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小惑星探査で世界をリードして来た日本が追い抜かれる?
2020年07月20日 (月) | 編集 |
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はやぶさ2のライバル、オシリス・レックス。

2020年8月に着陸する事が、決まりました!

ところが、オシリスの最初の論文の発表は、はやぶさ2と同じ日でした。

一体、何があったのでしょうか?

論文発表の1カ月前。 2019年2月。

はやぶさ2チームはタッチダウンを直前に控え、多忙な日々を送っていました。

そんな時、突然、1通のメールが届きます。

メールを受け取ったのは、はやぶさ2のメンバー、光学航法カメラ担当の東京
大学の教授です。

“私は、通勤の朝の電車に乗りながら、メールを、いつも確認するのです”

“電車の中で、 えっ! っとなったというのが、その日の朝で”

“オシリス・レックスの分光計のデータ解析をやる主任の人ですね”

“これまで会った事も、電子メールのやり取りをした事もない人だったのです”

メールには、驚くべき内容が記されていました。

“教授、ご存知かも知れませんが、オシリスは、もうすぐ初期観測の論文を
発表します。 はやぶさ2の論文は、いつ頃、発表する予定ですか?”

研究の世界では、論文は、早い者が勝ちです。

“ええ~! そんなに、すぐ出るのー?”

“だけど、よく知らせてくれたよねっていう、その2つでしたね…”

“問題は、どうするのだと。 我々は、どうするのだと…”

“急ぐしかないっていう。 まぁ、そういう事ですけどね…”

詳しく聞いてみると、論文の発表は、1カ月後。

タッチダウンの準備に追われていた教授は、急遽、論文の作成も急ぎます。

“でも、私、これ見た時に、短い文章ですけど、よく考えて書いたメールだなと
いうのは直感しました”

“偉そうに読めるかも知れない事、そういう事を一切、排除してあって”

“こういうの書くのは、すごい時間がかかるのですよ。 逆に短く”

“あぁ、これ、気を遣っているなと思って”

“我々のチームに対しての信頼とか、敬意を感じる源泉ですね…”

教授にメールを送った研究者は、アメリカのコロラド州にいました。

サウスウエスト研究所で、ベンヌの水の分析を担当している人物です。

“メールを送る時は、緊張しました。 お会いした事がなかったので”

“彼の研究を尊敬しているから、事前に連絡をしたと、分かってほしかったの
です”

“はやぶさ2は、私たちより先に進んでいた計画なので、出し抜こうとは考えて
いませんでした”

分析担当者が、論文の発表を急ぎたかったのは、ベンヌの水について重大な
発見があったからです。

水分の分析に使ったのは、オヴァースと呼ばれる、分光計です。

この装置を使うと、ベンヌが反射する光から、そこに水があるかどうかを特定
する事ができます。 観測データから作った、ベンヌ表面の図です。

青い場所は、水分が多い事を示しています。

ベンヌには、水が豊富にある可能性が高まったのです。

“水分が全域にあると分かって、嬉しかったです”

“どこでサンプルを採取しても、水を得る事ができるのですから!”

小惑星に水分がある事は、科学的に重要な事を示唆しています。

かつて、こうした小惑星が地球に衝突して、水をもたらしたと考えられるから
です。

ベンヌに含まれる水分を調べる事で、地球の水の起源が分かるかも知れま
せん。

だから、あえて、ベンヌの水の分析担当者は、東京大学の教授へ、メールを
事前に送ったのです。

もちろん、はやぶさ2も、リュウグウの水の分析を進めていました。

こちらが、リュウグウの水分の分布図です。

青い所が水分が多く、赤い所が少ない事を示しています。

リュウグウには、水が僅かしかないと考えられました。

光学航法カメラ担当の東京大学教授は、言う。

“熱なのか、衝突なのか… 何かの影響で、水が蒸発してしまう…”

“含水鉱物が分解して水になって飛んで行ってしまうという、そういうイベントを
経験した、そういう星ではないかと…”

水の量をめぐって、対照的な観測結果が出た、ベンヌとリュウグウ。

その違いが分かる論文が、2019年3月19日、同じ日に発表されたのです。
はやぶさ2→リュウグウ表面の観測結果(サイエンス)
オシリス・レックス→ベンヌの水分の証拠について(ネイチャー)

世界中で、大きな反響を呼びました。

“とにかく彼らが、正直にやってくれた事を感謝したいし、いい人たちが相手で
よかったなと思いますね…”

ベンヌの水の分析担当は、言う。

“他の科学者の論文を読む事ができると、発見も増えます”

“お互いに協力し、理解し合う事は、とても良い事だと思います”

新たな関係を築き始めたオシリスと、はやぶさ2の研究者たち。

2019年11月5日、アリゾナ州ツーソン。

この日、2つのプロジェクトが共同で、研究会を開きました。

それぞれの主要メンバーが参加。

ここで、オシリスのチームから、驚くべき発表がありました。

“ベンヌから放出された粒子の軌道について、説明します”

“ベンヌの表面で、何度か、爆発のような現象がありました”

“いくつもの粒子が、同時に放出される時もあり、2週間に1度くらいの割合で
起こっています”

こちらは、オシリスが偶然、捉えたベンヌの表面です。 (2019年1月19日)

何かが、放出されていました。

この現象は、1度だけでなく、複数回、観測されたというのです。

オシリス・チームの分析によると、大きさ1センチほどの岩石が、多い時で、
200個ほど放出。

小惑星で、このような現象が捉えられたのは、初めての事でした。

見た目は同じでも、違いが次々と明らかになって来た、ベンヌとリュウグウ。

研究が進めば、小惑星の理解が深まります。

ライバルであり、仲間でもある、オシリス・レックスと、はやぶさ2。

2つのチームは、これからも切磋琢磨しながら太陽系の謎の迫って行きます。