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平和な田舎暮らしに美容・健康など自由気ままに綴っています!
驚異の大気循環は恐怖と恩恵の相反する2つの姿を持っている
2020年11月27日 (金) | 編集 |
FC2トラックバックテーマ 「金縛りにあったことある?」
ワシントン山の頂に到着しました。 そこは、霧と雪に覆われた白一色の世界。

‘うわ~、建物が全部、氷で覆われていますね!’

真っ白に凍りついている建物は、気象観測所。 その歴史は、100年。

標高が低い場所で、ヒマラヤ級の高山の気象が観測できるため、多くの研究
機関の科学者たちによって、極地環境についてさまざまな研究が続けられて
来たのです。 観測所の職員に、山頂を案内してもらいます。

“冬に注意しなければならないのは、肌を露出させない事だ”

“肌が露出していると、5分以内に凍傷になるほどの、危険な状況なんだ”
(ゴーグルを付けているだけではダメなのだそうです)

外の気温は、マイナス21度。

風しだいでは、体感温度は、南極並みのマイナス40度にもなるのです。

まずは、建物が風をブロックしてくれる、東側のエリアへ。

‘すごいです… 真っ白で、何も見えないです…’

秒速10メートル以上の風。 雪が混ざれば、一歩先も見えなくなります。

そして、偏西風が吹きつける、建物の西側へ。

‘うわー、すごい風! 寄りかかる事もできる!’

“夏よりも、ずっと強い風だよ!”   ‘ただいまの秒速は、26.6m/sです!’

この日の風速は、26メートル。 まだまだ序の口!

それにしても、なぜ、この山の頂には、これほど強い風が吹くのでしょうか?

その大きな理由が、偏西風の流れです。

冬、アメリカ大陸を流れる2本の強い偏西風、ジェット気流は、ワシントン山の
手前で合流しています。

勢いを倍増させた偏西風が、北はカナダのロッキー山脈、南はメキシコ湾で
発生する低気圧をワシントン山へと運び、極地のような気象を生み出している
のです。 ワシントン山に、強風が吹き荒れています。

偏西風に乗って、ハリケーン級の暴風を伴う、低気圧がやって来たのです。

エベレストをしのぐ、極限の世界は、現れるのでしょうか?

再び、偏西風が吹き荒れる、建物の西側へ。

万が一、飛ばされないように、ロープを腰に取り付けます。

“転んだ時は、はって戻るといいよ!”

“1度転んだら、立ち上がるのは難しいからね!”

立っていられないほどの、猛烈な風!

これが、世界一過酷といわれる、ワシントン山の冬。

風速は、どれくらいなのでしょう?    ‘すごい! 39メートルもあります!’

“風速計が、よく壊れなかったね!”

39メートルは、この風速計が、測定可能な限界値!

観測所の風速計によれば、最大瞬間風速は、40.6メートル!

これこそ、偏西風がもたらす、冬の嵐の姿です。   翌朝。

風が雲を流し、太陽が姿を現しました。

視界は更に広がり、大統領山脈の峰々が、姿を現しました。

眼下には、黒々とした大地が広がり、この頂だけが、全くの別世界だったよう
です。 確かに偏西風は、裏庭の北極圏を出現させていました。

立っていられないほどの、すごさでしたが、偏西風は強いだけでなく、遠く
離れた地域を結び付ける風でもあるというのです。

気候力学が専門の東京大学の教授に聞いてみましょう。

“偏西風というのは、地球をぐるりと一回りして吹いている風ですので、もし、
ある場所で、異常な蛇行が起きると、その影響が離れた別の場所に波として
伝播(でんぱ)して行きます”

“例えば2018年、西日本豪雨の後に、日本の各地が記録的な猛暑に見舞わ
れました。 その時、ヨーロッパでも、熱波に見舞われていました”

“実は偏西風はヨーロッパで北に上がって異常な蛇行の影響が東に伝わって
きて、それで日本付近で偏西風のジェット気流を北に押し上げて、それによって
日本付近が暖かい高気圧に覆われて、記録的な猛暑に見舞われたと…”

風が熱を伝えるのですか?     “いえ。 実はですね、これ…”

“例えば、池の水に石を落とすと、その影響が波として周囲に広がって行く”

“このヨーロッパの熱波をもたらした偏西風の異常な蛇行、この影響が波として
東に伝わって、日本の異常な夏をもたらしたと考えられます”

なるほど。 偏西風の蛇行が、上空の気圧配置を変えて、日本にも猛暑が
伝わったわけですね。

“ええ。 そのよな重要な影響をもたらすようなものなのですね”

“風というのは雨の恵みに始まって、湿り気・熱・それから冷気、それが世界を
巡る事によって、そこに暮らす多くの人々を一緒につないで行く”

“そうした重要な自然の現象であるという事が言えると思います”

今回は、地球を取り巻く大気の流れである、風を見て来たのですが、風は、
世界のさまざまな場所で、色んな現象を起こして、また暮らしにも密接に結び
付いたものなのだという事を、改めて感じましたね。

風って、目には見えないですが、時には厳しく、時に優しく、一方で私たちに
恵みまでもたらしてくれる、そんな存在だったのですね!

竜巻が襲った北米、トルネードアレー。 ‘不思議な形の雲が出ていますね…’

乳房雲(ちぶさぐも)と呼ばれる、奇妙な形をした雲。

風によって、空高く持ち上げられた水分が、降りて来た時に見られる、神秘の
光景です。 そしてもう1つ、激しい風が、もたらすものがあります。

それは、この地に生きる人々の暮らしを支える、天の恵み。

“竜巻の風は、大雨を伴う。 俺たちは、その雨を求めているんだ”

“雨のメリットが、竜巻のデメリットを上回るんだ”

循環する大気、風。 大地にもたらす、恐怖と恩恵。 相反する2つの姿。

それは太古の昔から、人が恐れ、敬い続ける、地球の息吹なのです。