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すばる望遠鏡を使った広域深宇宙探査プロジェクトとは?
2020年10月29日 (木) | 編集 |
第2121回「去年の今頃は何をしていましたか?」
ハワイ島・マウナケア。 ダークマターに迫る、あるプロジェクトが進行中です。

プロジェクトのリーダーで、国立天文台の日本人の博士です。

Q: 結構、何回も、この道を通ったのですか?

“そうですね… 数え切れないですね…”

“HSCだけでも本当に… 100は超えているんじゃないですかね…”

標高4200メートル。 マウナケア山頂に建つ、日本の、すばる望遠鏡です。

2014年から始まった、広域深宇宙探査プロジェクト。

観測するのは、天の川銀河のはるかかなた。

無数の銀河が浮かぶ、広大な空間。

ここにあるはずの、ダークマターを探査します。

これまでに、200日を超える観測が行なわれました。

博士に、観測データを見せてもらいました。

“少しずつ拡大して行くと、ここに映っているのが、こういう白い斑点のような
もの。 これが非常に遠方の銀河なのです”

“ギリギリ映っているのは、50億光年とか、遠方の銀河なのですが…”

“こういうものが、びっしりと映っていて…”

夜空に輝いているのは、太陽のような恒星です。

プロジェクトが観測しているのは、星が少ない場所。

見えて来た無数の点は、星ではなく、星が集まって出来た銀河です。

宇宙には、こんなにもたくさんの銀河が、満ち溢れています。

更に、近付くと… 100億光年もかなたの銀河が現れました。

ダークマターに挑むプロジェクトチームが捉えたのは、どこまでも広がる驚異の
銀河マップです!

この銀河マップは、博士が、10年以上かけて開発したカメラが撮影しました。

“こちらが、TUEフロアと呼ばれているのですが…”

建物の4階にある、そのカメラを見せてもらいました。

“こちらが、Hyper Suprime-Cam  HSC の本体になります”

HSC → Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム) 。

すばるの主焦点に取り付けるカメラです。

高さ3メートル。 重さは3トン近いHSCは、世界最大級のデジタルカメラです。

“カバーを外すと、大体、およそ直径82~83センチの第1レンズ”

“こんな大きなレンズを磨いて、精度よく組み立ててっていう、技術をもってる
会社… それが、たまたま日本にいてくれたおかげで、実現する事が出来た”

HSCは、ダークマター探査のために、一から設計されました。

口径8.2メートルの主鏡へ届いた宇宙からの光が、最初に焦点を結ぶのが、
主焦点。 HSCは、ここに搭載されます。

カメラに入った光は、まず、7枚のレンズを通り抜け、補正されます。

そして、最後にたどりつくのが、光を電気信号に変えて画像にするCCD。

8億7000万画素を誇る解像度は、ハイビジョンカメラの400倍に相当します。

“宇宙の、どの天域に、どのくらいのダークマターがあるかという事は、まだ
観測的に分かっていないのです”

“その分布を、まず調べたいと思って、このカメラを作りました”

“もちろん、ダークマター、光、出してませんが、直接、ダークマターを観測でき
ないのですが、あるテクニックを使って、ダークマターの分布を、あぶり出そう
としています”

HSCが誇る、高い解像度。

博士は、ここからダークマターの正体に、迫ろうとしています。

観測装置を自ら設計して、宇宙の謎に迫る。

博士が、その原点を学んだのが、ハワイ大学・天文学研究所です。

国立天文台に入ってすぐに、ここで2年間、研究員として過ごしました。

“この辺の… あのラボベンチも記憶があって、色んなハンダ付けとかしてた
場所ですね…”

“昔は、ここに、何か、こう… ちっちゃいミニステレオセットがあって、こう…
スピーカーがあって… ものすごいボリューム上げて音楽聴きながらずーっと
何時間も、ハンダ付けするという、そういう場所でした…”

“こんなの、いまだに使ってる… ハハハ… いや~、懐かしいですね…”

20代だった博士に、後のHSCにつながる大きな影響を与えたのが、恩師の
ルピーノさんです。

1990年代ルピーノさんが天文観測に取り入れた画期的なものがありました。

それは、今も、大切に保管されています。

‘あの時のCCDだ… これを覚えているでしょう…’

“ルピーノさんは、これを作るために、大変な努力をしていました”

“これは、ルピーノさんの、ある意味… 努力の結晶の1つであるCCDですね”

“彼がいなかったら、このCCDは作られる事はなかったですし、天文の世界で
使う事もできなかった…”

“当時としては、本当、世界で最高水準の性能を持つCCDでしたね…”

CCDを使えば、まだ見ぬ宇宙を、観測できるはずだ!

ルピーノさんは、自らの手で、CCDカメラを開発しました。

その成果の1つが、太陽系の外縁部に存在が予言されていたカイパーベルト
天体の発見です。

1992年。 CCDカメラが、60億キロ離れた小天体の撮影に始めて成功したの
です。

ハワイ大学の教授は、言う。

“天文学者が欲しいカメラを作ってくれる人は、世界中、どこにもいません”

“どこかの企業に依頼して、ただ待ち続けるよりも、自分たちで作る事が大切
です”

手作りの装置で、宇宙の謎に挑む。

ルピーノさんは2年前に亡くなりましたが、その精神は、日本の博士に受け
継がれました。

日本に戻った博士が、CCDを使って挑むと決めたのは、ダークマターを捉える
事でした。

そのために、まずは、全面にセンサーが貼られた特別なCCDを開発する事に
しました。 博士が目指すのは、世界最高の解像度を持つカメラです。

もし、この縁のないCCDを116枚隙間なく並べる事が出来れば、1つの巨大な
CCDとして使えるはずです。 2011年、作業が始まりました。

博士たち開発チームは、組み上げから性能確認まで、全てを自分たちの手で
行ないます。 しかし、前例のない作業は、困難を極めました。

縁のないCCDを敷き詰めます。 手で触れる事は、一切、許されません。