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人間の頭脳が発見した決して見えない天体の正体ブラックホール
2021年05月02日 (日) | 編集 |
FC2 トラックバックテーマ:「2020年の個人的流行語大賞は?」
光。 そして、近付くものは、星さえも、のみ込んでしまう、ブラックホール。

この宇宙で、最も不可思議な天体です。

その存在が語られたキッカケは、科学者の計算でした。

以来、実在すると考える人、机上の空論だと主張する人、100年にわたる
論争が続きました。 壁を打ち破ったのは、実は、日本人研究者たち。

そして2019年、ついに人類は、ブラックホールを画像として捉える事に成功
しました! (NHKのコズミックフロントを、ぜひ、4Kテレビで観て下さい!)

番組では10年にわたって、ブラックホールを取り上げ続けて来ました。

そして、これまでにも登場した、こちらの3人が2020年のノーベル物理学賞に
選ばれました。

銀河の中心に、巨大ブラックホールを発見した、アメリカチームのリーダー
アンドレア・ゲズさん。

“ブラックホールを証明するためには、高性能の望遠鏡を銀河の中心に向け、
ブラックホールの近くにある星を観察します”

同じく、ヨーロッパチームのリーダー、ラインハルト・ゲンツェルさん。

“ブラックホールを発見しました。 次のステップは、その役割を知る事です”

そして、もう1人。 ブラックホールの出来方を、理論的に証明した、イギリスの
ロジャー・ペンローズさん。 (理論物理学者)

“ブラックホールは形成されていくにつれ、周囲の物体をのみ込んでいきます”

“今のところ、宇宙の中で、最も不可思議な天体です”

見えない天体の正体は、どのように予言され、どこまで分かって来たので
しょうか?

ブラックホールの闇に魅せられた人々とともに驚異の天体の素顔に迫ります。

宇宙には、決して見えないが、確かに存在する天体がある。

物語は、天才物理学者アルバート・アインシュタイン(1879-1955)の登場で
始まります。

アインシュタインは、重力は、時空のゆがみである事を、発見しました。

有名な、一般相対性理論です。空間のゆがみは、重力の強さで変わります。

重力の強い星ほど空間は大きくゆがみ、直進するはずの光でさえ曲げられて
しまいます。

空間のゆがみが、更に大きくなれば、光さえも、出てこられなくなります。

これが、 ブラックホール です。

しかしアインシュタインは、そんなものは実在しないと、考えていました。

実際の宇宙に、空間を大きくゆがめる天体は、存在するのでしょうか?

その謎に挑んだのは、インド出身の若き研究者でした。

スブラマニアン・チャンドラセカール (1910-1995) 。

星の内部構造の研究が認められ、19歳の時、イギリスの名門ケンブリッジ
大学に招かれました。

1930年、チャンドラセカールはイギリスに渡る船の中で、死を迎えた星の残骸
白色矮星(はくしょくわいせい)に思いを巡らせました。

広がったガスの中心に見えるのが白色矮星です。 小さく、とても重い星です。

太陽のような恒星は、押し潰そうとする重力と、熱によって広がろうとする
力とが釣り合って、形を保っています。

しかし、燃料を使い果たして、冷たくなると、広がろうとする力は小さくなり、
星は縮んで行きます。

太陽ほどの質量が、地球ほどの大きさに押し縮められたもの、それが白色
矮星です。

チャンドラセカールは、更に重い星が死ぬと、どんな変化が起きるのかを計算
しました。 すると白色矮星は、無限に縮む事が分かったのです。

イギリスに到着したチャンドラセカールは、早速、その考えをまとめた論文を
提出しました。

当時、ケンブリッジ大学には、星の内部構造における世界的な権威、
アーサー・エディントン (1882-1944) がいました。

エディントンは、星は無限に小さくなり続ける事などあり得ない。

それを防ぐ、自然の法則があるに違いないからだと、チャンドラセカールの
理論を、一蹴しました。

当時の物理学では、星が無限に縮む事など、考えられなかったのです。

ところが数年後、物質の最小単位とされていた原子の研究が進むと、事は
一変します。

アメリカの理論物理学者ロバート・オッペンハイマー(1904-1967)は、新たな
理論をもとに、星について計算しました。

その結果、爆発とともに一生を終えた重い星は、無限に縮む事が分かったの
です。

しかし、これで一件落着、ブラックホールの存在が証明された事にはなりません。

オッペンハイマーが前提としたのは、完全な球体の星です。

しかし、実際の宇宙の星は自転しているため、上下に少し潰れています。

現実は、計算のように行かないと考えられました。

こうして、ブラックホール論争は、終わったと思われました。

しかし1965年、新たな論文が、イギリスで出版されました。

執筆者は、2020年のノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ペンローズさん。

ペンローズさんは、数学を図形で考える天才と、いわれています。

出身校であるオックスフォード大学の構内。

ペンローズさんが考案した図形が、敷き詰められています。

2種類のひし形を組み合わせた、周期がありそうで、ない、不思議な多角形。

ペンローズ・タイルと呼ばれています。

こちらはペンローズさんが考えた、現実には、あり得ない立体です。
(ペンローズの三角形)

そしてこちらは階段を上り続けると、いつの間にか元に戻ってきてしまいます。
(ペンローズの階段)

空間を自由自在に操るペンローズさんは、完全な球体でなくても、重い星は
収縮し続け、最終的に、特異点と呼ばれる、時空を超えた点に集まることを、
数学的に証明しました。

特異点では重力の強さが無限大になり、あらゆる物理法則が通用しません。

これはペンローズさんの論文に掲載された、ブラックホールの出来方を表した
図です。 この論文によって、ノーベル賞を受賞する事になったのです。

一体、何を描いたものなのか?

日本人の素粒子物理学者に、詳しく説明して頂きました。

“ペンローズは、色んな図を描くのが、すごく上手だった物理学者です”

“例えば論文に、こんな図を描くのです… 私は余り上手ではないのですが”

“これは何を言っているかというと… 最初、下が過去で、上が未来”

“時間が、下から上向きに流れています”

“ここに、最初ある、これが… 例えば、星だと思います”

“ここにある星が、生涯の最後に、自分の重さを支えられなくなると、重力は
引っ張るだけですから、どんどん、こう、潰れて行くと”

“こうやって、潰れて行ってる様子というのは、これです”

“でも、どんどん潰れて行くと、ある所で、どんどん、どんどん小さくなるので、
その小さくなった星からは、もう、光も出られなくなるぐらい重力が強くなって
しまう。 そうすると、ここでブラックホールになるわけです”

“そのブラックホールになったものというのが、更に潰れて行って、この中心と
いうのが、この赤い線で、特異点になっている所です”

“この表面から出て来るものというのは…”

“もう、ここに来ると、光から、やっと出られるかどうかという状況になっている
ので、これが事象の地平線という所なわけですね”

“昔の、この星からは、もう当然、光は全部、出ているわけなのですが…”

“ここまで来ると、もう、光が出られなくなる”

“ここから先は、もう光が、この中に閉じ込められてしまっているというのが、
この筒みたいなもので表現されている”

“これがペンローズが論文に描いた絵です”

ノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ペンローズは、言う。

“私たちが、特異点の定理に取り組んでいた時、この図によって、光が、
どのようにふるまうかを知る事が出来ました”

“通常、定理というのは、こういった概念を、数学的にまとめて行きます”

“実際に何が起きているかを、視覚化する事は良い事です”

“この図は時空の特異点とは、どのようなものかを正確に示しているわけでは
ありません。 それは、ずっと複雑です”

“とはいえ、図にする事は、理解をするうえで、とても役に立つのです”

ペンローズさんが描いた図は、その後、さまざまな研究者の発想を広げて行き
ました。

2018年に亡くなったスティーブン・ホーキング(1942-2018)も魅了された1人。

ホーキングは、特異点の理論を、宇宙の始まりに応用しました。

ペンローズさんとともに、宇宙の謎に挑んだのです。

スティーブン・ホーキングは、言う。

“ブラックホールと宇宙の始まりには、同じ議論が使えると思い付いたのです”

“これによって、宇宙には時空が破綻する始まりがあると、証明できました”

事象の地平線は、ブラックホールに、大きさがある事を示しました。

それは、観測によっても証明されて行きます。

決して見る事が出来ないとされて来たブラックホールに、最初に最も近付いた
のは、日本人研究者たちでした。