。
古代ローマにおいては、貴族や騎士は、正装するときトガと呼ばれる礼服を
身につけました。 トガには赤紫の色が、あしらわれていて、一目で身分が
分かるようになっていました。
驚いた事に、ティトゥルスが父親に会いに来ました。 またとない機会です。
リキヌスは、自分がどれほど息子のティトゥルスに期待をかけているか熱心に
語りかけます。
古代ローマでは、名誉が重んじられ、身分ごとに求められる期待には、応え
なくては、なりませんでした。
ところが、ティトゥルスがやって来た目的は、父の期待を完全に裏切るもので
した。 金の無心です。 リキヌスにとっては耐え難く無礼な振る舞いでした。
心を入れ替えるまで、2度と姿を見せるな!と言い渡します。
プライドの高いティトゥルスは、父親の言葉に反発しました。決められた人生に
嫌気がさしていたティトゥルスは、幼い頃の夢、剣闘士になって人生を立て直
すと、父親に宣言したのです。
これはスキャンダルです。 剣闘士は恥ずべき職業でした。 もし良家の息子が
剣闘士になるなら、それはローマ市民としての社会的な地位を自ら放棄する
事を意味します。親にとっては耐え難い恥辱です。家の名にも傷が付きます。
全てを捨てたティトゥルス。故郷を離れ向かったのは、剣闘士の養成所です。
まずは、ラニスタと呼ばれる、養成所の責任者に誓いを立てます。
ラニスタは、剣闘士を採用する権限を持つ、重要な存在です。 実業家でも
あります。 リスクはあるものの、有力な剣闘士を育てれば、大金を手にする
事ができました。 契約と、法に基づいた世界です。
養成所には身分の高い人間など、まず、いませんでした。 集まっているのは
自由を手に入れたいと願う奴隷や、一獲千金を狙う貧しい市民ばかりです。
ティトゥルスは、このような世界で居場所を見つける事ができるのでしょうか?
歴史的に有名な剣闘士と言えば、スパルタクスです。 戦争捕虜となったスパ
ルタクスは強制的に剣闘士にさせられ、負ければ死が待っていました。 しかし
時代が下ると、剣闘士は契約に基づくプロの職業となりました。
自ら志願した者が戦い、負けても死に直結するとは限りませんでした。市民が
剣闘士になる事もできました意志が固く運動能力に優れ知性があるならば。
養成所に入る事ができれば、やがて剣闘士団の一員となる道が開けます。
まずは、養成所の指導役である訓練士に認めてもらわなければなりません。
訓練士になるのは、闘技会で素晴らしい成績を残し、自由を手に入れた、
かつての剣闘士です。 訓練士は、よい収入を得ていました。
現役を退いたあとも養成所に残り、敵を倒すためのテクニックや成功する秘訣
を伝授したのです。 ローマ人が剣闘士に求めたのは、野蛮な殺し合いでは
ありません。 戦術に磨きをかけフェンシングのように戦う姿です。 技を駆使し
洗練された動きが好まれました。
訓練士は、ティトゥルスが良家の子息だと気付き、剣闘士としての生き方を
厳しく教えて行きます。
剣闘士の戦い方は、むやみに剣を突き合わせるものではありません。まずは
盾で攻撃し、相手のバランスを崩します。 そして、剣の先で突きます。 体の
正面ではなく、肩や脚の後ろを狙って、相手にケガを負わせる、やり方です。
ティトゥルスには、想像以上に過酷な日々です。 訓練士は、同じ動きを繰り
返し、命じます。 他人から命令された経験がなく短気なティトゥルスは、耐え
きれずに反抗します。
養成所で1番の剣闘士であるエロスが、間に入ります。 訓練士は絶対であり
ティトゥルスは、取るに足らない存在なのです。 数カ月経ち、ティトゥルスの
故郷では、秋を迎えました。
公共広場では、ティトゥルスの父リキヌスが談笑しています。 息子が家を出て
以来、リキヌスは政治家としてキャリアを順調に重ねていました。
公共広場は交流と討論の場でした。 政治・経済から、個人的なビジネスまで
話し合われ、商売上の契約なども行われていました。
一方、ティトゥルスの人生は、容易には進んでいません。 同じ動作を何千回も
繰り返す訓練の毎日です。 そして日々、新たな技を習得しています。
やがてティトゥルスは、手本とするエロスから、激励されるようになりました。
剣闘士たちは、同じ剣闘士団の一員として危険に立ち向かいます。 必然的に
団員同士の絆は固くなりました。
ティトゥルスの訓練の成果を試す時が、やって来ました。 装具を身につけ、
練習試合が行われます。 相手はエロスです。 ティトゥルスは全力を出し切り
訓練士の期待に応える事ができるのでしょうか?
両者とも挑戦剣闘士のスタイルで戦います。 挑戦剣闘士とは、丸い形をした
兜と、短剣を身につけた剣闘士です。 やや大きめの盾を構えます。 盾で激
しく攻撃するためです。
エロスは、じっとティトゥルスを観察し、時折、強烈な一撃を放ちます。
ティトゥルスは、まだ訓練士が期待したほどの腕前には達していません。
しかし恐れ知らずでタフな一面を発揮し剣闘士としての優れた資質を示します。
エロスを追い詰める瞬間もありました。
1試合の時間は、3分から4分。 火花が飛ぶような激しい戦いです。 勝敗を
分けたのは、経験の差でした。 ティトゥルスは、地面に投げ倒され敗れます。
激しい戦いを終え、エロスはティトゥルスに、一目置くようになりました。
ティトゥルス心の声 ‘次は、いよいよ本番か。しかし俺には、その準備が出来
ているのか?’ 月日は巡り、間もなく、春が終わろうとしています。
剣闘士たちは、やがて始まる闘技会のシーズンに備え、束の間の休息を楽
しんでいます。
古代のローマでは、衛生状態を良好に保つ事は重要でした。 力強く気高い
魂は、健康で清潔な体に宿ると考えられていたからです。 当時は、石鹸など
無かったので、汗をたくさんかいて、垢をこすり落としました。
ティトゥルスはエロスが自分を信頼し心を開いてくれている事に気付きました。
そしてエロスが不安や恐れを抱き、悪夢にうなされ、自らの生き方に疑問を
抱いている事を知ります。
エロスは、もし、自分に万一の事があれば、家族の面倒を見てほしいと、
ティトゥルスに頼みます。
ティトゥルス心の声 ‘エロスほどの剣闘士が、なぜ、死ぬ事を考える?しかも
俺に打ち明けるとは… エロスの信頼に応えたい’
ついに、ティトゥルスの初試合の日が来ました。 貴族が催す宴会の場で、行
われます。 招待客は剣闘士の試合がある事など知らず、宴に興じています。
やがて主催者が、招待客を隣の部屋へ案内しました。 剣闘士の登場に、
招待客は色めきます。 これから、本物の武器を使った戦いが始まるのです。
剣闘士は、現役の間、数百、あるいは数千もの試合を行いました。 しかし、
ほとんどの場合は切れ味の悪い武器が使われました。 生死を懸けた戦いは
ごくまれです。 ですから、ケガをする事が避けられない切れ味、鋭い武器を
使った場合は、人々から高く評価されました。
ティトゥルス心の声 ‘こんな恐怖は初めてだ。兜のせいで息ができない。
一突きされれば、死んでしまう’
古代ローマの円形闘技場で、1人の勇猛な剣闘士が、最後の戦いに臨もうと
しています。 過去5年間、数々の死闘を制しローマ帝国中に名をとどろかせた
タウルスです。 2万人の観衆が、タウルスに望む事は、ただひとつ。
恐るべき宿敵との対決です。 タウルスは、最強の相手を倒す事ができるの
でしょうか? 脳裏に、さまざまな記憶が、よみがえります。栄光・屈辱・憎しみ
そして、愛。 しかし、これほどの恐怖に襲われるのは初めてです。
かつて、この日ほど神々の救いを求めた事はありませんでした。
タウルス心の声‘神々よ、我に与えたまえ。威厳と勇気、そして勝利する力を’
これまで培ってきた経験と力で、タウルスは強敵に打ち勝つ事ができるので
しょうか? 日没までに、勝者と敗者が決します。
西暦122年。 ローマから1000キロ離れたローマ帝国の属州。 午後の活気に
満ちた街で、人々は、これから公共浴場でのひとときを楽しもうとしています。
古代ローマの人々は、ほぼ毎日、浴場に行きました。 欠かせない日課です。
現代人がカフェでゆったりと過ごすように、古代ローマ人は日中、公共浴場で
くつろぎました。
険しい表情で公共浴場へ向かう若者がいます。 名前は、ティトゥルス。のちに
剣闘士タウルスとして名をはせる人物の若き日の姿です。 良家の子息として
生まれながら、決められた人生から逃れようと放蕩の日々を送っています。
公共浴場では食事や賭け事を楽しむ事もできました。 人々が楽しめる社交の
場だったのです。 ティトゥルスが公共浴場にやって来た目的は、賭博です。
スリルを求めて大金を賭け、すでに家の財産を相当、浪費していました。
浴場には、ティトゥルスの父であり、この属州の有力者であるリキヌスも来て
いました。 リキヌスは、息子ティトゥルスに我慢がなりません。 このままでは
自分の名声を汚され、目指す将来へ妨げとなるからです。
父と子は、口論が絶えず、不仲になりました。 ティトゥルスは、この日も負け
続け、借金が更に増えて行きました。翌日、気分転換をしようとティトゥルスは
円形闘技場へ向かいました。ある有力者が剣闘士の闘技会開催したのです。
ティトゥルスは、闘技会が何よりも好きでした。
闘技場での見せ物は、古代ローマの生活の一部でした。 年間、280日以上、
催されていたのです。 特に剣闘士の戦いには奴隷から皇帝まで夢中でした。
多くの人々が席を確保しようと円形闘技場へ急ぎます。ローマのコロッセオは
5万人を収容しました。
特等席に座るティトゥルス。 周りの歓声にあおられ、気持ちが高ぶって行き
ます。 ティトゥルスは、幼い頃から剣闘士に魅せられて来ました。 剣闘士は
まさに闘技場のシンボルと言える存在です。
賭博での負けを取り戻す、絶好のチャンスです。 ティトゥルスは、大金を賭け
ました。 ティトゥルスが賭けた剣闘士は負け、またしても大金を失いました。
闘技会の熱狂が終わり、街には日常が戻りました。奴隷たちは日々の労働に
追われます。 古代ローマは不平等な社会でした。 生まれつき自由な市民と
労働に縛られる奴隷という、2つの身分が存在していました。
ティトゥルスの父リキヌスが、騎士としての礼服を身につけ正装しています。
古代ローマにおいては、貴族や騎士は、正装するときトガと呼ばれる礼服を
身につけました。 トガには赤紫の色が、あしらわれていて、一目で身分が
分かるようになっていました。
驚いた事に、ティトゥルスが父親に会いに来ました。 またとない機会です。
リキヌスは、自分がどれほど息子のティトゥルスに期待をかけているか熱心に
語りかけます。
古代ローマでは、名誉が重んじられ、身分ごとに求められる期待には、応え
なくては、なりませんでした。
ところが、ティトゥルスがやって来た目的は、父の期待を完全に裏切るもので
した。 金の無心です。 リキヌスにとっては耐え難く無礼な振る舞いでした。
心を入れ替えるまで、2度と姿を見せるな!と言い渡します。
プライドの高いティトゥルスは、父親の言葉に反発しました。決められた人生に
嫌気がさしていたティトゥルスは、幼い頃の夢、剣闘士になって人生を立て直
すと、父親に宣言したのです。
これはスキャンダルです。 剣闘士は恥ずべき職業でした。 もし良家の息子が
剣闘士になるなら、それはローマ市民としての社会的な地位を自ら放棄する
事を意味します。親にとっては耐え難い恥辱です。家の名にも傷が付きます。
全てを捨てたティトゥルス。故郷を離れ向かったのは、剣闘士の養成所です。
まずは、ラニスタと呼ばれる、養成所の責任者に誓いを立てます。
ラニスタは、剣闘士を採用する権限を持つ、重要な存在です。 実業家でも
あります。 リスクはあるものの、有力な剣闘士を育てれば、大金を手にする
事ができました。 契約と、法に基づいた世界です。
養成所には身分の高い人間など、まず、いませんでした。 集まっているのは
自由を手に入れたいと願う奴隷や、一獲千金を狙う貧しい市民ばかりです。
ティトゥルスは、このような世界で居場所を見つける事ができるのでしょうか?
歴史的に有名な剣闘士と言えば、スパルタクスです。 戦争捕虜となったスパ
ルタクスは強制的に剣闘士にさせられ、負ければ死が待っていました。 しかし
時代が下ると、剣闘士は契約に基づくプロの職業となりました。
自ら志願した者が戦い、負けても死に直結するとは限りませんでした。市民が
剣闘士になる事もできました意志が固く運動能力に優れ知性があるならば。
養成所に入る事ができれば、やがて剣闘士団の一員となる道が開けます。
まずは、養成所の指導役である訓練士に認めてもらわなければなりません。
訓練士になるのは、闘技会で素晴らしい成績を残し、自由を手に入れた、
かつての剣闘士です。 訓練士は、よい収入を得ていました。
現役を退いたあとも養成所に残り、敵を倒すためのテクニックや成功する秘訣
を伝授したのです。 ローマ人が剣闘士に求めたのは、野蛮な殺し合いでは
ありません。 戦術に磨きをかけフェンシングのように戦う姿です。 技を駆使し
洗練された動きが好まれました。
訓練士は、ティトゥルスが良家の子息だと気付き、剣闘士としての生き方を
厳しく教えて行きます。
剣闘士の戦い方は、むやみに剣を突き合わせるものではありません。まずは
盾で攻撃し、相手のバランスを崩します。 そして、剣の先で突きます。 体の
正面ではなく、肩や脚の後ろを狙って、相手にケガを負わせる、やり方です。
ティトゥルスには、想像以上に過酷な日々です。 訓練士は、同じ動きを繰り
返し、命じます。 他人から命令された経験がなく短気なティトゥルスは、耐え
きれずに反抗します。
養成所で1番の剣闘士であるエロスが、間に入ります。 訓練士は絶対であり
ティトゥルスは、取るに足らない存在なのです。 数カ月経ち、ティトゥルスの
故郷では、秋を迎えました。
公共広場では、ティトゥルスの父リキヌスが談笑しています。 息子が家を出て
以来、リキヌスは政治家としてキャリアを順調に重ねていました。
公共広場は交流と討論の場でした。 政治・経済から、個人的なビジネスまで
話し合われ、商売上の契約なども行われていました。
一方、ティトゥルスの人生は、容易には進んでいません。 同じ動作を何千回も
繰り返す訓練の毎日です。 そして日々、新たな技を習得しています。
やがてティトゥルスは、手本とするエロスから、激励されるようになりました。
剣闘士たちは、同じ剣闘士団の一員として危険に立ち向かいます。 必然的に
団員同士の絆は固くなりました。
ティトゥルスの訓練の成果を試す時が、やって来ました。 装具を身につけ、
練習試合が行われます。 相手はエロスです。 ティトゥルスは全力を出し切り
訓練士の期待に応える事ができるのでしょうか?
両者とも挑戦剣闘士のスタイルで戦います。 挑戦剣闘士とは、丸い形をした
兜と、短剣を身につけた剣闘士です。 やや大きめの盾を構えます。 盾で激
しく攻撃するためです。
エロスは、じっとティトゥルスを観察し、時折、強烈な一撃を放ちます。
ティトゥルスは、まだ訓練士が期待したほどの腕前には達していません。
しかし恐れ知らずでタフな一面を発揮し剣闘士としての優れた資質を示します。
エロスを追い詰める瞬間もありました。
1試合の時間は、3分から4分。 火花が飛ぶような激しい戦いです。 勝敗を
分けたのは、経験の差でした。 ティトゥルスは、地面に投げ倒され敗れます。
激しい戦いを終え、エロスはティトゥルスに、一目置くようになりました。
ティトゥルス心の声 ‘次は、いよいよ本番か。しかし俺には、その準備が出来
ているのか?’ 月日は巡り、間もなく、春が終わろうとしています。
剣闘士たちは、やがて始まる闘技会のシーズンに備え、束の間の休息を楽
しんでいます。
古代のローマでは、衛生状態を良好に保つ事は重要でした。 力強く気高い
魂は、健康で清潔な体に宿ると考えられていたからです。 当時は、石鹸など
無かったので、汗をたくさんかいて、垢をこすり落としました。
ティトゥルスはエロスが自分を信頼し心を開いてくれている事に気付きました。
そしてエロスが不安や恐れを抱き、悪夢にうなされ、自らの生き方に疑問を
抱いている事を知ります。
エロスは、もし、自分に万一の事があれば、家族の面倒を見てほしいと、
ティトゥルスに頼みます。
ティトゥルス心の声 ‘エロスほどの剣闘士が、なぜ、死ぬ事を考える?しかも
俺に打ち明けるとは… エロスの信頼に応えたい’
ついに、ティトゥルスの初試合の日が来ました。 貴族が催す宴会の場で、行
われます。 招待客は剣闘士の試合がある事など知らず、宴に興じています。
やがて主催者が、招待客を隣の部屋へ案内しました。 剣闘士の登場に、
招待客は色めきます。 これから、本物の武器を使った戦いが始まるのです。
剣闘士は、現役の間、数百、あるいは数千もの試合を行いました。 しかし、
ほとんどの場合は切れ味の悪い武器が使われました。 生死を懸けた戦いは
ごくまれです。 ですから、ケガをする事が避けられない切れ味、鋭い武器を
使った場合は、人々から高く評価されました。
ティトゥルス心の声 ‘こんな恐怖は初めてだ。兜のせいで息ができない。
一突きされれば、死んでしまう’
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