2020年09月12日 (土) | 編集 |
第2118回「FC2ブログを始めてどれくらい経ちますか?」
突然ですが、あなたは、地球防衛という言葉を聞いた事がありますか?
実はこの言葉、NASAが行なっているプログラムの名称 Planetary Defense。
宇宙の脅威から、惑星・地球を守る技術です。
宇宙の脅威といえば、星の爆発によって放たれる強力な放射線や、寿命を
終えつつある太陽に地球がのみ込まれる等、様々なケースが考えられます。
でも、地球防衛が想定する脅威は、地球目がけてやって来る小惑星です。
2013年2月15日。 ビルほどの大きさの小惑星が、ロシアに落下。
1000人を超す人が、負傷しました。
あと少し大きければ、死者が出ても、おかしくなかったといいます。
こうした危険を事前に知るため、NASAは毎晩、監視活動を行っています。
ターゲットは、地球に近い軌道を持つ、危険な小惑星。
専用望遠鏡が、20年にわたって観測を続けた結果、これまでに2万個が見つ
かっています。
そして、2018年6月。 地球防衛の活動中に、大事件が起こりました。
ベテラン観測者の目が捉えたのは、猛烈なスピードで動く、かすかな点。
すぐにNASAが計算を行い、地球に衝突する確率が、はじき出されました。
その値は、38%。 3時間半後には、別の望遠鏡も追加観測に成功。
予想衝突地点が絞り込まれます。 その破片を求め大捜索が行われました。
私たちは、いつ来るとも知れない宇宙の脅威に、どの様に立ち向かおうとして
いるのでしょうか? 今回は、地球防衛の最前線に迫ります。
アメリカ南西部に位置する、アリゾナ州ツーソン。
ここに、長年、NASAの地球防衛プログラムを支え続けて来た天文台があり
ます。 観測を行うため、毎日、スタッフが山に通っています。
やって来たのは、レモン山天文台です。
危険な小惑星を監視するのは、13年のキャリアを持つ、ベテラン観測者です。
“この惑星の、全ての住民の命を守るために、地球防衛の活動をしています”
“小惑星の衝突で、誰かがケガをしたり、ましてや、人類が絶滅するなんて嫌
ですからね!”
NASAの地球防衛には、20年の歴史があります。
そのキッカケは、小惑星にまつわる、ある事件でした。 1998年3月。
天体情報を取りまとめている機関が、
小惑星が地球に衝突する可能性がある! と、発表したのです。
もし、本当なら、甚大な被害が見込まれるため、大きなニュースになりました。
当時の混乱をよく知る、科学者の1人を訪ねました。
“あの時の小惑星は、かなり大きかったのです”
“しかも、地球に衝突する可能性があるとされたのが、僅か30年後だった事も
あり、大きなニュースになりました”
“私のいたジェット推進研究所でも、すぐにデータを取り寄せて、最新の方法で
計算を行いました。 結局、衝突はあり得ないというのが、正しい結論でした”
混乱を繰り返さないため、NASAは、ジェット推進研究所に特別な部署を設置
しました。
危険な小惑星情報の収集と、地球との衝突確率の計算を行うためです。
これが、本格的な地球防衛の始まりです。
それから20年経った、2018年6月1日の晩。
レモン山天文台の望遠鏡が、1つの新天体を捉えました。
その日の観測者は、13年のキャリアを持つベテラン観測者で、3日続く観測の
初日でした。 発見時の画像が、こちら。
10分置きに撮影した4枚の画像を連続して切り替えると、動きが速く、地球に
近い事が分かりました。
ベテラン観測者は、この天体についてすぐに報告し、夜明けとともに天文台を
後にしました。
“この天体の正体を知ったのは、文字通り、私が最後でした”
“観測者は、危険な小惑星を見つけて、素早く報告するのが仕事です”
“その先の軌道計算は、別のエキスパートが行います”
ベテラン観測者が見つけた、1つの天体。
これが、にわかに、地球防衛関係者の注目を集める事になります。
発端となったのは、NASAジェット推進研究所。
新天体が報告されると、すぐに、軌道計算を実施するシステムが、2015年から
稼働を始めていたのです。 結果が、こちら。
3カ月前は火星軌道の外側にあった未知の小惑星が、発見時、月とほぼ同じ
距離にまで迫っていました。
およそ8時間後、秒速20キロ近い猛スピードで地球に衝突するおそれがある
というのです。 明るさから概算したサイズは、2~4メートル。
小型の自動車ほど、とされました。
この情報は、世界中の天文台や、研究所にいる関係者に送られました。
その1人が、ハワイ大学にいます。
ここでは、2015年から、地球防衛専用の望遠鏡を運用しています。
アメリカ本土が朝を迎えても、ハワイは、まだ夜が続きます。
アリゾナに続いて、同じ天体を捉えられるかも知れません。
望遠鏡は、標高3000メートルの山の頂にあります。 (ハレアカラ山天文台)
こちらが、アトラス望遠鏡。
地球に向かって来る小惑星を見つけるため、ゼロから設計されました。
口径60センチと、比較的小ぶりですが、特徴は何といっても、その素早い動き
です。 同じ場所を繰り返し観測し、危険な小惑星の監視を行っています。
6月1日の晩に撮影した膨大なアトラスの観測画像に、レモン山で見つかった
小惑星は、写っていたのでしょうか?
ハワイ大学天文研究所の博士は、言う。
“おおよその場所は分かっていましたし、動きが速く、短い線のように写る
はずなので、見分けは、つくはずでした”
“後は、画像から、それを探し出せる人が必要でした”
リーダーの博士は、チームの若手に声を掛けました。
“あれは、土曜の朝でした”
“仕事を忘れて、家族とのんびり朝食をとっていたら、突然、リーダーから電話
があったのです”
電話を受けた彼は自宅から観測画像にアクセスし、すぐに作業を始めました。
“取りかかった時は、ほぼ望みは無いと思っていました”
その日の晩は、ご覧の通り、雲が多く、観測条件が悪かったのです。
それでも諦めずに作業を続けた彼は、2時間後、高速で移動する淡い天体を
ついに見つけました。
“それは、本当に、かすかな線でした。 でも、場所もスピードもピッタリでした”
レモン山での発見から、3時間半後。 (小惑星2018LA)
アトラスも、同じ天体を捉えていたのです。
稼働して間もない小さな望遠鏡と、それを支える若いチームが、大きな仕事を
成し遂げました。
“3年前に、私が、このチームに加わった時から、待ち望んでいた事が、ついに
起きました。 本当に、興奮しました!”
“これで、アトラスが地球防衛に役立つと証明されました”
“衝突寸前の小惑星を迎え撃つ、いわば、最後の砦なのです!”
アトラスの情報は、すぐNASAに送られ、新たな計算が行なわれました。
レモン山の観測のみの予想衝突地点が、こちら。
誤差が大きく、ニューギニアからアフリカに至る、広い領域に、細長く広がって
いました。
ここにアトラスの情報が加わると、極めて狭い領域へと絞られました。
小惑星が小さかったため、避難の呼びかけは行なわれませんでしたが、
関係者は、予測精度の高さに目をみはりました。
2015年に稼働を始めた、最新の地球防衛システムが、今回、地球に衝突する
小惑星を初めて捉えたのです。
小惑星は、本当に、予想通りの場所に落ちたのか? 追跡します。
突然ですが、あなたは、地球防衛という言葉を聞いた事がありますか?
実はこの言葉、NASAが行なっているプログラムの名称 Planetary Defense。
宇宙の脅威から、惑星・地球を守る技術です。
宇宙の脅威といえば、星の爆発によって放たれる強力な放射線や、寿命を
終えつつある太陽に地球がのみ込まれる等、様々なケースが考えられます。
でも、地球防衛が想定する脅威は、地球目がけてやって来る小惑星です。
2013年2月15日。 ビルほどの大きさの小惑星が、ロシアに落下。
1000人を超す人が、負傷しました。
あと少し大きければ、死者が出ても、おかしくなかったといいます。
こうした危険を事前に知るため、NASAは毎晩、監視活動を行っています。
ターゲットは、地球に近い軌道を持つ、危険な小惑星。
専用望遠鏡が、20年にわたって観測を続けた結果、これまでに2万個が見つ
かっています。
そして、2018年6月。 地球防衛の活動中に、大事件が起こりました。
ベテラン観測者の目が捉えたのは、猛烈なスピードで動く、かすかな点。
すぐにNASAが計算を行い、地球に衝突する確率が、はじき出されました。
その値は、38%。 3時間半後には、別の望遠鏡も追加観測に成功。
予想衝突地点が絞り込まれます。 その破片を求め大捜索が行われました。
私たちは、いつ来るとも知れない宇宙の脅威に、どの様に立ち向かおうとして
いるのでしょうか? 今回は、地球防衛の最前線に迫ります。
アメリカ南西部に位置する、アリゾナ州ツーソン。
ここに、長年、NASAの地球防衛プログラムを支え続けて来た天文台があり
ます。 観測を行うため、毎日、スタッフが山に通っています。
やって来たのは、レモン山天文台です。
危険な小惑星を監視するのは、13年のキャリアを持つ、ベテラン観測者です。
“この惑星の、全ての住民の命を守るために、地球防衛の活動をしています”
“小惑星の衝突で、誰かがケガをしたり、ましてや、人類が絶滅するなんて嫌
ですからね!”
NASAの地球防衛には、20年の歴史があります。
そのキッカケは、小惑星にまつわる、ある事件でした。 1998年3月。
天体情報を取りまとめている機関が、
小惑星が地球に衝突する可能性がある! と、発表したのです。
もし、本当なら、甚大な被害が見込まれるため、大きなニュースになりました。
当時の混乱をよく知る、科学者の1人を訪ねました。
“あの時の小惑星は、かなり大きかったのです”
“しかも、地球に衝突する可能性があるとされたのが、僅か30年後だった事も
あり、大きなニュースになりました”
“私のいたジェット推進研究所でも、すぐにデータを取り寄せて、最新の方法で
計算を行いました。 結局、衝突はあり得ないというのが、正しい結論でした”
混乱を繰り返さないため、NASAは、ジェット推進研究所に特別な部署を設置
しました。
危険な小惑星情報の収集と、地球との衝突確率の計算を行うためです。
これが、本格的な地球防衛の始まりです。
それから20年経った、2018年6月1日の晩。
レモン山天文台の望遠鏡が、1つの新天体を捉えました。
その日の観測者は、13年のキャリアを持つベテラン観測者で、3日続く観測の
初日でした。 発見時の画像が、こちら。
10分置きに撮影した4枚の画像を連続して切り替えると、動きが速く、地球に
近い事が分かりました。
ベテラン観測者は、この天体についてすぐに報告し、夜明けとともに天文台を
後にしました。
“この天体の正体を知ったのは、文字通り、私が最後でした”
“観測者は、危険な小惑星を見つけて、素早く報告するのが仕事です”
“その先の軌道計算は、別のエキスパートが行います”
ベテラン観測者が見つけた、1つの天体。
これが、にわかに、地球防衛関係者の注目を集める事になります。
発端となったのは、NASAジェット推進研究所。
新天体が報告されると、すぐに、軌道計算を実施するシステムが、2015年から
稼働を始めていたのです。 結果が、こちら。
3カ月前は火星軌道の外側にあった未知の小惑星が、発見時、月とほぼ同じ
距離にまで迫っていました。
およそ8時間後、秒速20キロ近い猛スピードで地球に衝突するおそれがある
というのです。 明るさから概算したサイズは、2~4メートル。
小型の自動車ほど、とされました。
この情報は、世界中の天文台や、研究所にいる関係者に送られました。
その1人が、ハワイ大学にいます。
ここでは、2015年から、地球防衛専用の望遠鏡を運用しています。
アメリカ本土が朝を迎えても、ハワイは、まだ夜が続きます。
アリゾナに続いて、同じ天体を捉えられるかも知れません。
望遠鏡は、標高3000メートルの山の頂にあります。 (ハレアカラ山天文台)
こちらが、アトラス望遠鏡。
地球に向かって来る小惑星を見つけるため、ゼロから設計されました。
口径60センチと、比較的小ぶりですが、特徴は何といっても、その素早い動き
です。 同じ場所を繰り返し観測し、危険な小惑星の監視を行っています。
6月1日の晩に撮影した膨大なアトラスの観測画像に、レモン山で見つかった
小惑星は、写っていたのでしょうか?
ハワイ大学天文研究所の博士は、言う。
“おおよその場所は分かっていましたし、動きが速く、短い線のように写る
はずなので、見分けは、つくはずでした”
“後は、画像から、それを探し出せる人が必要でした”
リーダーの博士は、チームの若手に声を掛けました。
“あれは、土曜の朝でした”
“仕事を忘れて、家族とのんびり朝食をとっていたら、突然、リーダーから電話
があったのです”
電話を受けた彼は自宅から観測画像にアクセスし、すぐに作業を始めました。
“取りかかった時は、ほぼ望みは無いと思っていました”
その日の晩は、ご覧の通り、雲が多く、観測条件が悪かったのです。
それでも諦めずに作業を続けた彼は、2時間後、高速で移動する淡い天体を
ついに見つけました。
“それは、本当に、かすかな線でした。 でも、場所もスピードもピッタリでした”
レモン山での発見から、3時間半後。 (小惑星2018LA)
アトラスも、同じ天体を捉えていたのです。
稼働して間もない小さな望遠鏡と、それを支える若いチームが、大きな仕事を
成し遂げました。
“3年前に、私が、このチームに加わった時から、待ち望んでいた事が、ついに
起きました。 本当に、興奮しました!”
“これで、アトラスが地球防衛に役立つと証明されました”
“衝突寸前の小惑星を迎え撃つ、いわば、最後の砦なのです!”
アトラスの情報は、すぐNASAに送られ、新たな計算が行なわれました。
レモン山の観測のみの予想衝突地点が、こちら。
誤差が大きく、ニューギニアからアフリカに至る、広い領域に、細長く広がって
いました。
ここにアトラスの情報が加わると、極めて狭い領域へと絞られました。
小惑星が小さかったため、避難の呼びかけは行なわれませんでしたが、
関係者は、予測精度の高さに目をみはりました。
2015年に稼働を始めた、最新の地球防衛システムが、今回、地球に衝突する
小惑星を初めて捉えたのです。
小惑星は、本当に、予想通りの場所に落ちたのか? 追跡します。
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