2021年05月19日 (水) | 編集 |
FC2 トラックバックテーマ:「歴史上の人物と話せるとしたら誰がいい?」
全天で最も明るい星シリウスは、青白い光を放ちながら輝いている。
ところが、古代の文献を紐解くと、かつてシリウスは、赤かったという。
天文学の大きな謎、赤いシリウスのミステリーとは?
古代からシリウスは私たち人類に最も親しまれ観測されて来た星の1つです。
このシリウスには、古代メソポタミアまで遡る不思議な謎が指摘されて来ました。
これは、およそ3000年前に作られた、アッシリアの石碑です。
当時の王が行った冬の狩りの描写の中で、溶けた銅のように赤いシリウスと
刻まれています。
なんと、現在は青白く輝くシリウスが、かつては、赤かったというのです。
2000年前の古代ローマに入ると、シリウスが赤いと書かれた文献は、更に
増えます。
哲学者キケロは、詩の一節で、シリウスは赤く輝くと歌い上げ、セネカは、
シリウスの赤みたるや、火星よりも、ずっと濃いと、書き記しました。
極め付きが、こちら。 古代ローマの天文学者プトレマイオスが、2世紀に
書いたとされる、アルマゲストです。
古代天文学の集大成ともいわれ、1000年以上にわたって、最も権威ある
天文学の文献とされて来ました。
ここには、現在でも通用する星のカタログが掲載され、明るさや色が書かれて
います。おおいぬ座の記述を見ると、1番明るい星シリウスは赤いとあります。
アルマゲストの中で、赤いと分類された、その他の星は、オリオン座の1等星
ベテルギウスに加え、アンタレス、アルテバラン、アークトゥルス、ポルックス。
どれも、赤みがかって見える星ばかりです。
青白く輝く2つの星から成る、双子星シリウスが、どうして赤く見えたのか?
これは、いまだ解き明かされていない、大きな謎です。
30年余りにわたって、この謎に挑み続けて来た科学者がいます。
フランス宇宙基礎科学研究所の博士です。
1980年代、宇宙望遠鏡でシリウスの観測を行った時、同僚から赤いシリウスに
ついて聞き、興味を持ったといいます。
“全天で最も明るい星に、2000年来の未解決の謎があると知って、とても驚き
ました。 アルマゲストの著者ほどの優秀な天文学者が、シリウスが赤いと
言ったのですから、何か理由があるはずです”
博士は、シリウスを短期間だけ赤くする事件が、2000年前に起きたと考え
ました。 最初に注目したのが、ガスとチリの雲です。
珍しいものではないので、偶然、シリウスの近くにあっても不思議はありません。
2000年前に、小さな雲が、地球とシリウスの間を通過していたら…。
青い光の成分が散乱されて、シリウスが赤くなると考えました。
地球の大気の層を通過した夕日が赤くなるのと、同じメカニズムです。
“シリウスは、近い星だといっても、8光年以上、離れています”
“宇宙空間を漂う雲が偶然、地球とシリウスの間を通ってくれたら、しばらくの
間だけ、シリウスを赤くできると考えたのです”
1985年、南米チリで、シリウスを赤くした雲の探索が始まりました。
最新のCCDカメラを搭載した、口径1.5メートルの(デンマーク)望遠鏡が、
シリウスに向けられました。 シリウス周辺の詳細な撮影に、初めて成功。
しかし、残念ながら探していた雲は、どこにも見当たりませんでした。
一方で、思いがけない発見もありました。
シリウスの光に隠されていた、9個の星が見つかったのです。
この星を見た博士は、赤いシリウスの謎を説明できる、究極の仮説を閃きます。
それは双子星シリウスのずっと外側に第3の星、シリウスCがいるというもの。
たまたま、2000年前に、第3の星がシリウスに近付いていたら…。
重力の影響でガスが噴き出し、宇宙空間の雲のようにシリウスを短期間だけ
赤くできるのです。
実はシリウスが3つの星から成る三重連星だという考え方は、ずっと以前から
ありました。
1930年頃、シリウスの近くで、未知の天体を見たという報告が、相次いでいた
のです。 1999年1月。 博士は、再び、シリウス観測に挑みました。
向かったのは、フランス南西部のピック・デュ・ミディー天文台。
博士が赤いシリウスの原因と考える幻の星、シリウスCの探索が行われました。
そして、シリウス周辺の32個の星を映し出す、この画像が得られます。
しかし、解析の結果、どれも、シリウスCではありませんでした。
このデータからは、新たな事実も、明らかになりました。
過去の観測に基づいて、シリウスの位置を遡っていくと…。
1930年頃、背景の星の近くを、通過しています。
一時、報告が相次いだ未知の天体は、この星でした。
“残念ですが、これで諦めた訳ではありません”
“観測は、可視光で行われましたが、赤外線を使えば、より暗い天体まで探せ
ます。 暗いシリウスCが隠れている可能性は、まだあるのです”
幻の星、シリウスCが存在したと考える科学者は、他にもいます。
シミュレーションによって、宇宙の謎に迫っている、イスラエル工科大学の
博士です。
“シリウスについて調べていたら軌道が、とてもゆがんでいる事に気付きました”
“こんなに、ゆがんだ軌道を持った双子星は、とても珍しいのです”
“なぜ、こんな軌道をしているのか? 解き明かしたいと思いました”
お互いを巡る、双子星シリウス。観測から、その軌道も詳しく分かっています。
周期は50年。 AとBが、最も離れた時と、最も近付いた時で、距離が4倍も
変化しています。 シリウスの軌道は、かなり、ゆがんでいるのです。
博士によれば、シリウスのような双子星は、長い間、お互いを巡るうちに、
軌道の形が徐々に変化し、円軌道に近付いて行くはずだと、いいます。
では、大きくゆがんだシリウスの軌道の原因は、一体、何なのでしょう?
博士は、第3の星が存在したと仮定し、その後の変化を、コンピューターで
追いました。
“第3の星なんて不自然だと感じるかも知れませんが、宇宙には3つの星から
成る、三重連星が、たくさんあるのです”
“そう聞くと、何が起こるのか? 知りたくなりますよね?”
“変化は、とても面白いのですよ!”
“単純な双子の星だと考えていたら解けないような謎が、かつて三重連星
だったと考えるだけで、解ける可能性が出て来るのです”
こちらが博士のシミュレーションです。 中心にある2つの天体がシリウスAとB。
その外側に、未知の星、シリウスCを置きました。
計算を進めて行くと… 内側の2つの星の重力によって、Cの軌道が、どんどん
ゆがめられて行きます。
最終的にCは、はじき飛ばされてしまいますが、残ったAとBの軌道の形は、
現在のシリウスと、驚くほど、そっくりでした。
“現実の軌道を再現するために、何千回も計算を繰り返しました”
“いい結果が出るかどうかなんて最初は分かりませんから、うまく行った時は
最高の気分でしたよ! もし、私の仮説が実証されたら、僕が、あの星の謎を
解いたのだと、指をさす事も、できるのですからね!”
シリウスに、第3の未知の星、Cは、本当にあるのでしょうか?
2011年には、日本のすばる望遠鏡が…。
2014年には、ヨーロッパのVLTが、シリウスへ向けられました。
しかし幻の星、シリウスCは、まだ見つかっていません。
いまだに解き明かされていない、シリウスを赤くした原因を巡って、このあと、
更に、驚きの仮説が登場します。
☆宇宙博物記☆
今回、2つ目の話題は、シリウスを巡るミステリーの中でも、とりわけ不思議なもの!
しばらく、お付き合いくださいね!
やって来たのは、パリの中心部にある、ケ・ブランリー美術館。
世界各地の美術品や工芸品が、数多く展示されています。
ここで、特に人気なのが、アフリカのマスクや彫刻。
ピカソをはじめとする、20世紀の芸術家に、大きな影響を与えました。
一見、素朴な、こちらのマスクを作ったのが、今回の主役のドゴン族です。
サハラ砂漠の南端、西アフリカのマリで暮らす、この民族が、シリウスに
まつわる大きな謎をもたらしました。
謎の発端は、1930年代にドゴンを訪ねた、フランスの人類学者、マルセル・
グリオール (1898-1956) です。
現地調査を行い、長老から聞き出した、宇宙創成神話を発表。
そこに、驚くべき内容が、記されていました。
ドゴンが語り継いで来た神話によれば、神が最初につくったのは、小さくて
重い星ポ・トロ。 これを宇宙の中心とし、そばに最も明るい星シギをつくったと
伝えられています。
最も明るい星、シギとは?の問いに、長老は、天空に輝くシリウスを指さしたと
いいます。 シリウスのそばに、小さくて重い星?
まるで、シリウスBの存在を、知っていたかのような話しですよね!
この神話と最新科学の不思議な一致は、人類学上の大きな謎とされました。
宇宙人との接触があったというロマンあふれる説から、学者のでっちあげまで
諸説飛び交う、この謎。
ドゴン族の調査経験を持つ研究者に、話しを聞きました。
“ドゴンの人々に、シリウスBが見えたのか? それは私には分かりません”
“でも、シリウスの近くに暗い星があると、信じていた事は確かでしょう”
“ひょっとすると、万物は双子でできているというドゴンの考え方から、シリウスが
双子というアイデアが生まれたのかも知れません”
人類学の世界にまで、シリウスにまつわるミステリーがあったなんて…。
宇宙への関心って、時代や文化によらないものなのですね!
全天で最も明るい星シリウスは、青白い光を放ちながら輝いている。
ところが、古代の文献を紐解くと、かつてシリウスは、赤かったという。
天文学の大きな謎、赤いシリウスのミステリーとは?
古代からシリウスは私たち人類に最も親しまれ観測されて来た星の1つです。
このシリウスには、古代メソポタミアまで遡る不思議な謎が指摘されて来ました。
これは、およそ3000年前に作られた、アッシリアの石碑です。
当時の王が行った冬の狩りの描写の中で、溶けた銅のように赤いシリウスと
刻まれています。
なんと、現在は青白く輝くシリウスが、かつては、赤かったというのです。
2000年前の古代ローマに入ると、シリウスが赤いと書かれた文献は、更に
増えます。
哲学者キケロは、詩の一節で、シリウスは赤く輝くと歌い上げ、セネカは、
シリウスの赤みたるや、火星よりも、ずっと濃いと、書き記しました。
極め付きが、こちら。 古代ローマの天文学者プトレマイオスが、2世紀に
書いたとされる、アルマゲストです。
古代天文学の集大成ともいわれ、1000年以上にわたって、最も権威ある
天文学の文献とされて来ました。
ここには、現在でも通用する星のカタログが掲載され、明るさや色が書かれて
います。おおいぬ座の記述を見ると、1番明るい星シリウスは赤いとあります。
アルマゲストの中で、赤いと分類された、その他の星は、オリオン座の1等星
ベテルギウスに加え、アンタレス、アルテバラン、アークトゥルス、ポルックス。
どれも、赤みがかって見える星ばかりです。
青白く輝く2つの星から成る、双子星シリウスが、どうして赤く見えたのか?
これは、いまだ解き明かされていない、大きな謎です。
30年余りにわたって、この謎に挑み続けて来た科学者がいます。
フランス宇宙基礎科学研究所の博士です。
1980年代、宇宙望遠鏡でシリウスの観測を行った時、同僚から赤いシリウスに
ついて聞き、興味を持ったといいます。
“全天で最も明るい星に、2000年来の未解決の謎があると知って、とても驚き
ました。 アルマゲストの著者ほどの優秀な天文学者が、シリウスが赤いと
言ったのですから、何か理由があるはずです”
博士は、シリウスを短期間だけ赤くする事件が、2000年前に起きたと考え
ました。 最初に注目したのが、ガスとチリの雲です。
珍しいものではないので、偶然、シリウスの近くにあっても不思議はありません。
2000年前に、小さな雲が、地球とシリウスの間を通過していたら…。
青い光の成分が散乱されて、シリウスが赤くなると考えました。
地球の大気の層を通過した夕日が赤くなるのと、同じメカニズムです。
“シリウスは、近い星だといっても、8光年以上、離れています”
“宇宙空間を漂う雲が偶然、地球とシリウスの間を通ってくれたら、しばらくの
間だけ、シリウスを赤くできると考えたのです”
1985年、南米チリで、シリウスを赤くした雲の探索が始まりました。
最新のCCDカメラを搭載した、口径1.5メートルの(デンマーク)望遠鏡が、
シリウスに向けられました。 シリウス周辺の詳細な撮影に、初めて成功。
しかし、残念ながら探していた雲は、どこにも見当たりませんでした。
一方で、思いがけない発見もありました。
シリウスの光に隠されていた、9個の星が見つかったのです。
この星を見た博士は、赤いシリウスの謎を説明できる、究極の仮説を閃きます。
それは双子星シリウスのずっと外側に第3の星、シリウスCがいるというもの。
たまたま、2000年前に、第3の星がシリウスに近付いていたら…。
重力の影響でガスが噴き出し、宇宙空間の雲のようにシリウスを短期間だけ
赤くできるのです。
実はシリウスが3つの星から成る三重連星だという考え方は、ずっと以前から
ありました。
1930年頃、シリウスの近くで、未知の天体を見たという報告が、相次いでいた
のです。 1999年1月。 博士は、再び、シリウス観測に挑みました。
向かったのは、フランス南西部のピック・デュ・ミディー天文台。
博士が赤いシリウスの原因と考える幻の星、シリウスCの探索が行われました。
そして、シリウス周辺の32個の星を映し出す、この画像が得られます。
しかし、解析の結果、どれも、シリウスCではありませんでした。
このデータからは、新たな事実も、明らかになりました。
過去の観測に基づいて、シリウスの位置を遡っていくと…。
1930年頃、背景の星の近くを、通過しています。
一時、報告が相次いだ未知の天体は、この星でした。
“残念ですが、これで諦めた訳ではありません”
“観測は、可視光で行われましたが、赤外線を使えば、より暗い天体まで探せ
ます。 暗いシリウスCが隠れている可能性は、まだあるのです”
幻の星、シリウスCが存在したと考える科学者は、他にもいます。
シミュレーションによって、宇宙の謎に迫っている、イスラエル工科大学の
博士です。
“シリウスについて調べていたら軌道が、とてもゆがんでいる事に気付きました”
“こんなに、ゆがんだ軌道を持った双子星は、とても珍しいのです”
“なぜ、こんな軌道をしているのか? 解き明かしたいと思いました”
お互いを巡る、双子星シリウス。観測から、その軌道も詳しく分かっています。
周期は50年。 AとBが、最も離れた時と、最も近付いた時で、距離が4倍も
変化しています。 シリウスの軌道は、かなり、ゆがんでいるのです。
博士によれば、シリウスのような双子星は、長い間、お互いを巡るうちに、
軌道の形が徐々に変化し、円軌道に近付いて行くはずだと、いいます。
では、大きくゆがんだシリウスの軌道の原因は、一体、何なのでしょう?
博士は、第3の星が存在したと仮定し、その後の変化を、コンピューターで
追いました。
“第3の星なんて不自然だと感じるかも知れませんが、宇宙には3つの星から
成る、三重連星が、たくさんあるのです”
“そう聞くと、何が起こるのか? 知りたくなりますよね?”
“変化は、とても面白いのですよ!”
“単純な双子の星だと考えていたら解けないような謎が、かつて三重連星
だったと考えるだけで、解ける可能性が出て来るのです”
こちらが博士のシミュレーションです。 中心にある2つの天体がシリウスAとB。
その外側に、未知の星、シリウスCを置きました。
計算を進めて行くと… 内側の2つの星の重力によって、Cの軌道が、どんどん
ゆがめられて行きます。
最終的にCは、はじき飛ばされてしまいますが、残ったAとBの軌道の形は、
現在のシリウスと、驚くほど、そっくりでした。
“現実の軌道を再現するために、何千回も計算を繰り返しました”
“いい結果が出るかどうかなんて最初は分かりませんから、うまく行った時は
最高の気分でしたよ! もし、私の仮説が実証されたら、僕が、あの星の謎を
解いたのだと、指をさす事も、できるのですからね!”
シリウスに、第3の未知の星、Cは、本当にあるのでしょうか?
2011年には、日本のすばる望遠鏡が…。
2014年には、ヨーロッパのVLTが、シリウスへ向けられました。
しかし幻の星、シリウスCは、まだ見つかっていません。
いまだに解き明かされていない、シリウスを赤くした原因を巡って、このあと、
更に、驚きの仮説が登場します。
☆宇宙博物記☆
今回、2つ目の話題は、シリウスを巡るミステリーの中でも、とりわけ不思議なもの!
しばらく、お付き合いくださいね!
やって来たのは、パリの中心部にある、ケ・ブランリー美術館。
世界各地の美術品や工芸品が、数多く展示されています。
ここで、特に人気なのが、アフリカのマスクや彫刻。
ピカソをはじめとする、20世紀の芸術家に、大きな影響を与えました。
一見、素朴な、こちらのマスクを作ったのが、今回の主役のドゴン族です。
サハラ砂漠の南端、西アフリカのマリで暮らす、この民族が、シリウスに
まつわる大きな謎をもたらしました。
謎の発端は、1930年代にドゴンを訪ねた、フランスの人類学者、マルセル・
グリオール (1898-1956) です。
現地調査を行い、長老から聞き出した、宇宙創成神話を発表。
そこに、驚くべき内容が、記されていました。
ドゴンが語り継いで来た神話によれば、神が最初につくったのは、小さくて
重い星ポ・トロ。 これを宇宙の中心とし、そばに最も明るい星シギをつくったと
伝えられています。
最も明るい星、シギとは?の問いに、長老は、天空に輝くシリウスを指さしたと
いいます。 シリウスのそばに、小さくて重い星?
まるで、シリウスBの存在を、知っていたかのような話しですよね!
この神話と最新科学の不思議な一致は、人類学上の大きな謎とされました。
宇宙人との接触があったというロマンあふれる説から、学者のでっちあげまで
諸説飛び交う、この謎。
ドゴン族の調査経験を持つ研究者に、話しを聞きました。
“ドゴンの人々に、シリウスBが見えたのか? それは私には分かりません”
“でも、シリウスの近くに暗い星があると、信じていた事は確かでしょう”
“ひょっとすると、万物は双子でできているというドゴンの考え方から、シリウスが
双子というアイデアが生まれたのかも知れません”
人類学の世界にまで、シリウスにまつわるミステリーがあったなんて…。
宇宙への関心って、時代や文化によらないものなのですね!
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