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チョウの小さな体に秘めた驚きのパワーで技術を革新させ人類を救う?
2024年03月18日 (月) | 編集 |
FC2 トラックバックテーマ:「お家に絵は飾っていますか?」
とても小さな、ある生き物が科学者の注目を集めています。 それは、医療
技術を革新させるアイデアをもたらし、気候変動のバロメーターともなります。
彼らは、人と地球の関係の見張り番です。

鮮やかな色。 羽の鱗粉の特殊な構造から、この鮮やかな青色が生まれて
います。 危険な化学物質や細菌を防ぐ力も。 汚染物質に触れた途端、
色が青から赤へと変わり、危険を知らせます。 未来都市のヒントにも。

気候変動による海面の上昇が続けば、将来は、多くの都市を海上に造る
必要が生じます。 長年の進化によって人類に、さまざまなアイデアをくれる
ようになった生き物、それは、チョウとガです。

人類が抱える課題を、解決してくれるかもしれません。 チョウとガの驚きの
世界に迫ります。 チョウの仲間の特徴といえば、その美しさです。 繊細な
羽をはためかせ、優雅に空を舞います。 まばゆい色彩と模様は、あらゆる
動物の中でも際立っています。

その仲間は、16万種とも言われ、地球上の、ほぼすべての場所に生息して
います。 チョウとガは、北の寒い地域でも砂漠でも、熱帯雨林でも見ることが
できます。 長年にわたって進化し、見た目の美しさだけでなく、多くの特殊な
能力も備えてきました。

今、世界中の科学者が、この自然の宝を研究し、その特徴を応用して持続
可能な世界を、つくろうとしています。 私たちは、彼らから多くを学ぶことが
できるのです。 チョウの仲間が誕生したのは、1 億年以上前。

花を咲かせる植物が広がっていったのと同じ頃です。 それ以来、さまざまな
変化に適応し、進化を続けてきました。 強力な毒。 絹の糸。 ホバリング
能力。 透明な体。 体温の調整。 鮮やかな色。 感染症に対する防御。

しかし、チョウやガの仲間の多くは、今、温暖化によって絶滅の危機に瀕して
います。 北米に生息するオオカバマダラを脅かしているのは、気候変動と
生息地の喪失です。

生物学者のグリーン2世は、このオオカバマダラの複雑な生態を研究して
います。 よく尋ねられる質問があります。 それは、オオカバマダラという
特定のチョウを研究することに、どんな特別な意味があるのかということです。

彼らは、毎年、アメリカ大陸を大移動する特別な習性があります。 それを、
観察することで、人が地球に及ぼす影響が見えてきます。 毎年、何百万匹
ものオオカバマダラが、カナダやアメリカ北部から旅立ちます。

目的地はメキシコで翌年の春まで、とどまります。 およそ、5000キロメートル
最長で2カ月にも及ぶ試練の旅です。 メキシコに到着するオオカバマダラの
数を調査すると、過去20年の間に、生息数が一貫して減り続けているのが
分かります。 これは、懸念すべき事態です。

その要因として考えられているのは、移動ルート上の環境の変化です。
移動ルート上に花が少なくなれば蜜を吸うことができず、エネルギーを十分に
補給できません。 目的地まで飛べなくなってしまいます。

さらに気候の変化や、農業や土地開発による地形の変化からも影響を受け
ます。 メキシコに到着したオオカバマダラは、冬の間、休眠します。 無事に
冬を乗り切るには、万全の状態で休眠に入る必要がありますが、気温の上昇
などの変化があれば、目覚めるタイミングが乱れ、生存が脅かされます。

休眠中のオオカバマダラは、とてもデリケートな存在です。 休眠している間に
体に蓄えた脂肪は、ゆっくりと燃焼されます。 しかし、早く目覚めてしまうと
周囲に、まだ花がないため、食料不足となり、春が来る前に脂肪を消費
し尽くしてしまいます。

その結果、体力が落ちて感染症の影響を受けやすくなり繁殖期を迎える前に
越冬地で死んでしまう個体が増えます。 オオカバマダラの生息数の推移を
調べることで、温暖化が、いかに生態系を乱しているかを推測できます。

それは、ほかの生き物たちが、置かれた状況を知るのにも役立つのです。
チョウの研究から見えてくるのは、気候変動の実態だけではありません。
今、専門家たちはナノスケールと呼ばれる分子レベルの極めて小さな単位で
チョウの羽や体の構造を研究しています。

この研究を通して医療技術や気候変動対策に、革新を、もたらそうとしている
のです。チョウやガの体には、私たちが参考にできる興味深い構造や機能が
数多く見られます。 彼らは人類が解決できていない課題を、すでに解決して
いるのです。

人類は古くは、5000年以上前からチョウやガの特性を利用して、生活を向上
させてきました。 例えばガの一種、カイコガが生み出す絹は優れた弾力性を
持つ素材として、幅広い用途に使われてきました。

絹は中国の宮廷で貴重品として大切にされました。 生産方法は極秘とされ、
秘密を国外へ漏らすと、死刑に処せられたほどです。 もちろん、今では、
作り方は世界中に広まっています。

絹の生産は、蚕と呼ばれる幼虫の誕生から始まります。 卵から生まれた
ばかりの蚕は、3ミリほどの大きさです。 蚕は、桑の葉っぱだけを食べて
成長します。 膨大な量の桑の葉が、絹糸へと生まれ変わるわけです。

生まれてから、ひとつきほどの間、食べ続けると、蚕は、成虫になるための
変態を行います。 8の字を描くような動作を数日間、繰り返し、総計1500
メートルにも及ぶ、粘着性の糸を吐き出します。 これが、絹糸です。

自分の体を包み、繭を作ります。 この糸を分析すると、主に2種類の
タンパク質で構成されていることが分かります。 今、人類と絹の物語は、
新たな展開を迎えています。 アメリカ・タフツ大学のシルクラボ。
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ここで研究者たちは、絹の2種類のタンパク質のうちの1つ、フィブロインを
分離し、画期的な素材を開発しました。 このフィブロインは、さまざまなものに
応用できる、いわば魔法の素材です。 作り方は、こうです。

絹を溶かして、フィブロイン分子が混じった水溶液を作ります。 ここから溶媒
である水を取り除けば、後にはタンパク質が残ります。 これが様々な製品に
応用できる素材となります。

フィブロインは、さまざまな形に加工しやすく、環境にも優しい素材です。
この透明のゲルの状態から、柔軟性に優れたものにも、鋼鉄のように硬い
ものにも加工できます。

生体医工学者は、フィブロインの医療への応用を研究しています。 プラス
チックよりも、人体との相性が良いためです。 それが、新開発のネット?
良さそうだね。 でも、まだ、伸ばすと崩れてしまって。 もっと伸縮性があれば
絆創膏のような用途に使えるでしょうね。

そうですね。 もう少し薬品の配合率を変えて、ネットが伸縮しやすくなる
ように調整したいですね。 絹には、人体に埋め込んでも炎症を引き起こさ
ない性質があります。 食べても安全です。 そういった意味で医療に用いる
のには、最適の素材なのです。

フィブロインは、硬く丈夫にも、柔軟に曲がるようにも加工できることが分かり
ました。 それは、体に埋め込む医療器具、インプラントの材料として、うって
つけでした。 一般的な機械で、さまざまな形に成型できる素材です。

人間の体に埋め込む小さなネジを作ることもできるでしょう。 フィブロインで
作ったネジで留めれば、骨も接合しやすくなると考えられます。 これは、
生体組織と、なじみやすい素材なのです。 器具として優れているばかりで
なく、医療的な効果も兼ね備えています。

フィブロインは、ほかにも、さまざまな使い道が研究されています。 例えば、
細菌やウイルスなどに反応する化学物質とフィブロインを組み合わせる事で
危険物に反応して色が変化するインクが出来ました。

こちらのタペストリー使ったインクは、周囲の環境に反応します。 つまり、
何らかの変化が生じると、それに応じて色が変わるのです。 この生地は、
危険な物質を扱う作業員の防護服に使われる予定です。

インクが特定の物質を検知するセンサーとなります。 危険物を扱う作業員の
防護服、例えば手袋に、このインクで汚染という文字をプリントしておきます。
すると、作業員の手が汚染物質に触れた途端、この文字が、青から赤へと
変わって危険を知らせるのです。

チョウやガのライフサイクルは独特です。彼らの生涯は4つの段階にハッキリ
分かれています。 卵・幼虫・さなぎ、そして成虫です。 さなぎから出た
ばかりのチョウは、とても、もろい状態です。

やわらかな布のような羽と体を伸ばしていきます。 その姿は、幼虫の時とは
全く異なり、繊細で優雅な生き物へと変貌を遂げています。 最も特徴的
なのが、さまざまな色や模様に彩られた羽。

中でも特に色鮮やかな羽を持っているのが、熱帯雨林に生息する、モルフォ
チョウのオスです。 物理学者は、このモルフォチョウの羽の特徴を研究して
います。

モルフォチョウの青色は、種によって違いがあり、羽ばたき方も異なります。
羽の角度と光の当たり方によって、見え方が異なるため、羽ばたいて飛んで
いるときには、青みが変化してみえます。 これは、オスとメスの、ひそかな
コミュニケーションにも使われます。

うっそうとした密林でも、異性に存在をアピールできます。  しかし、メスの
チョウから、よく見えるということは、おなかをすかせた鳥たちからも、よく
見えるということです。

目立つ姿をしながらも、敵に捕まらないようにしなければなりません。その点、
モルフォチョウが、どのように対応しているのかというと、これは、この種に
限った事ではないのですが、まっすぐに飛ばない事で敵をかく乱しています。

青い羽を、きらめかせながらもジグザグに飛び、容易に敵を追いつかせ
ません。 まっすぐではなく、クネクネと飛ぶので、鳥は、その軌道を予測でき
ません。 空中で捕まえることは困難です。

モルフォチョウが、多くの研究者を引き付ける理由は、やはり、その色です。
自然界では、まれな、この輝く青色は、どのように生まれるのでしょうか?
これは、モルフォチョウの羽を拡大したものです。見えているのは鱗粉です。

鱗粉は、2つの層からなっていて、上の層は透明です。 青色に発色して
見えるポイントは、下の鱗粉の層にあります。 モルフォチョウの色は、ほかの
多くの生き物とは異なる、独特の仕組みによって生まれています。

多くの生き物では、細胞内にある色素と呼ばれる物質が、光を反射することで
色が生じます。 例えば、赤く見える場合、それは、赤い光だけが反射され、
ほかの色の光は全て吸収された状態です。

一方で、色素によらない発色もあります。 モルフォチョウの青色は、色素
ではなく、羽の構造から生まれています。 鱗粉を顕微鏡で見ると、1000
万分の1メートルごとに規則的に並ぶ、ひだのような構造体があります。
これが、輝く青色を生み出す秘密です。

羽の表面に小さな凹凸があり、それが青色の光だけを反射するのです。
その凹凸から反射された光は、人間の目にはメタリックで、キラキラした
青色に映ります。 モルフォチョウの青は、色素ではなく羽の構造から生み
出されたものでした。
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特定の角度から羽に光が当たると、鱗粉のナノスケールの構造体が、青い
光だけを反射し、光沢のある青色が生まれるのです。 このように、物質の
構造を利用して生まれる色、構造色の研究から化学物質や塗料を用いずに、
光や色をコントロールする技術が開発されています。

ここから着想を得たのが、アメリカ・ロチェスター大学の物理学者です。
モルフォチョウの羽からヒントを得た研究です。 非常に小さなナノスケールの
構造を物体の表面に刻み込むことで、とてもユニークな性質を持たせることが
できるのです。

赤外線レーザーの光を使うと、10億分の1メートルというナノスケールの
構造を金属に刻み込むことができます。 この技術は物体に、さまざまな
構造色を持たせることができます。 そして、これを応用することで光を反射
せず、極端に吸収する、完全な黒と呼べる物質が作り出されました。

物体が、何かしらの色を発して見えるのは、それが特定の色の光を反射し、
それ以外の色の光を吸収しているからです。 そこで、私たちが開発したのが
ブラックメタルです。 あらゆる色の光を吸収してしまうため、完全に真っ黒に
見えるというものです。

ブラックメタルは太陽光発電に革新的な進歩をもたらすと期待されています。
彼の研究チームは、ソーラーパネルにブラックメタルを用いると、エネルギー
効率が格段に向上することを発見しました。 光を反射せず、ほぼ全て吸収
できるからです。

太陽光発電の技術革新にとどまらず、チョウの羽は、さまざまな可能性を
秘めています。 チョウやガの羽には、飛ぶ以外にも、さまざまな役割があり
ます。 羽の配色や模様は、周りへのサインとなります。 

それは個体どうしやオスとメスの間で交わされるものもれば、捕食者に対して
向けられるものもあります。 自然界において、色は繁殖とサバイバルの
両方で、重要な役割を果たします。

チョウの羽は、しばしば複雑な模様をしています。 そして、不思議なことに
異なる種の間で似たような色や模様が見られる事もあります。 よく見かける
のが、オレンジ色、あるいはオレンジ色と黄色と黒を合わせた模様です。

そこには、食べるとマズイという意味が込められていて、鳥は、その色を見た
だけで避けるようになります。 自然界ではオレンジ・黄色・黒の組み合わせは
しばしば毒と結び付いているため、その色をまとうことで、捕食者を遠ざける
ことができるのです。

こちらの2つは、非常に、よく似ています。  オオカバマダラとカバイロイチ
モンジです。 見分け方ですが、カバイロイチモンジには、羽の端の方に、
もう1本、縦に黒い線があるのです。 そして、鳥は、オオカバマダラは、
マズイと認識していて食べません。

そこでカバイロイチモンジは自分も敵に食べられないようにオオカバマダラの
模様を真似たのだと考えられています。 チョウには、様々な自己防衛策が
あります。 毒を表すサインを身にまとうものもいれば、風景に溶け込んで
敵の目を、ごまかすものもいます。

こちらのツマジロスカシマダラは、ガラスの羽を持つチョウと呼ばれています。
このチョウは、2重の防衛策を持っています。 1つ目は毒をアピールする色。
2つ目は羽の大部分が透明であることです。 まるでガラスのような羽ですが
光を、ほとんど反射しません。

この不思議な特徴が、現在、科学者たちの関心の的となっています。
ドイツのカールスルーエ工科大学では、ツマジロスカシマダラのような透明な
タイプの羽の特性を研究しています。

羽の表面を拡大してみると、柱の形をした構造が見えます。 ナノピラーと
呼ばれるもので、高さも、並ぶ感覚も不規則です。 この不規則性が、光を
反射しないという特性に、機関大きく関わっています。

ここに、高い透明性の秘密が隠されています。 ナノピラーと呼ばれる極小の
円すい状の柱が、サイズも位置も不規則に並ぶことで、光の反射を防止し、
光が通り抜ける仕組みになっています。

この光を反射しないという特性は、さまざまな分野に応用できます。 例えば、
スマートフォンの画面は日光が当たると見づらいので、反射防止スクリーンが
あると便利です。 太陽光発電のパネルも、光を反射せず、吸収できれば、
より多くのエネルギーを生み出すことができます。

今、研究者たちは、チョウの羽と同じ構造を持った、プラスチックフィルムの
開発に取り組んでいます。 成功すれば、透明度が高く、光を反射しない、
革新的な素材となるでしょう。 チョウの羽には、ほかにも、さまざまな特性が
あります。 例えば疎水性、すなわち、水をはじく機能です。

チョウは、体が濡れたら死んでしまいます。 もし、濡れた状態で両方の羽を
閉じてしまったら、くっついて開かなくなるでしょう。 そうならないように、
チョウの羽は、水をはじくように出来ています。 水滴はビーズのようになり、
染み込みません。

はじかれた水滴は、羽の表面に付いたホコリやゴミを、からめ取って転がり
落ちます。 モルフォチョウの羽は水をはじくだけでなく水滴を細かく分解して
より流れ落ちやすくする働きも持っています。

ロチェスター大学の研究室では、物理学者が、チョウの疎水性を応用する
研究を進めています。 ある実験では、金属の表面にレーザーを当て、
モルフォチョウの羽の表面と似た構造を刻みつけました。 同じように、水を
はじくことが出来るかテストします。
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加工した表面に落とした水滴は大きく、はね返されました。 実験は大成功
です。 この水を強く、はね返す金属の特性を応用して、更なる実験が行われ
ました。 私たちは、この強く水をはじく金属を2枚合わせて、1つの部品に
組み立てました。 そして、この部品を、水の中に入れました。

すると、水をはじく力によって、2枚の間の空間から水が押し出され、そこに
空気が保たれます。 こうして、間に閉じ込められた空気の浮力によって、
金属は沈まず、いつまでも水に浮いている状態になるのです。

この技術は船に用いることができますが、物理学者は、気候変動への適応策
にも応用できると考えています。 気候変動による海面の上昇が続けば、
将来は、多くの都市を海上に造る必要が生じるかもしれません。

この、水に浮かぶ金属を使用すれば、沈まない水上都市を建設することも
夢ではないはずです。 近い未来、チョウの羽から導かれた技術が、人類を
危機から救ってくれるのかもしれません。

チョウの羽のすごさは、目を引く模様だけではありません。 その構造は、色・
透明さ・敵を欺く力など、さまざまな能力に、つながっています。 そして実は、
チョウの羽は、エネルギー効率を高めることにも貢献しています。

ほかの昆虫と同様、チョウとガも体温は周囲の気温に左右されます。 まずは
日光で体を温めなければ飛び立つことができません。 となると、羽の色の
濃いチョウは、日光を、より多く吸収するので有利に思えます。

一方、モンシロチョウのような白い羽は、不利なように見えます。 しかし、
実際には、モンシロチョウは、曇りの日でも朝早くから活動し、一番乗りで
花の蜜を吸っていることもあります。 なぜなのでしょうか?

この謎を解き明かそうとしているのが、物理学者です。 羽の白いチョウは、
日光を反射してしまうため、羽から太陽のエネルギーを吸収できません。
では、体を温めるために、どうするかというと、この反射力を、逆に利用して
日光を集めているのです。

太陽の方に背を向けて、羽を開いたり閉じたりします。 すると、反射した光を
背中へと集めることができます。 そこは、羽を動かす筋肉がある部分です。
羽による日光の反射を、そこに集める事で熱エネルギーを吸収しているのです。

白い羽が鏡のように日光を反射して体に熱を集めるわけです。 この仕組みを
物理学者が検証します。 チョウの鱗粉には、このような筋があって縞模様に
なっていますが、モンシロチョウの場合、その中に垂直方向に別の筋があり、
小さな仕切りのようになっています。

モンシロチョウの鱗粉を拡大すると、卵形の粒が、容器の中に並んだような
構造になっています。 この構造は、虫眼鏡のように日光を一方向に集める
働きをします。 そこで、チョウは羽を開く角度を調節して、その光が背中に
当たるようにするのです。

羽を開いたり、閉じたりするだけで、体温調節ができるのですから、チョウは
光を操る達人です。 化石燃料に代わるエネルギー源として、注目を集める
太陽光。 人類も、効率よく光を集める方法を開発しています。

物理学者は、モンシロチョウの羽が、光を反射する構造をソーラーパネルに
応用しようとしています。 より大きなエネルギーを、より小さなパネルで生み
出すためです。

モンシロチョウの羽にヒントを得て、大幅に軽量化したソーラーパネルは、
初期のテストで発電効率を、従来の17倍に上げることができました。 特に
注目しているのが、チョウの羽のナノスケールの構造です。

これを応用すれば、あらゆる素材に組み込める、コンパクトで高性能な
ソーラーパネルが作れるでしょう。 光を反射するモンシロチョウの羽と、
光を反射しない、ツマジロスカシマダラの羽。 その特性を組み合わせた
研究が行われています。

光を取り込む正面の開口部にはツマジロスカシマダラの羽、取り囲む側面部
には、モンシロチョウの羽の構造を応用しています。 双方の特性から、
入ってくる光を効率的に取り込むことができます。 軽くて小さなパネルでも、
大きな電力を生み出せます。

全てのチョウや、自然界の生き物は成長と進化の過程で、環境に適応する
ために、体の仕組みを調整してきました。 私たち人間も、また、持続可能で
あるためには、エネルギーや物の消費量変えていかなければなりません。
チョウに学ぶ必要があるということです。

チョウの羽に、こんなにも、いろいろな能力があったとは驚きです。 その上、
彼らが、すごいのは羽だけではありません。 その触角は鼻の役割を果たし、
化学物質を感じ取る、高性能の検出器なのです。

チョウの触角は、感覚器官として機能します。 小さな穴が開いていて、その
穴から臭いを嗅いだり、化学物質の存在を感じ取ることができます。 オスの
カイコガの触角には、極めて小さな感覚器官が無数に存在し、それが非常に
高い周波数で振動しています。

これによって、空気中に漂う無数の分子の中から、メスのカイコガの出す
フェロモンの分子を探し出すことができます。 10キロも先にいるメスを
見つけられるため、カイコガの嗅覚は、生き物の中で最も発達していると
考える研究者もいます。

その能力を応用して、爆発物や有毒ガスの探知方法が研究されています。
物理学者と、そのチームは、市民の全を守るための技術の開発に取り組んで
います。 カイコガの触角にある感覚器の構造を拡大してみると、このように
小さな杖のような形状のものが、びっしりと並んでいます。
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私たちは、こうした自然の造形物からヒントを得て、それをコピーし、医療や
工学などの分野に役立つものを作ろうとしています。 カイコガの感覚器と
同じような状態を人工的に作り出すため、物理学者たちはチタンの上で
化学反応を起こしました。

それによって、無数のナノスケールの突起が形成されました。 化学物質の
分子が、これに付着すると、振動の周波数に変化が起こります。 火薬の
主成分となるTNT、毒ガスといった有害物質の分子には、固有の重さがある
ため、有害物質が突起に付着すると、警報を発するシステムを作るのです。

工学者は、この検知技術を利用する方法を、提唱しています。 検知器を
地上に設置するだけでなく、将来的には、チョウのように空を飛ばせるという
アイデアがあります。 検知器をドローンに搭載するのは非常に有効です。

実現すれば、軍でも民間でも、安全対策が求められる、あらゆる場面で、
毒ガスなどの危険物質を、いち早く探知できるでしょう。 こうした、極めて
有害な物質は、人間が異変を感じ取った時には、もはや手遅れです。

この検知器を搭載したドローンによる監視は、大都市などで毒ガスによる
テロから市民を守るために有効です。 チョウやガの驚くべき進化が現れて
いるのは、羽や触覚だけではありません。 口も、ほかの多くの昆虫とは
異なる独自の進化を遂げました。

チョウやガの口は、口ふんと呼ばれ、くるくると巻いた長いストロー状になって
います。 チョウは、これを器用に伸び縮みさせて、ポンプで水を吸い上げる
ように花の蜜を吸うのです。 独特の口の構造が思わぬ効果をもたらしている
ケースがあります。

このドクチョウは、多くのチョウが数週間しか生きられないのに対し、半年近く
生きることができます。 この長生きなチョウに、2人の研究者が魅了されて
います。 ドクチョウの寿命の長さは、食べ物の変化と関係があると思います。
花粉を食べられるようになったおかげで、長生きになったのです。

多くのチョウが花の蜜を吸って生きている一方で、ドクチョウは、蜜だけでなく
花粉症も食べています。 この花粉が、長寿の秘けつかもしれません。
生物学者は、ドクチョウの栄養吸収の方法に着目し、医療に応用しようと
研究を進めています。口ふんから、液体が出入りする仕組みになっています。

ドクチョウの口ふんは、ストローのようにして、蜜を吸うだけでなく、ほかの
機能もあるのですね。 これを見ると、口ふんの側面にトゲのようなものが
あるのが分かります。 これが、花粉を集めるのに、とても便利なのです。

ドクチョウが花に口ふんを差し込むと、このトゲとトゲの間に花粉が詰まり
ます。 そうしたら、花粉を逃さないよう、唾液を出して、そのまま口ふんに
付着させます。 

ドクチョウは、タンパク質を消化するのに非常に適した酵素を、持っていると
言えるでしょう。 花粉は、20%がタンパク質で出来ていますから、かなりの
量です。 ドクチョウの長生きの秘けつは、高タンパクの花粉にあるのかも
しれません。 研究では、花粉を消化している特殊な酵素にも着目しました。

タンパク質を溶かす酵素で、コクナーゼといいます。 もともとは、カイコガの
研究を通じて発見されました。 カイコガは繭の中で、さなぎから成虫になると
この酵素を使って繭を溶かし、外に出ます。 コクナーゼの働きがないと、
繭から出られずに死んでしまいます。

コクナーゼを抽出して、その分解力を再現できれば血液の塊が血管を塞いで
しまう、血栓症の治療に、つながるかもしれません。 血栓症は、アメリカで
非常に、よく見られる病気です。 そこで、試験管の中でコクナーゼと血栓を
混ぜてみたところ、固まっていた血液が分解されることが分かりました。

絹のタンパク質であるフィブロインと同様に、コクナーゼも、人体との相性が
良いことが分かっています。 そして、ドクチョウが花粉を食べて、長生きして
いるという事実は、チョウの進化と食料となる植物との間に密接な関係がある
ことを示しています。

チョウの多くは、それぞれ特定の種の植物を利用して、卵から、さなぎへと
成長していきます。 花の中には、特定の種のチョウやガにのみ頼って、
受粉を行っているものもいます。

互いの存在が欠かせない、パートナーシップを結んでいた場合、どちらか
一方の種が絶滅することは、もう一方の種の絶滅を意味します。

チョウと植物とは、切っても切れないで運命共同体です。 チョウを保護する
ためには、植物を含む生態系全体を保全しなければなりません。 しかし今、
気候変動が、その両方の未来に暗い影を落としています。

チョウとガは、生態系の中で重要な役割を担っています。 もし、チョウやガの
特定の種やグループが絶滅すれば植物は花粉を媒介してくれる存在を失い、
鳥やトンボは大事な食料を失います。 人間にも幼虫や、さなぎを食料として
いる人たちは、います。 無関係とは言えません。

ただ、昆虫の1種が失われるにとどまらず、影響は連鎖していくでしょう。
多くのものが失われることになります。 私たちが直面しているのは、そういう
問題なのです。

チョウとガは、科学者やエンジニアにとって、発明のためのアイデアの宝庫
です。 羽の色彩・透明性・防水性を生み出す構造から、病気と闘う力まで。
彼らは、小さな生き物が、大きな可能性を秘めていることを教えてくれます。

そして、環境の変化に敏感な彼らは、人間が間違った方向に進まないよう、
今、警告を発しているのかも知れません。



まだ誰も見た事がなかった星の最期、超新星爆発を見る事ができた!
2024年03月11日 (月) | 編集 |
第2296回「なんて言われようと譲れないことは?」
美しく夜空を彩る花火。 一瞬の爆発が生み出す芸術です。 宇宙にも、まるで
花火のような現象があることを、ご存じでしょうか? 超新星爆発。 大きな
質量の恒星が最後に見せる、大爆発です。

これらは星が爆発で飛び散った残骸。 カラフルで美しい天体として、多くの
天文ファンを魅了しています。 実は、超新星爆発には大きな謎があります。
花火のように爆発した後の姿は、いくつも観測されています。

しかし、爆発の瞬間は誰も見たことがありません。 星は、とても遠くにあり、
一つの光は、とてもかすかです。 爆発の前兆は分かりません。 超新星爆発
の瞬間。その姿は天文学者たちが爆発後の観測と理論から導き出したもの。
実際のところは、よく分かっていないのです。

ところが2020年、アメリカ・ハワイの望遠鏡が爆発の一部始終を捉える事に
成功しました。 その様子は、爆発の数百日も前から、ずっと観測されていた
のです。 まだ誰も見たことがなかったので、本当に興奮しました。

捉えたのは爆発の140日以上も前から何度も明るさを変える星。 これまでの
説とは異なる、意外な姿でした。 星が非常に激しく物質を噴き出し、とても
明るくなっているのを、我々は見ました。 初めて見た、超新星爆発までの
詳細な経過。 巨大な星の最期の一瞬に迫ります。
※ 星の最期の事を、もっと知りたいなら ↓



ファイル-1 目撃! 星の最期の瞬間
史上初、星の最期の観測。 それは、新型コロナウイルスが猛威を振るった
2020年のこと。 当時、大学院生だった若者の好奇心から始まりました。
カリフォルニア大学バークレー校の男性です。

男性は大学への出入りは制限され、オンライン授業で1人、パソコンに向かう
日々。 それでも男性は、研究プロジェクトに参加。 夢中だったといいます。

Young Supernova Experiment 通称、YSE。 超新星爆発を探し出し、星の
一生を解明するプロジェクトです。 これは、世界中のチームが参加する国際
共同研究です。 私たちはハワイにある望遠鏡を使用して爆発を起こしてから
まだ数日という、極めて若い超新星を探そうとしていました。

超新星とは、太陽の8倍以上の重い星が爆発を起こし突然、明るくなった星
の事です。 1つ例を、ご紹介しましょう。 こちらのM51銀河の渦巻きに
ご注目ください。 2カ月後に、同じ望遠鏡で撮影すると…。

何もなかった所に、星が現れています。 大爆発を起こした星、超新星です。
超新星爆発が起こる仕組みです。 星の中には高温高圧の状態で、水素や
ヘリウムが存在しています。それが核融合によって、炭素や酸素などを合成。
さらには、重い鉄を生成するようになります。

すると星の中心部は、自らの重さに耐えきれなくなり、一気に収縮。 反動で
大爆発が起こります。 しかし、超新星爆発の瞬間を、人が捉えるには、運も
必要です。

私たちがいる天の川銀河には数千億の星がありますが、爆発を起こすのは
およそ40年に一回ほど。 大爆発を発見するには、広く宇宙を探索する
必要があります。

YSEでは、ハワイのハレアカラ山頂にある広域観測システム、パンスターズを
使いました。 特徴は、観測範囲が広いこと。 夜の間じゅう、連続して撮影を
続け、一晩で空全体の3分の1を観測することができます。

さらに、遠くにある僅かな星の光も捉えられる、高感度カメラを備えています。
広い範囲にある星、一つ一つの明るさを観測。 続ければ、長期間にわたり、
多く星のデータを得ることができます。

パンスターズの運営に20年以上携わってきた、ハワイ大学の教授です。
超新星爆発が見つかるのは、大抵、星が1番明るくなった時です。 実は、
研究者が知りたいのは、その前に何が起きたかということなのです。

パンスターズは、定期的に広範囲の星を、観測・記録しています。 もし、この
範囲内で超新星爆発を観測できれば、過去に遡り、調べることができます。

もしパンスターズの観測範囲で超新星爆発が起きれば、過去のデータを遡り
爆発前の様子を、詳しく知る事ができるというのです。 YSEに所属の男性。
日課は、前日の夜にパンスターズが観測したデータを見て、明るくなった星が
ないか確認することでした。

これは私にとって、仕事じゃないです。 好きなことを、しているだけですから。
もし私が、数百万光年離れた銀河に、超新星を発見したら…。 そう思うと、
とてもワクワクします。 たった一つの星が、どうして銀河と同じくらい明るく
なるのか? とても興味があるからです。

2020年9月16日。 ある報告が、彼らを驚かせました。 その日は、研究
メンバーとのリモート会議がありました。 彼らのまとめ役の准教授です。
会議では、別のプロジェクトによって新たに発見されたという超新星の話題が
出ました。

それは、別の望遠鏡が発見した超新星、2020tlf でした。 新しく発見された
超新星は、うしかい座の上。 地球から1億2000万光年離れた銀河にあり
ました。 この領域で超新星が捉えられ、2020tlf と名付けられました。

観測したのは、パンスターズと同じ敷地にあるアトラス望遠鏡。 そのデータを
別の大学院生が見つけたというのです。 彼はリモート会議で興味深い天体
だと教えてくれました。 会議のテーマとなったチャットです。

パンスターズも、同じ超新星を観測していたといいます。 男性は、すぐに、
パンスターズのデータを調べました。 我々の手元には、アトラス望遠鏡より
前の観測データがあると分かったのです。 すぐに調べるべきだと思いました。

パンスターズの観測画像です。 銀河と同じくらい明るく輝く2020tlf の姿が
捉えられていました。 さらに調べてみるとパンスターズは、1年も前から、
この超新星がある領域を、観測していたことが明らかになりました。

まだ誰も見たことがない、爆発前の星の様子が分かるかもしれない。 本当に
興奮しました。 男性は初めに星の明るさが、どのように変化したのかを調べ
ました。

2020tlf の領域を取り出し、明るさを表示します。 パンスターズが大爆発を
捉えた、9月6日の記録です。 緑や青は明るさを示し、黄色が一番明るい
部分です。 この領域を、過去から順番に見ていきます。
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爆発の221日前、2020tlf は、地球から1億光年以上も遠くにあるため星の
光は、ほとんど観測されていません。 156日前も同様です。 変化が表れた
のは、140日前から。 青い部分が増えました。

しかし、118日前は再び暗くなり、116日前には、また明るくなりました。
星は、その後も明るくなったり暗くなったりを繰り返します。 そして9月6日、
大爆発を起こしました。 爆発前の微妙な明るさの変化。

何を意味しているのでしょうか? 爆発の前段階として、星に何かが起こって
いるのかもしれません。 一方で、観測のノイズに過ぎないという可能性もあり
ます。ですので、ほかのメンバーにも協力してもらい、検証する事にしました。

僅かに明るくなったように見えるのは、新たな発見か? それとも、ただの
ノイズなのか? まとめ役の准教授は、その星の光の波長を細かく検証する
ことにしました。

2020tlf が観測された領域を拡大した画像です。 上下で1組ずつ、4種類の
波長に分けられています。 パンスターズ望遠鏡のカメラには、スライド式の
4枚のフィルター付いています。

1枚ずつ切り替えながら、異なる波長で、星を撮影することができます。
左から順に、緑・赤・近赤外光・赤外光で撮影した画像です。 2つの線の
交差する辺りに、2020tlf があります。

増光前に撮影したデータなので、どの波長も変化はありません。 下は爆発の
170日前から、直前までのデータを重ね、平均をとった画像。 この画像に、
明るくなる前の画像のデータの差を取り出したのが、一番下の画像です。

緑のフィルターでは何も見えていません。 つまり明るさは変化していない事を
示しています。 しかし赤や赤外光では、うっすらと明るく、近赤外光では、より
強くなっています。 どの波長でも、同じ場所が明るくなっている。

つまり、実際に星の光が強くなったことを示しています。 星は実際に明るく
なったり、暗くなったりを繰り返していたのです。 この事実は研究者をはじめ
多くの研究者たちを驚かせました。 星は、何の前触れもなく大爆発して、
最期を迎えると考えられていたからです。

これまでは間もなく爆発する星は非常に静かで、お行儀の良い状態にあると
考えられていました。でも、この数年ほどの研究で、そうではないという意見も
出始めていました。 2020tlfでの発見は、その可能性を改めて強く示すもの
です。

一体なぜ、この星は大爆発の前に明暗を繰り返したのでしょうか? 男性らは
ケック天文台で、2020tlf を観測することにしました。 調べるのは光の成分、
スペクトルです。

スペクトルとは、プリズムを通して光を見るものです。 光を波長ごとに分解し、
そこに、どんな原子があるかを表すものです。 超新星のガスに含まれる
原子は何なのかを知ることができます。

プリズムなどで分解された光は、虹のようになっていますが、ところどころ黒い
線が入っています。 酸素や炭素など、その星に含まれている成分を示して
います。 ケック天文台で観測した爆発後11日目の超新星のスペクトルです。

注目したのはグラフの左側にある細かいピーク。 水素・窒素・ヘリウムなどが
存在していることを示しています。 スペクトルのグラフを、よく見てください。

ピークの幅が狭いことはガスの成分が、あまり速く移動していない事を示して
います。 つまり爆発ではなく、もともと星の周りにあった細かい粒子、星周
物質に由来します。

星周物質とは、年老いた星の膨張に伴い放出された、ガスや塵のことを指し
ます。 年老いた星は、作られた鉄で中心の重力は大きくなりますが、外側は
スカスカとなって重力が小さくなります。

すると外側にあった水素などの軽いガスは、星の重力から逃れ外に広がって
いきます。 これが星周物質です。 ケック望遠鏡の観測によると2020tlf には
爆発前から大量の星周物質が、あったことが分かりました。

男性は、大爆発の前に明るくなったのも、星周物質が関係していると考えて
います。 最初に、この爆発直前の星があります。 星から出たガスが、この
周りに、たまっています。 これが、いわゆる星周物質。 そして表面が爆発し、
噴き出したガスが星周物質と、ぶつかったのです。

男性が考える、星が明るくなった仕組みです。 年老いた星は、膨張に伴い、
ガスを放出。 たくさんの星周物質に覆われていました。 そして表面が爆発し
内部のガスを噴出。 星周物質と、ぶつかり明るくなります。

表面の爆発は至る所で発生。 明るくなったり、暗くなったりを繰り返します。
そして、最後に星そのものが崩壊する、超新星爆発を起こしたというのです。
我々は、星が死へ移り変わる瞬間、つまり星が崩壊し、爆発するまでの一部
始終を目撃したのです。 世界で初めての大発見です。

初めて観測された、超新星爆発の一部始終。 それは、死に向かって表面の
爆発を繰り返す、激しい星の姿でした。
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コズミック・ギャラリー
巨大な星が最後に起こす超新星爆発。 その美しい姿は多くの人々の興味を
引きつけています。約1万年前に爆発した星の残骸、ベール星雲/2100光年。
マナティー星雲/1万8000光年は、動物のマナティーに似ていることから
名づけられた。 クラゲ星雲/5000光年。 (映像はコズミック・フロント4Kで!)

かに星雲/7200光年は、西暦1054年に起きた爆発。 日本でも目撃された。
美しい超新星爆発。 実は、地球や私たちとも深い関わりがあるといいます。
理化学研究所の主任研究員です。

主任研究員たちが観測したのは、カシオペア座の方角にある超新星1572
です。 X線天文衛星すざくを使って、光の成分を、肉眼で見えない範囲まで
分析。 超新星を彩る残骸の元素は、どのようなものがあるのか?突き止め
ました。

ここがクロムです。 これがクロムで、ここがマンガンで、この大きいのは鉄
です。 この2つは、鉄の輝線。

この超新星の残骸は、クロムやマンガン・鉄で出来ている事が分かりました。
もともと宇宙は、水素をはじめ、僅か数種類の元素しか存在していませんで
した。 そんな宇宙を変えたのは星の誕生です。

水素を主成分とするガスが寄り集まって星が出来ると、星の中で次々と新しい
元素が生み出されていきました。 超新星爆発は星の中で生まれたさまざまな
元素を、宇宙に放出する営みともいえます。

我々の世界を作っているような、非常に多種多様な元素というのは、すべて
星から出来た…。 だから、星を研究することというのは、我々のオリジンを
研究する、そのものなのです。

調査によると、地球は、30個もの星の残骸から出来ているといいます。
地球も私たちも、超新星爆発のおかげで、存在しているのです。
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ファイル-2 星周物質の秘密
超新星爆発の前に放出されたチリやガス、星周物質。 星周物質は大爆発の
後にも、影響を与えている事が分かってきました。 キッカケは1987年1月。
南米のチリ・アンデス山脈にある、ラス・カンパナス天文台での発見でした。

当時、住み込みで望遠鏡のメンテナンスを仕事にしていた博士です。 博士は
許可をもらい、誰も使っていない古い望遠鏡で、空き時間に観測を行っていま
した。 ねらいは、地球から16万光年の距離にある南半球ならではの天体、
大マゼラン雲です。 すると博士は、ある異変を見つけます。

大マゼラン雲の片隅、昨日まで何も写っていなかった所に、突然、明るい星が
写っていたのです。 何かの間違いではないのか? 博士は外に出て、空を
見上げたといいます。

とてもハッキリと星が見えました。 間違いなく、新しい星でした。 新発見に
違いありません。 超新星は1987A と名付けられました。 およそ400年ぶりに
現れた、肉眼でも見えるほど明るい超新星として、話題になりました。

それから3年後の1990年。ハッブル宇宙望遠鏡による観測が行われました。
3重のリングが取り巻く、1987A の姿。リングはその後、驚くべき変化を遂げて
いきます。 さらに4年後、内側のリングに明るい1つの点が出現しました。

観測を続けると明るい点は、徐々に増え、2003年には、ついに、つながりま
した。この現象は星周物質が関係していると推測されました。シミュレーション
によると、星には爆発の2万年も前から、星が自ら放出した星周物質が
リング状に存在。

そして、1987年、超新星爆発が起こると、噴き出したガスが、30年かけて
星周物質と衝突し、明るく輝いたというのです。 星周物質が超新星爆発に
どのような影響を与えるのか? カリフォルニア州リバモアにある、国立点火
施設、通称、NIF 。 この施設で再現した研究者がいます。

超新星爆発の残骸は、薄い膜のようであったり、ベールのようであったり、
宇宙でも特に華やかです。 でも、こうした美しい形が、一体、どうやって作り
出されたのかは、よく分かっていません。 私は、その謎を解明したいのです。

超新星爆発の形は、星の残骸と星周物質、密度の異なる2つの物質が
まざり合って、独特な姿になると考えています。 NIF、国立点火施設には、
驚くべき実験設備があります。

レーザービームを使って超新星爆発と同じような爆発を作り出せるというもの
です。 NIFの設備を使えば、いわゆる超新星爆発のミニチュア版を実験的に
作ることができます。

このケースに入っている金属が、ビームの的です。 こちらの端を、ロボット
アームが、つかみます。 後ろに見えている青い場所が、実験スペースです。
中は真空になります。 広さは直径10メートル。 アルミニウムとコンクリートで
出来ています。 この装置の中で、ビームを標的に打ち込みます。

爆発を再現する仕組みです。 途方もないエネルギーを生み出すのは、
高出力のレーザービームです。 ビームの通り道にはエネルギーを増幅する
装置を設置。 最大で、500兆ワットにまで達します。

ビームの標的は、実験材料を入れた、高さ1センチほどの金属の筒です。
博士は筒の中に星周物質を模した密度が低い物質と星そのものに見立てた
密度が高い物質を入れました。

ビームが当たると筒の中は、ほんの一瞬、数億度の超高温に達します。
そして… ミニチュア版の超新星爆発が起こり、どんな反応が起こったかを
コントロールルームで観測します。 ご覧ください。 こちらが実験データです。
星に見立てた物質が、広がっているでしょう?

ビームを当てた瞬間の画像です。 星に見立てた黒い物質は、星周物質と
複雑に入り組みながら広がっています。爆発で飛び散った残骸が星周物質と
作用したためだと、博士は言います。

こうした構造は、レイリー・テイラー不安定性によって形づくられます。 密度の
高い物質と低い物質があって、その両者が、まざり合った時に見られます。

レイリー・テイラー不安定性。 それは、身近なものでも起きています。
コーヒーにミルクを注ぐと… すぐに、まじり合うのではなく、複雑な模様が
出来ます。

密度が低い物質に密度が高い物質がまじる時、その境界は極めて不安定な
状態になり、入り組んだ形になります。 博士の実験結果の画像はコーヒーの
ミルクと同じ、レイリー・テイラー不安定性によるもの。

つまり、超新星爆発の複雑な模様は、大爆発の前に噴出した星周物質による
ものだというのです。 超新星爆発を再現できるレーザービームのおかげで、
実験で再現することができました。 これは、新しい発見のようなものですから
私にとって、本当にうれしい結果です。

星の爆発という1つの現象から、千差万別の模様ができる仕組み。 それは、
星周物質が大きく関わっていたのです。 この後は、史上初の超新星爆発の
観測の続き。 一体、どんな星が爆発を起こしたのか? 宇宙にある望遠鏡も
使って調べました。
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コズミック・ブレイク
超新星爆発の瞬間が観測できると、世界中から注目された星があります。
オリオン座で、ひときわ明るく輝く1等級の星、ベテルギウスです。 赤い光は
年老いた星。 つまり、超新星爆発が近いためと、考えられています。

ほかにも、ベテルギウスが注目される理由があります。 それは地球からの
距離。 これまで、超新星爆発で最も近いのは、かに星雲の7200光年。
ベテルギウスはというと… 僅か、640光年。

爆発すれば、人類史上、最も近い距離で起きる、超新星爆発となります。
ベテルギウスを研究している教授です。 もし、爆発したら、満月ぐらいの
明るさになるでしょう。 空全体が明るくなります。 みんな、その光景を見る
事を望んでいるはずです。 もちろん私もね。

そして、2019年12月。 ベテルギウスに異変が起きました。 急に暗くなった
のです。 ヨーロッパ南天天文台ESOが観測した、明るさの変化です。

2019年、その年は暮れまで、ずっと同じ明るさのまま。 しかし12月に、
かげりが見え始めます。 2020年1月、明らかに暗くなりました。 2月も、
さらに。 3月は、ついに1年前の3分の1の明るさになったのです。

私は冗談で、消えてから爆発するのでは?と言っていました。 確かに、
これまで見たことがない状態でした。

本当に大爆発を起こすのか? ハーバード・スミソニアン天体物理学センター
の教授です。 教授は、ハッブル宇宙望遠鏡を使って、ベテルギウスの光の
量を詳しく観測しました。

奇妙なことが起きていました。 この星の南半球で、何らかの物質が噴出して
いるのが見えたのです。

教授が噴き出していると考えたのは高温のプラズマです。 プラズマの質量は
火星1個分。 その後、冷えてチリのかたまりに変化したといいます。 そして
チリのかたまりは、ちょうど地球とベテルギウスの間に入ります。

ベテルギウスが暗くなったのは、チリによって光が遮られたためと結論づけ
ました。 ベテルギウスの超新星爆発は、誰もが待っていると思います。
でも、私が生きている間には、起こらないと思いますよ。

すぐには爆発しないと結論づけられたベテルギウス。 それでも、みんなの
関心が薄れる事はありません。私は毎日、観測しています。いつも世界中の
どこかで、誰かが観測しているでしょう。

ベテルギウスの超新星爆発は、いつなのか? 昼間でも見えるという輝き。
一体、どんなものなのでしょうね。 (映像はコズミック・フロント4Kで!)
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ファイル-3 星の最期の全貌
カリフォルニア大学バークレー校の男性は、偶然から超新星2020tlf を観測
しました。 ハワイのパンスターズ望遠鏡では、星が爆発する140日も前から
明るさが変化していたことを発見。 そしてケック天文台では、大量の星周
物質があったことを明らかにしました。

さらに男性たちは、どんな大きさの星が爆発したのかを調べることにしました。
それは、夜空の花火から、火薬の玉の大きさを調べるようなもの。 一体、
どうやって分かるのでしょうか? 利用したのは、宇宙にある望遠鏡。

2004年、NASAによって打ち上げられた観測衛星、ニール・ゲーレルス・
スウィフトです。宇宙のかなたから突然発する強烈な光、ガンマ線バーストの
観測が主な目的です。 スウィフト運営の責任者の博士です。

紫外線のスペクトルを測定して、どれだけの光が放出されているかを調べる
事で放射領域の大きさ、つまり光を発している球体の大きさを推測できます。

スウィフトには、可視光よりも波長が短い紫外線やX線を観測できる装置が
搭載されています。これらの波長で観測すると星がどのくらいのエネルギーを
放ったのか? 爆発前の星が、どれくらいの大きさだったのか?などを知る
ことができます。

ここ10年で、我々が力を入れて取り組んできたことは、爆発から間もない
超新星に、素早くスウィフトを向けて観測をすることです。

カリフォルニア大学の准教授たちは超新星爆発を知った2020年9月16日、
すぐにスウィフトへ観測依頼を出しました。 エネルギーのピークは爆発直後。
できるだけ早く観測する必要があります。

これが、准教授から来た最初の依頼です。 2回の観測を行いました。
すぐ翌日、バークレー校の男性からも、ぜひ、追加で観測したいと、新たな
依頼が来ました。

バークレー校の男性たちは、その後も繰り返し数日間にわたってスウィフトで
観測を続けました。 この画像は、爆発が起きた数日から1週間ほど後に、
スウィフトで撮影されたものです。 この明るい光が、超新星2020tlfです。
紫外線で撮影されています。

爆発した星は、1週間経っても明るく輝いていました。 星周物質の量が、
とても多かったことを示しています。 データを分析したところ、太陽の10倍
から12倍の質量を持ち、直径は太陽の1000倍という、大質量の星だった
ことが分かりました。

爆発の1年以上前から捉えられていた、史上初の超新星。 数々の観測に
基づいて明らかとなった星の最期の全貌を、ご覧ください。 燃料を、ほとんど
使い果たし、赤く膨張した赤色超巨星。 質量は太陽10倍から12倍。
直径は、太陽の1000倍あったと推定されます。 

星の周囲には長い時間をかけて星から噴き出したガスが蓄積し、星周物質の
厚い層が出来ます。この状態で1000万年ほどを過ごした星は死の140日前、
表面で何度も小さな爆発を起こします。

至る所から、やむことなく、活発に繰り返される爆発で、明るさは太陽の
100万倍にまで上昇します。 このとき星の内部では鉄が、どんどん中心部で
作られ、重力が大きくなっていました。

そして重力が極限まで高まると崩壊し、大爆発を起こします。 およそ2週間で
明るさはピークに。 太陽の100億倍にも達します。 そのあとは、ほかの星と
同じように、超新星爆発の残骸が、美しく輝くと考えられています。

超新星2020tlf の発見から3年。 ほかの望遠鏡のデータに興味を持ち、
史上初の発見を果たした男性は、研究者の道を選びました。 現在も、新たな
超新星爆発を探し、2例目の観測を行おうとしています。

観測衛星スウィフトを管理している博士が、活躍ぶりを教えてくれました。
ここに、彼の名前がありますね。 今日、新しい超新星について、彼が依頼を
送ってきています。 2023bvh。 あと2年くらいしたら皆さん、また取材に来る
かもね。

ともに研究に取り組んだ准教授も精力的に観測を続けています。 我々は今、
YSEで、観測された全てを見直しています。 これまで、4000個ほど超新星を
観測してきましたが、大質量の星の爆発は一部に過ぎません。

詳しく見ていけるのは、そのうち100個ほどと予想しています。 しかも、その
ほとんどが非常に遠く2020tlfのような明るさの変化は見られないでしょうね。
でも、最終的に何らかの興味深い星が数十個程度は、見つかるのではない
かと思います。 この分野にプラスになる貢献ができたのなら、嬉しい事です。

明らかになってきた、超新星爆発の一部始終。 多くの科学者たちの協力で
達成することができました。

また、同じことを観測できる機会が、増えてくれればと思います。 YSEでも、
どこか、ほかの望遠鏡でもかまいません。 果たして、これは珍しい現象
なのか?よくある事なのか?星の進化や宇宙の全体像に、どう関わるのか?
解明したいと考えています。

次に、超新星爆発が起きたら、どんなことが分かるのでしょうか? 人類は、
こうして数々の謎を少しずつ、解き明かして行くはずです。



最新の天の川銀河の姿から読み解く太陽大移動の奇跡の旅
2024年03月04日 (月) | 編集 |
第2296回「なんて言われようと譲れないことは?」
動き回る小さな点。 何だと思います? 実は、天の川銀河の星々です。
13億以上もの星の位置が、正確に配置されています。 さらに、一つ一つの
星の動きまで反映されています。

時間を早送りすることで、私たちの住む、天の川銀河の未来や過去の姿が
明らかになりました。 観測したのは、2013年に打ち上げられたガイア衛星。
星の位置と速度を正確に測定し、銀河の三次元マップを作りました。

データの分析から、天の川銀河の不思議な挙動が、明らかになってきました。
観測データの間違いかと思いましたよ。 更に、天の川銀河に属する私たちの
太陽にも、衝撃の事実が明らかになりました。

太陽は数十億年かけて、広大な天の川銀河の中を、外側へと旅をしていると
いうのです。 非常に危険な銀河の中心付近から少しでも早く脱出する必要
があった。 46億年の歴史の中で太陽と地球に、さまざまな試練が襲います。

銀河の中心部から、外側へ向かう太陽系が直面したのは、次々と起こる…
超新星爆発。 危機一髪で、すり抜けます。 爆発に巻き込まれなかったのは
本当に幸運でした。

太陽の壮大な旅は、私たち地球生命の進化とも密接につながっていました。
最新の天の川銀河の姿から読み解く、太陽の奇跡の旅に迫ります。
※ 宇宙望遠鏡の事を、もっと知りたいなら ↓



ファイル-1 天の川銀河とガイア衛星
夜空に横たわる天の川。 その正体は、2000億以上もの恒星からなる銀河
です。 半径は5万光年。 太陽は中心から2万6000光年離れた、やや、
外れた場所にあります。

この巨大な天の川銀河の全体像をつかもうと、人類は挑戦を続けてきました。
最初に天の川を銀河として描いたのは、18世紀の天文学者のウィリアム・
ハーシェル(1738-1822)。 全天の星を円盤状にスケッチしました。

それから200年余り、望遠鏡の進化とともに天の川銀河の実態は、少しずつ
明らかになってきました。 銀河を構成する一つ一つの星。 それらは円盤の
上を、それぞれの位置を保ちながら整然と回り続ける。

まるで、止まることのないレコード盤のように。 しかし今、そんなイメージが
崩れつつあります。 そのキッカケは、2013年。 ヨーロッパ宇宙機関ESA
によって打ち上げられた、ガイア衛星です。

2台の高性能の望遠鏡を回転させながら、天の川銀河にある星々の位置を
精密に測定します。 13億以上の星の位置が、三次元空間に正確にプロット
された、天の川銀河です。 最も精度の高い銀河の地図です。

時間を早送りした時の、星の動きも計算されました。 一つ一つの星が、
さまざまな方向に動いている様子が見えます。 この地図をもとに、天の川
銀河の起源や、今後の進化の様子を知ることが、可能になったのです。

ガイアは、年周視差と呼ばれる手法で、星までの距離を測っています。 地球
とともに太陽の周りを公転しながら、一つの星を半年後に別の場所から観測
します。 2つの場所の角度と距離から星までの距離を決めることができます。

更に、何年も観測を繰り返すことで、星が空間上を、どのように動くのかも
知ることができるのです。 打ち上げから10年が経ち、今回、最新版となる
3回目のデータが公開されました。

ガイアのデータは、どのようなものなのか? 参加する研究機関の一つ、
オランダのライデン大学です。 データを取りまとめる責任者の教授です。

ガイア衛星のデータ処理は、約450人の科学者・ITスペシャリストなど、
ヨーロッパを中心に、世界で分散して行われています。 ESAが運営する
ウェブ上から、ガイアの研究アーカイブにアクセスできます。 天文学者だけ
でなく、一般市民も、誰もがアクセスできますよ。

18億もの恒星、一つ一つについて、位置や明るさをはじめ、温度・色・質量・
年齢など、膨大な情報を引き出すことができます。

ガイアより前から研究している人からすれば、ガイアによる変化は、まさに
驚くべきものです。 一方、ガイアより後に研究を始めた人には、データに
アクセスできない天文学の世界は、想像もつかないでしょう。

今日も世界各国の天文学者たちが、ガイアのデータと格闘しています。
データから天の川銀河の円盤に、異変が起きていることに気付いた研究者が
います。 バルセロナ大学の博士です。 博士がデータの中から見つけたのは
不思議な模様でした。

ガイアのデータを調べているとき、星の位置と速度を見てみたら、変な模様が
現れたのです。 浮かび上がった謎の渦巻き模様。 ガイアで近くにある
100万個の星の動きを観測。

円盤に対して上下方向の速度に注目して、グラフ上にプロットした結果、
渦巻きが現れたといいます。 この謎のグラフを、円盤状の星の動きに変換
してみると、大きく波打ちながら回転したり、小さく波打ちながら回転する星の
集団が存在していました。

最初は、しまった、どこでミスしたのだろう。 データに間違いがあったのかな
と思いました。 でも同僚たちと、なぜ、この渦巻きが現れているのか話し
合っていくうちに、突然、これが真実だと気付いたのです。

博士は、この渦巻き模様は、ある特殊な状況を想定した時、現れることを突き
止めました。 銀河の円盤に、かつて何かがぶつかり、その衝撃が円盤の星を
一斉に動かしたと想定したのです。一体、いつ何がぶつかったのでしょうか?

その答えは、シミュレーションから明らかになりました。 まず、衝撃を受けた
星々が、円盤の水平面より低い位置に、固まりで現れたと想定しました。
そこから、時間を進めていきます。

星の固まりは、円盤の回転とともに移動していきます。 グラフの外側を回る
星ほど、重力が弱くなるため、移動が遅れていきます。 時間を進めていくと、
渦巻模様が現れました。

時間が経つにつれ、渦巻きの形は巻かれて行きます。 つまり、渦巻きの巻き
具合から、いつ、衝撃が起きたのか時期を明らかにできるのです。
その出来事は、およそ3億年から9億年前に起きたと分かりました。

その頃、銀河にぶつかったものの正体も見えてきました。 その時、何が起き
たのか明らかにする研究と出会いました。天の川銀河の外側を回る、いて座
矮小銀河の軌道研究です。
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天の川銀河は現在、周囲を、いくつかの小さな銀河に取り囲まれています。
そのうち最も近い位置にあるのが、いて座矮小銀河です。 直径は1万光年、
質量は、天の川銀河の僅か1000分の1ほど。

天の川銀河の周囲を旋回してきた事が分かっています。 いて座矮小銀河が
ちょうど、その時期に、私たちの銀河の近くにあったことが分かりました。
いて座矮小銀河は、天の川銀河を周回し、ちょうど、その時期、円盤に最も
近づいて、星々に大きな衝撃を起こしたと考えられます。時期もピッタリです。

数億年前、いて座矮小銀の接近で発生した衝撃波が、今も星々を波のように
揺らしていたのです。 そして、その振動には、太陽も巻き込まれているはず
だといいます。

太陽が影響を受けている可能性は高いです。 なぜなら太陽は、いて座矮小
銀河との接近と衝撃が起きる、はるか前に誕生しています。 そして、この時の
衝撃の余波が別の場所でも発見されている事から銀河全体に影響を与えた
ことが分かっています。

天の川銀河の星々と太陽は、今も、いて座矮小銀河による影響を受けている
のです。 さらに遡ると、この、いて座矮小銀河は天の川銀河の星の誕生にも
深く関わっていることが見えてきました。

スペインの南部、中世の町グラナダです。ガイアデータをもとに天の川銀河の
歴史を調べている、グラナダ大学の博士です。

最初に、ガイアのデータベースへと飛ぶと、そこには銀河の星を研究するなら
誰もが夢見るような、膨大な量の情報が含まれていました。 博士がガイア
衛星のデータから調べたのは、天の川銀河の星の年齢分布でした。

天の川銀河の歴史という大きな謎を紐解くには、一歩ずつ、答えを探していく
必要があります。 我々が、まず明らかにしたかったのは、いつ、どのくらいの
星が誕生したのかです。

ガイアでは、星の位置や動きのほかに、色と明るさも観測しています。 星は
色と明るさでタイプが分類され、それぞれ寿命が異なります。 青く明るい星は
寿命が短く、赤い星の中でも小さく暗い星が、最も寿命が長くなります。

星の色と明るさから、どの年齢に相当するかを計算できるのです。 博士は、
ガイア衛星が観測した膨大な恒星について年齢を導きグラフを作成しました。
表れたのは、予想外の結果でした。 博士のグラフです。

横軸は、銀河が誕生した130億年前から現在までの時間。 縦軸は、時間
当たりに生まれた星の数、星生成率です。 銀河が誕生した130億年前に
多くの星が生まれ、少しずつ数が減少していきます。

そして、その先に、星が大量に生まれるピーク、いわば、ベビーブームが3回
訪れていたのです。 ピークが3回も現れるとは、全く予想外でした。

すべてを再確認しましたが、やはり結果は同じでした。 これは実際に起きた
出来事です。 60億年前に、突然、星の爆発的な誕生が見られ、そして、また
数が減って行きます。

更に、20億年前と10億年前にも、急激に星が誕生していました。 想定外の
3つのピーク。 この時期、天の川銀河に何があったのでしょうか?

銀河で星が大量に生まれる現象をスターバーストと呼びます。スターバースト
現象が最も激しく起こるのは銀河と別の銀河が接触した時です。 銀河同士の
持つ星間ガスが混ざり合って濃くなることで、星が次々と生まれるのです。

現在も天の川銀河が接触しているのは、いて座矮小銀河です。天の川銀河と
いて座矮小銀河。 これまで、どのように接触してきたのでしょうか?

その痕跡は、天の川銀河の周囲を取り巻く星やガスの帯、ストリームとして、
宇宙空間に残されています。 ストリームから、いて座矮小銀河の軌跡を
描いてみると最初に天の川銀河と接触した60億年前、星が大量に生まれて
います。

星の誕生は、20億年ほどかけて銀河全体に及び、そのころに太陽も生まれ
ました。 その後、ゆっくり天の川銀河を旋回し再び接触したのが20億年前。
さらに、もう一度、接触したのが10億年前。

銀河同士が接触した時期と、星が爆発的に誕生した時期とは、ピッタリと
重なりました。 過去数十億年、いて座矮小銀河は、天の川銀河の進化に
最も影響を与えた陰の主人公といえます。

いて座矮小銀河によって、天の川銀河に大量に発生した恒星。 そして、
46億年前に誕生した私達の太陽も、そんな恒星の中の1つである可能性が
出てきました。

いて座矮小銀河との接触がなければ、そもそも、太陽は誕生する予定が
なかった可能性があります。 もちろん、100%断言はできませんが…。
個人的には、そうであると思っています。

今こうして、ここで話しをしているのも我々の銀河と、いて座矮小銀河の接触
という、60億年前の出来事のおかげなのだと。

いて座矮小銀河との接触によって、天の川銀河は、激しく揺らぎながら多くの
星を誕生させてきました。 私たちの太陽も、そんな星の一つであることが
見えてきました。

最新のデータから、少しずつ解読が進む天の川銀河と太陽の歴史。 さらに、
この先、予想もしなかったストーリーが、浮かび上がってきます。
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ファイル-2 太陽移動説と旅立ち
ガイア衛星が解き明かす、天の川銀河の歴史。 その中で太陽は一体どんな
半生を送ってきたのでしょうか?国立天文台の教授は、銀河や星の化学組成
を専門としています。 教授は、特に太陽に注目して研究を重ねてきました。

ガイア衛星によって、個々の星の年齢というものが、正確に測れるようになり
ました。 その中で太陽というのは、年齢は46億歳ですので、中年層的な
位置付けになるかと思っています。

私は、その化学組成を分析・解読する事を研究の要にしている訳ですけども
その中で太陽というのは無数といえるほどの星の中で極めて標準的で、言い
換えれば、平凡な星だと考えられているわけです。

広大な銀河の中で、中年の平凡な星である太陽。 しかし太陽には、ほかの
星と違う大きな謎があるといいます。

実は、太陽の金属量と年齢、この2つの観点からすると、太陽というのは
特別な星であるということが見えてきます。 太陽の金属量というのは太陽の
年齢を考えると、非常に謎めいているということがいえるわけです。

太陽の金属量の謎とは、どんな謎でしょうか? 星の金属量を調べるためには
光の波長を分析します。 光のスペクトルから、星の内部に含まれる物質と
その量を、測ることができます。

水素とヘリウム以外の物質の量が星に含まれる金属量になります。金属量を
決めるのに重要となるのが、星の生まれた環境です。 星は、死ぬ間際の
超新星爆発で、外部で作られた金属を宇宙空間に放出します。

その放出された金属を含むガスから、新たに若い星が誕生します。 つまり、
宇宙のどの場所でも、後から生まれた若い星ほど内部の金属量が多くなり
ます。

ところが46億歳の年齢を持つ太陽は近くの若い星に劣らないほど金属量が
多いというのです。 なぜ、太陽は金属量が多いのか? 長年、大きな謎と
されてきました。

太陽の金属量に謎があるというものが最初に提案されたのは、1996年の
ヴィーレンさんの論文によるものだと思っています。 つまり、現在の場所では
本来ならば、通常の枠組みの中では太陽の金属量は、若い星よりも、必ず
少なくなるはずなのです。 それが、少なくなってないという…。

それは、どういうことなのか? という視点からヴィーレンさんは太陽移動説を
唱えたわけです。

金属量の謎を解く、太陽移動説。 一体、どんな説でしょうか? これは、
ガイア衛星が捉えた、天の川銀河の金属量を示した図です。 中心部が赤く
なっています。 星の密度が高く次々に超新星爆発が起こるため、金属量が
多くなっているのです。

太陽が、周囲の星より金属量が多いのは、銀河の中心部から移動してきた
ためではないか? これが、太陽移動説です。

ドイツ南部の都市ハイデルベルク。 太陽移動説を唱えた博士は、85歳に
なった今も、研究活動を続けています。 博士は、1996年の論文の中で、
太陽移動説を提唱しました。

今日の天の川銀河では金属量が内側から外側に向かって減少しているのが
知られています。 観測された金属量をもとに、博士が作成したグラフです。
縦軸は、太陽をゼロとした金属量です。 横軸は、銀河中心からの距離。
1キロパーセクは、およそ3260光年。 銀河の半径は15キロパーセクです。

太陽は8キロパーセクの位置にあります。46億年前に誕生した星の金属量の
平均は、青い線で示されます。 現在の値をもとに、本来、太陽があるべき
場所を求めると、より中心部に近い、この位置であるというのです。

その時の太陽の化学組成を調べると、今の太陽の距離から2キロパーセクは
内側にあることが分かります。 博士は、なぜ、太陽移動説を発想したのか?
それは、1970年代の研究に遡るといいます。
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長い間、天文学者は太陽系の惑星が決まった軌道を描くように銀河の星々も
円盤上を滑らかな軌道で均等に動いている、乱れるとしても、ごく僅かだと
いう考えを持っていました。

しかし、天の川銀河の星たちは、誕生した場所の軌道から次第に外れていく
のではないかと、博士は考えました。 1977年、博士は、天の川銀河の星は
拡散するという論文を発表します。

星は、最初のうちは、円軌道を保って回っています。 しかし軌道上で重力を
乱す空間に遭遇することで、もとの円軌道を、ズレていくというのです。

この星の拡散は、太陽だけでなく、すべての星に共通するプロセスです。
そのため、天の川銀河の中で、星が交ざり合ってしまうのです。

星が拡散する中で、太陽は、中心部から現在の位置まで移動をしてきた。
博士によって示された太陽の大移動。 しかし、どの様な旅をしてきたのかは
当時、全く未知数だったといいます。

どうやら太陽は我々の知らないステージを乗り越えてきました。 そして孤独に
銀河系を、さすらってきたのです。

博士が示した、太陽の移動と星の拡散。 国立天文台の教授は、最新の
データをもとに、太陽移動説を証明しようと研究を開始しました。

太陽双子星といわれる星があります。 それは、どういう星かというと見た目
には太陽と、うり二つの星なのです。 見た目には何の違いもありません。
それは、太陽の… 金属量も同じなのです。

つまり、どういうことかというと、2つの星の化学組成が同じであれば、同じ
環境で生まれたことを意味します。 その化学組成が、太陽と全く同じである
星というものを、私は13個、見つけることができました。

太陽と同じ環境で誕生した星を抽出し、より精緻に太陽の生まれた場所を
はじき出したのです。 教授の導き出した太陽の生まれた場所は、銀河中心
から4キロパーセク、およそ1万3000光年離れた場所です。

博士が出した距離よりも、更に内側です。 しかし、あまりにも中心に近いため
問題が浮上しました。

実は、驚いたことでありまして、銀河の中心というのは、星がいっぱいあって
なかなか外に出ることは難しい話しなのです。 実は、我々、ポテンシャルと
呼んでいますけれども、銀河の中心はポテンシャルが、ぐっと深いので、その
ポテンシャルを出て行く… 重力場というのですが、重力場を出て行くと
いうのは、なかなか難しいはずだと、思っていたのですけれども…。

果たして、天の川銀河の中心部の強い重力を抜け出して、太陽が現在の
位置まで来ることはできるのか?教授は国立天文台の研究仲間の准教授に
協力を依頼しました。

准教授の専門は、スーパーコンピューターを駆使した天の川銀河の構造分析
です。 准教授にとって、天の川銀河の中心部は最も関心が高い領域でした。
ガイアの観測データから、銀河の中で星が密集している部分を、光らせた図
です。 太陽周辺の領域では、観測される星が多いため明るく光っています。

同じくらい星が密集し、光っているのが銀河の中心部。そこにバーと呼ばれる
棒状構造が浮かび上がりました。

今回、ガイアのデータが出てきて銀河系の中の中心の所に本当に、ちゃんと
棒状構造があるってものが、マップとして得られてきているというのが、すごく
衝撃的で。  さらに、観測によってバーの回転速度がわかりました。
そのことから、重大な事実が明らかになったのです。

銀河中心部にある、ラグランジュ半径と呼ばれる、巨大バリアの存在です。
バーの回転とともに、星を強い重力で捉えているエリアです。 ラグランジュ
半径は、中心部からの距離、6.5キロパーセクに相当します。
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一方、教授が導いた太陽の誕生場所は、中心部から4キロパーセク。
星は、バーの回転とともに、6.5キロパーセクの位置までは移動できますが
ラグランジュ半径を越えるのは困難だといいます。

太陽系というのは、現在のバーのラグランジュ半径… ポイントよりも内側で
出来たということが考えられる。 そういうのを、どうやって持ってくるのかと
いうのは、すごく難しい。

銀河中心部の強力なラグランジュ半径を、太陽は、どのように抜け出す事が
できたのか?そのために必要だったものが銀河を構成する、もう一つの要素
渦状の腕の形に星が集まった、渦状腕(かじょうわん)です。

天の川銀河を形づくる、何本もの腕。 スパイラルアームとも呼ばれる、この
渦状腕は、これまで常に同じ形のまま動くものと考えられてきました。 しかし
准教授は、最新のシミュレーションとデータから、渦状腕を新しい姿で捉え
直しています。

新たな観測データをもとに、2022年に作成された、天の川銀河のシミュレー
ション映像です。 国立天文台のスーパーコンピューターを駆使して、数千
万個の星の運動を視覚化した、最新の天の川銀河の姿です。

中心部で回転するバーと連動して、渦状腕が複雑に生まれたり、消えたり
しながら、形を変えていくのが分かります。 渦状腕は10億年ほどのスパンで
誕生と消失を繰り返すものであることが分かってきました。

どんどんと、渦巻き構造… 巻き込まれていってしまう。 でも、巻き込まれて
いって、消えていくのだけども、また、そのあと別のスパイラルアームという
ものが出てきて、新たなスパイラルアームが存在して、そいつも、また、巻き
込まれながら消えて行って、消えて行って、また、新しいものが出てくるという
ような、そういうことが起きているのだというふうに思っています。

この、誕生しては消えていく渦状腕がラグランジュ半径の外側へ太陽を連れ
出したと、准教授は考えています。 シミュレーションによると、ラグランジュ
半径の外側、白いエリアに、緑色の星が捉えられています。

赤い渦状腕が形成され、緑色の恒星を引っ張っています。 やがて渦状腕が
恒星を外側に引っ張り、ラグランジュ半径の外へ飛び出して行きます。

渦状腕からのトルクが働いているのです。 トルクというのは、中心向きでは
なくて回転方向に働く力。そういうのが働くとスピードが上がって、より外側に
飛び出して行くということです。

多くの星はバーの重力圏内である中心部に、とどまり続けます。 しかし、その
中で太陽は渦状腕からの力を受けて、銀河の外側へと飛び出したのです。

およそ20億年前、ラグランジュ半径の外側へと、旅立つ道を進んだ太陽。
この旅立ちがなければ、今の私たちの環境は、なかったかもしれません。

実は、生命の誕生と太陽の移動というのは、非常に密接な関係があります。
太陽系が銀河の中心近くで生まれるという事は、非常に重要な意味を持って
おりまして、それは、どういうことかというと、数十億年前に太陽系の金属量を
持っていたのは、銀河中心近くだけです。

一方で、太陽系が生まれるための条件として考えられているのは、十分な
金属量です。 太陽系が生まれるためには、それは銀河中心付近になくては
いけなかったということが一つです。

太陽系が持つ豊かな惑星系。 鉄や岩石等の金属が集まって出来ています。
銀河中心部に、豊かな金属量があったからこそ、地球が誕生し生命が生まれ
ました。一方で、銀河の中心にとどまる事は生命にとって危険を意味しました。

銀河の中心近くでは、星の個数は、非常に密度が高いのです。 たくさんの
重い星がある確率が非常に高くなります。 重い星が、たくさんある、つまり、
超新星爆発が、近傍で起きる可能性が、非常に高いことを意味します。

この超新星爆発というのは、生命の誕生・進化を阻止します。 ですので、
太陽系というのは、非常に危険な銀河の中心付近から少しでも早く脱出する
必要があったわけです。

かろうじて、危険な銀河の中心部を抜け出すことができた太陽。 しかし、
太陽の旅は、この後も、生命に、さらなる試練を与えることになります。
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ファイル-3 太陽 はるかなる旅路
20億年前、渦状腕に引っ張られて、中心部を抜け出した太陽。 銀河の外側
への太陽の旅は、私たちの地球にも激変を引き起こしました。 太陽が銀河を
移動していく中で渦状腕と遭遇するたびに太陽系には大きな影響があったと
教授は考えています。

渦状腕の中には、たくさんの… 質量の重い星が、たくさんあります。 そして
やがてそれは超新星になります。 その結果、渦状腕の中では超新星爆発が
頻発が起こります。超新星爆発が起きると、その超新星爆発の際に宇宙線が
大量に発生します。

渦状腕と遭遇するたびに、大量の宇宙線が太陽系にそそがれ、地球にも
降り注いだというのです。

宇宙線というものは、大気の中に雲の増加を促すことになります。その結果、
地球の寒冷化、ひいては、地球の全球凍結という現象が起きることが期待
されます。

全球凍結。 厳しい寒冷化によって地球全体が氷に覆われ、真っ白な氷惑星
となる現象です。 22億年前と7億年前、6.5億年前の3回、起こったことが
地層から確認されています。 なぜ、全球凍結が起こるのか?

そのメカニズムには、諸説があります。 教授は、この全球凍結が渦状腕と
太陽との遭遇によって引き起こされたと考えています。

全球凍結というものの因果関係というのが、ほとんどが、地球内部に要因を
求めるものです。 それが主流であったわけですけれども、今回は、その地球
内部ではなくて、外部に、その要因を求める。 つまり、これは地球の外の
銀河の中で起きた現象であるということです。

シミュレーションをもとに、太陽の移動と、全球凍結との関係を見てみます。
オレンジの線は、銀河の中心部からの太陽の移動距離です。 行きつ戻りつ
しながら太陽は、銀河円盤の外側へ進んできました。

このルートをもとに、太陽周辺の星間物質の濃さを示したグラフです。 この
数値が高い時は、渦状腕の内部を通っています。 太陽が渦状腕の内部を
まさに通過している時に、全球凍結が起こっていました。

全球凍結イベントは生物の大量絶滅、そして飛躍的な進化と密接に関わって
います。 大気の酸素濃度の変化です。 22億年前の全球凍結後、大気中の
酸素濃度が、急激に増加。 その結果、私たち人類につながる真核生物が
誕生しました。

また、6.5億年前の凍結後、エディアカラ生物群と呼ばれる大型生物が大量
発生しています。 全球凍結は、生命の危機であるとともに、進化を促す
キッカケでもありました。

まさに、渦状腕との遭遇によって、地球は試練を与えられて…しかし、その…
ご褒美ではありませんけど、その結果として、生命の飛躍的な進化を与え
られたと言っても、いいかもしれません。

巨大な銀河の渦の中を、生命を育みながら、旅してきた太陽。 この先どんな
旅をするのでしょうか? そのカギは、やはり、ガイア衛星の観測から見えて
きました。

アメリカのボルチモアにある、宇宙望遠鏡科学研究所。 博士らのグループが
ガイアデータの中で注目したのは、宇宙空間に漂う星間ガスでした。

星間ガスの雲は私たちの周りにある、すべての星の光に影響を及ぼしている
煙のようなものと考えることができます。 ガイア衛星は、ガスが星の光に
与える影響を、精密に測定できるため、星間ガスの3Dマップを実際に作成
することができました。

星間ガスの塊を立体的に視覚化することで見えてきたのが、泡状の構造物、
通称ローカルバブルです。 博士によるバブルのCGです。 大きさは、およそ
1000光年に相当します。

泡の表面に光るのは、生まれたばかりの若い星々です。 そして私たちの
太陽はバブルの中心に位置していることが分かりました。 太陽は、どうやって
バブルの中心に、やって来たのか?
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すべての始まりは、遡ること1400万年前。 現在のバブルの中心で連鎖的な
超新星爆発が起こりました。 爆発の衝撃波によって濃度の高い星間ガスの
泡が、急速に巨大化していきます。

1400万年前から、強力な超新星爆発が相次いで起こったと、私たちは考えて
います。 これらの超新星爆発は衝撃波を引き起こし、この波がガスの表面を
外側に広げました。 そして、密度の高い星間ガスの巨大な泡構造が、形成
されました。

太陽の移動ルートです。 超新星爆発直後、太陽は、離れた場所にいました。
そして今から500万年前に、膨らんできたバブルに入り込み、現在の位置に
たどりつきました。 太陽が爆発時に、もっと近くにいたら、巻き込まれていた
ことになります。

私たちのすぐ近くで爆発しなかったのは、非常に幸運だったということです。
なぜなら、もしバブルの膨張の原動力となった超新星が、太陽の近くで爆発
したら、大量絶滅を引き起こし、生命は地球から姿を消してしまったかも知れ
ないからです。

太陽がバブルに突入したのは、およそ500万年前だといいます。 その時、
何が起こったのでしょうか?

太陽がバブルの表面を横切るとき、高密度の星間ガスを通過することになり
ます。 高密度の雲が太陽圏と呼ばれる宇宙放射線を防ぐエリアに、影響を
与えたはずです。

太陽からは、大量のプラズマ粒子が、太陽風として放出されています。
この粒子の固まりが届く範囲を、太陽圏と呼びます。 太陽系の惑星は、この
太陽圏によって外から来る宇宙放射線から守られています。 しかし高密度の
星間ガスは、この太陽圏を押し返してしまうというのです。

太陽圏が、地球を守れなくなるほど小さくなると、地球は多くの宇宙放射線に
さらされることになります。

およそ500万年前、太陽系は、大量の宇宙放射線にさらされた可能性が高い
というのです。 500万年前といえば、人類の祖先が誕生し、しばらく経った頃
です。

人類の進化の過程に、この時の宇宙放射線が、どんな影響を与えたかに
ついては、まだまだ議論の余地があります。 しかし、間違いなく言えることは
宇宙放射線が地球規模の寒冷化を引き起こし、環境にも影響を及ぼしたこと
です。

バブルに突入した際に、太陽系が浴びた放射線。 地球の環境、そして、
すでに地上にいた私たちの祖先に、どんな影響を与えたのか? 今後の
解明が期待されています。

そして現在、太陽はローカルバブルの中心にいて、旅を続けています。 次に
バブルを抜け出すのは、およそ700~800万年先だといいます。

私たちは今、間違いなく、天の川銀河で最も安全なルートの一つを旅している
といえるでしょう。 2本の渦状腕の間にいて、バブルの中心にもいるわけ
ですから。 銀河の非常に穏やかな環境にいるといえます。

銀河中心部からの移動の果てに私たちの太陽系は、つかの間、バブルに
包まれた安全な場所を旅しています。

バブル突入後の500万年間で人類は進化し、こうして太陽の旅を知ることが
できる文明を築きました。

自然の摂理が… まさに銀河の力学が、それが地球の… 太陽の移動を
可能にし、かつ、その太陽系の中で地球の生命を可能にした。 地球が存在
する。太陽系が存在する。 銀河系という非常に大きな枠組みの中で、この
地球を、ふかんし、検証・考えなくてはいけない。 そういう時代が現在、
到来していると思っています。

46億年前、惑星の材料が豊富な銀河中心部で生まれ、外側へ飛び出した
太陽。 その旅は、一貫して危険と隣り合わせでした。 渦状腕との遭遇。
そのたびに襲いかかる超新星爆発。

旅の道筋が、私たち生命の絶滅と進化に、大きな影響を与えていました。
私たち地球生命は、この先も、太陽の旅とともに生きていきます。



私たち人間 の身近にいる魚は、とってもすごい知能を持っていた?
2024年02月26日 (月) | 編集 |
第2296回「なんて言われようと譲れないことは?」
こちらは金魚のモーリス。 愛らしい金魚は、私たち人間 にとって身近にいる
魚の代表と言ってもいいでしょう。 ところで皆さん、魚は、あまり賢くない
なんて、思っていませんか?

例えば記憶力は、ほんの3秒しか、もたないとか…。 でも、それが間違って
いるとしたら? 深海から干潟、滝や小川に至るまで、地球上、水が存在する
あらゆる所に魚はいます。 しかも、人類が誕生するよりも、はるか昔から。

本当のところ、私たちは魚について、どこまで知っているのでしょうか?
世界中の科学者たちが魚の持つ、さまざまな能力について研究しています。
そこから得られたのは、どれも驚きの発見でした。 魚たちは実は、人間の
想像を、はるかに超える知能を持っていたのです。

(ラジオ) ‘日本の研究グループが、画期的な発見をしました。 金魚は音楽を
判別できるのか? 水中で、2つの曲を流して実験したところ、エサがもらえる
方の曲に、より反応するようになったということです。 金魚は、音楽を区別
する能力が、あると証明されたと言えます’

この実験は、魚が持つ知能の一部を明らかにしました。 音楽を聞き分け
られるということは、魚は仲間どうしで、音を使ったコミュニケーションをして
いるということなのでしょうか?

でも、魚には声を出すための声帯がありません。 では一体、どうやって?
南太平洋に浮かぶフランス領ポリネシア。 サンゴ礁に住む魚が発する音を
長年、研究している人たちがいます。

調査に使っているのは、水中マイクロホン。 特殊な仕組みによって音波を
電気信号に変換します。 聞こえて来たのは、不思議な音。 この特徴的な
音を出しているのは、サンゴ礁に生息するスズメダイの仲間です。

はっきりと聞こえるのは、ハトが鳴く時のような音です。 クークーという、巻き
舌に近い感じですね。 スズメダイは、顎と舌を使って、この音を出している
のです。 特に、下顎と舌がポイントです。

舌を口の奥へ引くと、下顎が、つられて動き、口が閉じます。 それを素早く、
何回も繰り返すことで、クークーという音が出るのです。 この様にして声帯が
無くてもスズメダイどうしは、音を使って意図を伝えることができます。

更に研究者たちはスズメダイとは別の魚の音も捉えています。イットウダイが
浮き袋を震わせて出している音です。 顎を素早く閉じたり、浮き袋を振動
させたりして、自分の出す音を聞いてもらおうとしています。

では、魚たちは、なぜ、そんなに、おしゃべりをしたいのでしょう? 一体、何を
言おうとしているのでしょうか? このサンゴ礁近辺に生息する魚は、およそ
1300種。 研究者たちは20年かけて、そのうちの3分の1が発する音を
収集してきました。 一部は、意味を読み解くことにも成功しています。

先ほどのように、例えばスズメダイの場合、繁殖期になるとオスはメスを引き
寄せるために、求愛の音を発します。 一方、クマノミなどの魚は、侵入者が
縄張りに入ってくると音を出して、おい、ここは俺の縄張りだから出て行けと
警告するわけです。

魚は周囲に捕食者がいるとSOSを発し、広範囲に動く時も自分の位置を知る
ため、音で仲間とコミュニケーションを取ります。 知らせる・誘惑する・警告
する。 魚には音を使って仲間と、さまざまなコミュニケーションを取り合う
知能が備わっていることが分かってきたのです。

それでは、魚は自分がしたことを覚えているのでしょうか? 記憶力も知能の
大切な要素です。 金魚は記憶が3秒しかもたないという俗説は、果たして、
本当なのでしょうか? 記憶力を試すために、ある実験を行いました。

金魚のモーリスに、芸を覚えさせることはできるのか? そして、どれだけ長く
記憶していられるのか? 実験スタートです。 まずは、道具をそろえて…。
水槽の棒を入れ、モーリスが棒の動きに、ついてくるよう学習させることから
始めます。 棒の端には、ご褒美の餌が仕込まれています。

モーリスは棒についていけば、餌がもらえることは、すぐに理解できました。
でも、それを覚えていられるのでしょうか? しかも、いつまで? 金魚は、
こうした行動実験に早くから使われてきました。

昔の科学者たちは、自宅の池で、時間と場所を決めて餌を与えると、いつも
金魚が集まってくるのを見て考えました。 もっと複雑なことができるように、
訓練することは可能だろうかと。

魚は、どれくらいの範囲の空間を記憶できるのでしょうか? 金魚の記憶力を
確かめるため、いくつもの実験装置が作られました。 縞の模様が付けられた
短距離走レーンも、その一つ。

これを使って魚が一度、学習した移動距離を覚えているかどうか実験します。
学習した距離まで泳いで引き返すと、報酬が得られる仕掛けです。 訓練を
重ねると、金魚は決められた場所まで泳いで止まり、そこから引き返して
戻ってくるようになりました。

でも金魚は、どうやって決められた距離を、泳いだと分かるのでしょう?
本能によるもの? それとも、縞模様の数を目安にしているのでしょうか?
次の実験では、一つ一つの縞の幅を半分にしました。
※ サカナの知能の事を、もっと知りたいなら ↓



もし金魚が移動した距離で、自分の位置を把握しているとすれば、2倍の数の
縞を通過するはずです。 逆に、縞の数によって位置を把握しているとすれば
学習した距離の半分までしか行かないでしょう。

結果は、半分までしか行かなかったということですね。 その通り。 つまり、
金魚は縞模様の数で、空間を把握しているのです。 距離にすると、以前の
半分ですが、前と同じ距離を進んだと思って、ここで引き返してきたわけです。

すなわち、魚は見たことを正確に記憶し、それを活用して行動していると
言えます。 記憶力は、どれくらい、もつと? 1度、教えたら学習した距離は
忘れないかも。 しっかり訓練すれば、何カ月も、何年も覚えている可能性は
あります。

やはり、魚は3秒以上、覚えていられないというのは、ありえないですね。
そうでなければ、どうやって食べ物や、巣や、仲間を見つけられるのか?
記憶力が良くなければ捕食者を見分けることもできないでしょう。 科学的には
魚は、優れた記憶力を持つと考えるのが妥当です。

俗説は否定されました。 魚の記憶力は3秒よりも、はるかに長いと言えます。
わずか数日でモーリスは、棒の動きに、ついて回るようになりました。 棒を
置けば、普段なら危険だと判断して通らないような小さな輪っかや、狭い
トンネルの中も、くぐります。

棒から餌が、もらえると分かっていなければ、わざわざ危険を冒しは、しない
でしょう。 つまりモーリスは、成功と報酬を結び付けて考えられる知能を
持っているということです。

では、なぜ、これまで魚は知能が低いと思われてきたのでしょうか?
一見すると魚は哺乳類、特に人間とは全く見た目が異なります。 人間を最も
知能の高い動物と位置付ける考え方からすると、あまりにもかけ離れた魚は
その対極にあるとされてきたからです。

しかし、実は両者には大きな共通点があります。 それは、どちらも脊椎動物
だということです。 フランス国立自然史博物館には魚の進化の歩みをたどり
理解を深めることができる膨大な数の標本が並んでいます。

科学的な意味でのサカナ、すなわち魚類は、巨大なグループです。
3万3000種もの仲間がいて、脊椎動物全体の、およそ60%を占めています。
つまり地球上に生息している最も多種多様な脊椎動物こそ、魚類なのです。

魚類は大きく3つに分類されます。 まずは、硬い骨を持つ金魚などの硬骨
魚類。 そして、サメやエイのように、軟骨で出来た骨格を持つ、軟骨魚類。
もう一つは、ヤツメウナギなどの無顎(むがく)類です。

進化の系統樹で私たちヒトは、脊椎動物の中でも四足歩行する動物の枝に
入ります。 四足歩行の動物と硬骨魚類が分かれたのは、硬骨魚類が軟骨
魚類から枝分かれしたのよりも、ずっと最近のことなのです。

つまり、進化の観点からみると金魚はサメよりも、むしろヒトに近いというわけ
です。 ヒトは陸生動物、魚は水生動物です。 水から上がった陸生動物は、
より進化した存在で、水から上がらなかった水生動物は、原始的なままと考え
られてきました。

しかし4億2000万年にもわたる魚類の進化は、時間をかけて環境に適応し、
生き残るために知能を発達させていったことを示しています。 魚類は、
あらゆる環境に生息できる、実に興味深いグループです。

常に新しい発見があります。 新種が見つかるだけでなく、信じられないほど
見事な適応力も確認されているのです。 原始的どころか、むしろ進化した
動物と言えます。

モーリスの実験は続いています。 今度は、ボールをゴールに押し込めば、
新たなご褒美が、もらえることを覚えさせます。 モーリスには、魚ならではの
秘策があります。 口を上手に使うことです。

海の中にも、口を巧みに利用して暮らす魚がいます。 イラの仲間です。
生物学者は長年、イラの観察を続け、口を使っている様子を初めて映像に
捉えました。

見てください。 このイラは、掘り出した貝を口に、くわえています。 そして、
10メートル以上、泳いで選んでおいた硬いサンゴに近づきます。 その珊瑚を
使い、貝を割って食べるのです。

貝殻の破片が、いくつも落ちています。 つまり定期的に、ここへ来てサンゴで
殻を割り、食事をしているということです。 カラスやサルが木の実を器用に
割るように、ある種の魚は、道具を扱うことができるようです。

しかし陸の動物と違って、その行動を記録するのは、容易ではありません。
水中の場合に問題なのは潜水時間が限られるということです。 潜れるのは
せいぜい1時間半なので、行動を長くは追跡できません。

私は25年間、調査をして初めて、イラが、道具を使うところを目にしました。
本当に驚きの瞬間でしたね。 とにかく、その時は、すごいものを見たと思い
ました。
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魚は環境を利用して、巣を作ったり、隠れたり、はたまた、図形を描いたり
します。 このアマミホシゾラフグは、図形を描いている真っ最中。 こうする
ことで、オスはメスを引き付け、産卵のための巣を提供するのです。

生息地の砂地を巧みに利用した、すばらしい模様が出来上がりました。
さて、モーリスの方は… ゴール! マングローブが茂る水辺にもシュートの
名手がいます。 テッポウウオです。

水面から50センチ以上、離れた所いる獲物に向け、口から水を発射します。
そして、落ちてきた獲物を水中で捕らえるのです。 狙った獲物を正確に攻撃
するテッポウウオは魚の視覚と認知の能力に関する重要なヒントを、もたらし
ます。

水面より上にいる獲物をしとめるテッポウウオは、とても優れた視覚を持って
います。 科学者として、その能力が一体、どれほどのものなのか?確かめ
たいと思いました。

研究チームは、テッポウウオが、人の顔を見分けることができるかどうか?
実験することにしました。 実験は、2段階に分けます。 まずは、第1段階。
テッポウウオに、常に2つの顔の画像を見せます。

そして、どちらか一方の顔に発射した時だけ、餌を、もらえるようにします。
次に新しい顔が、たくさん交ざった中でも、自分が記憶した餌をもらえる顔を
見分けられるか調べます。

実験は成功でした。 テッポウウオは、40以上もの見知らぬ顔の中から、
事前に記憶した、餌を、もらえる顔を認識することができたのです。 そこで、
さらなる実験を行うことにしました。

最初の実験でテッポウウオに見せたのは、全て顔の正面でした。 次に、
より高度な実験として、顔を横向きにして、それでも正確に顔を認識する事が
できるかどうかテストしました。

今度もテッポウウオは、餌をもらえる顔を正確に見分け、水を発射しました。
では、この実験から、どんな結論が導かれるのでしょうか? 顔の識別は、
一見、簡単そうですが、実は違います。

これをコンピューターで行えば、たとえディープラーニングを用いても、まだ
完璧とは言えません。 ですから、この結果には驚いています。 人間の顔の
向きが変わっても、テッポウウオは、覚えていた顔を識別できたからです。

つまりテッポウウオは今、見えている物体が別の角度から、どう見えるのか?
推測できる能力を持っていると言えます。 金魚が、テッポウウオのように、
顔を見分けられるかどうか? 科学的には証明されていません。

でも、モーリスにも、きっと、まだ明かされていない秘密は、あるでしょう。
顔を識別できる魚がいるなら、自分を認識できる魚もいるのでしょうか?
自分が自分である事が分かる自己認識能力は最も高度な知能の1つです。

それを調べるには、鏡を用いた実験、ミラーテストを行います。 動物が鏡に
映った姿を、自分と認識するかどうか? それを確認するため、体の一部に
印を付けます。 もし、その印を取り除こうとすれば、鏡に映っているのは、
自分だと認識していることになります。

ミラーテストをクリアした動物は、チンパンジーやゾウなど、ほんのわずか。
ヒトの場合でも、生後18カ月以降です。 では魚は、どうなのでしょうか?
地中海に浮かぶ、コルシカ島に研究者たちが集まりました。 海の中でミラー
テストを行うのは初めてです。

魚が、よく集まる場所に鏡を複数置き、カメラで数時間、記録します。
予想以上に、多くの魚が集まってきました。 そして、私たちがカメラを置いて
離れたあと、思いもしなかった行動が見られたのです。 目の前に、鏡という
未知のものが置かれたわけです。

魚たちは鏡を見たことがないので戸惑ったり、攻撃的になったりと、さまざまな
反応を示しました。 海の中という、こちらでコントロールしきれない環境にも
かかわらず、実験は、うまくスタートしたと思います。 これを第一歩にして、
今後も研究を重ねていきます。

海での実験は、始まったばかり。 でも研究室では、ある魚を対象に何度も
ミラーテストを行ってきました。 ホンソメワケベラです。 ホンソメワケベラは、
大の掃除好きで、自分だけでなく、他の魚に付いた寄生虫まで取り除こうと
します。

ですから、体に印を付けて行うミラーテストの実験には、最適の魚と言える
でしょう。 ミラーテストでの動物の反応は、いくつかの段階に分かれます。
ホンソメワケベラの場合、初め、鏡に映った姿を敵と見なしたため、口で攻撃
するような動きが見られました。

そして次に、逆さまになって泳ぐという奇妙な行動を取り始めました。 これは
繰り返し逆さまになることで、鏡に映っている相手が、同じような行動を取るか
どうか? 確認しているのです。

こうした段階を経て、いよいよ体に印を取り付けて、それを取り除こうとする
動きを見せるかどうか? 観察することにしました。 驚いたことに、この
小さな魚はミラーテストを、見事にクリアしたのです。

これは、動物の知能を測るものとしては、トップレベルのベストです。
素晴らしい結果だと思います。 ホンソメワケベラが自己を認識している事は
分かりました。 では、他者のことも認識しているのでしょうか?
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そして、相手によって対応や行動を変えることもあるのでしょうか? 太平洋の
サンゴ礁に囲まれた海で、ホンソメワケベラの行動や知能について、さらに
研究を進めているチームがいます。

ホンソメワケベラはサンゴに覆われた大きな岩のそばなどに暮らしています。
そこに、ほかの魚たちも集まります。 自分の体に付いた寄生虫を、ホンソメ
ワケベラに食べてもらうためです。 こうした場所は、クリーニングステーション
と呼ばれています。

ホンソメワケベラにとって、ほかの魚の体に付いた寄生虫は、重要な食料源
です。 ホンソメワケベラが、クリーニングを行う相手には、優先順位があり、
おおまかに3つのグループに分かれています。

順位の一番下に位置するのは、クリーニングステーションの近くに住む常連
さんたちです。 こうした常連さんの寄生虫は、いつでも手軽に食べられるため
忙しいときには後回しにします。

順位の真ん中に位置するのは、クロハギなど、時折やって来る来訪者たち。
こうした魚は待たせると他のステーションへ行ってしまうので餌の確保のため
優先的にクリーニングします。 そして上位の一番上に来るのが捕食者です。

ホンソメワケベラは、捕食者に対しては、最優先でクリーニングを行います。
この辺りの代表的な捕食者といえば、ウツボです。 下手をすれば、ウツボの
餌食になる恐れもあります。 ですから良好な関係を保とうと協力的な態度を
取っているのです。

優れた掃除屋であるホンソメワケベラの食欲は、極めて旺盛です。 空腹に
なると、他の魚に付いた寄生虫だけでは満足できなくなります。 しかし、その
本能のままに従うと、顧客の信用を失いかねません。

ホンソメワケベラは、実は寄生虫よりも、魚の粘液を好んで食べます。
クリーニングするフリをして、相手の粘液を食べてしまう行動を、私たちは、
ズルをするという言い方で表現することもあります。

ホンソメワケベラに粘液を食べられる際、魚には痛みが走ります。 すると、
ホンソメワケベラは、相手が、またクリーニングステーションへ来てくれるよう
慌ててマッサージのサービスを施します。 つまり、この小さな魚は、非常に
戦略的に行動しているのです。

ホンソメワケベラが顧客と、やり取りする回数は1日に2000回にも上ります。
そして、相手に合わせて、行動を変化させているのです。 もし相手が、
来訪者や捕食者であれば、より協力的に振る舞う傾向があります。

あまり粘液を食べることはせず、クリーニングを丁寧に行うのです。 つまり、
よい顧客には、良いサービスを提供するということです。 ホンソメワケベラは
自分の周囲にいる魚を分析し、その時々に応じた行動を取ることができる
のです。 そうすることによって顧客を、より増やそうというわけです。

さらに、より良い条件がそろった時には、自分に有利なズルい行動も取る
ホンソメワケベラ。 その行動は、まるで抜け目のない商売人のようです。

ホンソメワケベラが、常連客の魚をクリーニングすることによって、来訪者を
おびき寄せる様子も確認されています。 そして、ひとたび、来訪者が近づくと
そっちへ行って御馳走にありつくのです。 ここまで戦略的な行動を取る魚は
自然界でも極めて、まれです。

特別な能力を持つ魚を、ほかにも、ご紹介しましょう。 サケは、聴覚・視覚・
嗅覚を生かして、自分のいる位置を認識できます。 さらに、体内に存在する
磁気センサーによって、地球の磁場を感知することもできるのです。

こうした能力のおかげで、サケは、世界各地の海で数年間、過ごしたあと、
繁殖のため、生まれ故郷へ戻ってくることができます。 しかし、養殖場で
飼われると、もう、大海原を旅することはできません。 一生、同じ水槽に閉じ
込められてしまいます。

そうした環境では、サケが苦しむというのが、多くの科学者の意見です。
それは魚にも感情があるということでしょうか? ポルトガルでは、魚が痛みを
どう感じているのか?という研究が進められています。

魚には、不快な刺激を感じると、それに対して嫌悪する反応を示したり、
闘ったりする仕組みが細胞レベルで備わっています。 もし刺激を感じず、
反応することもなければ、簡単に命を落とすことになってしまうからです。

研究者の関心は、さらに先へと進んでいます。 魚が、自分の痛みを感じ、
それに反応するなら、仲間の痛みにも、反応することができるのでしょうか?

その疑問を解き明かすため、群れを作る習性で知られるゼブラフィッシュで、
実験を行います。 準備したのは、テレビのリアリティー・ショーさながらの
設定です。

ゼブラフィッシュの水槽の両側にある画面に、仲間の魚を映します。 一方の
画面には、普通に泳いでいる魚。 もう片方では、通常の行動から急に素早く
動き、水槽の底で動かなくなる魚を見せます。

この動きの変化は、極度の不安を示しています。 人間でも恐怖を感じた時、
体の動きが変わるのと同じです。 不安を示している魚を見せ、その感情が
ゼブラフィッシュに伝染するかどうかをテストします。
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実験を始めるとゼブラフィッシュは、映像で不規則な動きをしている仲間の魚を
真似しました。 画面の中と同じように動揺して泳ぎ回り、やがて動きを止め、
水槽の底に突っ伏します。 まさに、感情が伝染しているかのようです。

水槽には、普通に泳ぐ魚と不安を示している魚、2つの画面があり、どちらを
見るのも自由です。 しかしゼブラフィッシュは、不安を示している魚のほうへ
近づいています。 これは、どういうことでしょうか?

魚に、他者の感情を想像する力があるかも調べました。 つまり、感情認識の
有無についてです。 実験で見られたのは、不安を示す魚を見たゼブラ
フィッシュが、その魚のほうへ近づき、しかも、そばにとどまる姿でした。

これは、人間でいうところの共感という感情に、つながる、ごく初期の段階と
見ることもできるでしょう。 では、魚は不安や恐怖だけでなく、喜びの感情を
抱くこともできるのでしょうか?

研究者たちが注目しているのは、魚の愛着心です。 実験を行ったのは、
一夫一婦のペアで繁殖する魚の中でも、ひときわ固い絆を見せるシクリッドの
仲間です。

シクリッドを研究対象にしたのは、オスとメスの間に、まるで鳥類に見られる
ような固い絆があるからです。 繁殖のためにパートナーを厳選し、巣作りも
丁寧で、子育ても熱心に行います。

シクリッドはカップルになると、ほとんどの場合、一緒に縄張りを守り子育てを
行います。 2匹が協力すればするほど、繁殖の成功度は高まります。
ということは逆に、2匹が離れ離れになれば、何らかの影響があるはずです。
その時の感情の変化を、どう測定すれば、よいのでしょうか?

チームは、3つの異なる状況を作り、シクリッドのメスが各状況に、どう反応
するかを調べることにしました。 状況1、ポジティブ。 水槽に黒い蓋の箱を
入れます。 蓋を開けると中には小さな虫がいて、食べられるようになって
います。 こうして、黒い蓋の箱は、ご褒美の箱と認識されます。

状況2、ネガティブ。 今度は、白い蓋の付いた箱を入れます。 しかし、蓋を
開けても、中には何も入っていません。 すると、シクリッドは、黒い蓋と白い
蓋では、箱の中身が違うことを認識するようになります。

そして状況3、曖昧。 ここがポイントです。 黒でも白でもなく、灰色の蓋の
箱を置いて、メスの行動の変化を調べます。 シクリッドは、考えるでしょう。
蓋は灰色だから、黒に近い。 黒の箱には、ご褒美があるから開けてみよう。

あるいは、灰色の蓋は、白に近い。 白の箱には、何も入っていないから、
近寄るのは、よそう。 つまり、この状況を楽観的に捉えるのか? 悲観的に
捉えるのか?その違いによって魚の感情の変化を測る事ができるはずです。

灰色の蓋を、すぐに開けに行く楽観的な性格のメスで、実験を行います。
こうしたメスが、オスから隔離された後も楽観的で、いられるのかを観察しま
した。 複数の楽観的なメスを、オスから長時間、隔離したあと、再び、3つの
箱を目の前に置きました。

それぞれに反応するまでの時間を計測すると、ある変化が見られました。
どのメスも、灰色の蓋を開けるまでの時間が、オスから離される前よりも、
大幅に長くなったのです。

つまり、シクリッドのメスは、オスといる時よりも、悲観的になったと言えます。
パートナーの不在が、決断に影響を及ぼしたようです。 これが意味するのは
パートナーがいないと、行動が消極的になる、なのか?いると、積極的になる
なのか? どちらでしょうか?

楽観的な状態とは、物事の明るい面を捉えている状態です。 その正反対に
当たるのが、パートナーが、いなくなって気分が後ろ向きになり、物事の暗い
面だけを見てしまうような、悲観的な状態です。

実験結果が示すのは、パートナーに対して、愛着心があるということです。
シクリッドにとっては、オスとメスが一緒に子育てすることが、極めて重要
だからです。

進化的に見れば、この愛着心は、パートナーどうしが、離れ離れにならない
ための仕掛けでしょう。 パートナーが、いなくなると消極的になる。 だから、
パートナーとは離れなくなります。 そうすると、子供を一緒に育てることが
可能になり、繁殖の成功度も高くなるのです。

魚の感情の変化に関する実験は大きな反響を呼びました。 私たちは感情や
愛着心が、魚にも存在することを証明できたと思います。 魚には、優れた
認知能力があり、さまざまな感情を持つことが分かったのです。

これまでのような、魚は冷淡で、鈍感な動物だという考え方は、過去のものに
なったと言えるでしょう。 もしかしたら、金魚のモーリスたちも、繊細な心の
持主なのかもしれません。 研究で明らかになった、魚の驚きの能力の数々。

しかし、これは序章にすぎません。 魚にまつわる、全ての謎を解明するには
長い道のりが残されています。 地球の海の90%は、前人未踏の領域です。
この神秘的な世界には、発見すべきことが、まだ、たくさんあります。

今こそ、水の中に生きるものたち、全てに目を向けるときです。 あらゆる
先入観を、脱ぎ捨てて…。



次々と新たな宇宙の姿を映し出すジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡の成果
2024年02月19日 (月) | 編集 |
第2296回「なんて言われようと譲れないことは?」
息をのむような美しい色彩を放つ星雲。 これまで見た事もないような銀河の
渦巻き模様も、捉えられています。 いろんな、僕たちが知らないようなことも
次々と見つかって来て非常に…天文学の革命が今、起きているような状況に
なっています。

多くのことを学んでいます。 今、天文学者でいられることはエキサイティング
です。 撮影したのは、大気のない宇宙空間に打ち上げられた、ジェイムズ
ウェッブ宇宙望遠鏡です。 観測を始めてから、1年が経過。

その活躍は、とどまるところを知りません。 宇宙誕生間もないころの最も遠い
銀河の記録も更新。 さらに、これまで考えられてきた宇宙論に、修正を迫る
新事実も見つかりました。

とても興奮して、これを、ユニバースブレイカーと呼びました。 これを説明する
には、今までのいくつかの考えを修正する必要があるのです。

今、次々と新たな宇宙の姿を映し出す、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡。
その1年目の成果に迫ります。
※ ジェイムズウェッブの事を、もっと知りたいなら ↓



ファイル-1 宇宙の始まりに挑む!
アメリカ東部の街、ボルチモア。 ここが、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡の
拠点です。 コントロールルームでは、24時間体制で、望遠鏡との交信が
行われています。  “今、オーストラリアと接続しました。 キャンベラにある
直径34メートルの巨大なアンテナが、ジェイムズウェッブを追跡中です”

ジェイムズウェッブは、地球から150万キロ離れた第2ラグランジュポイントで
観測を行っています。 太陽と地球の引力と遠心力が釣り合うため、最小限の
燃料消費で軌道を維持できます。

地球の自転に合わせて、アメリカ・オーストラリア・スペインのアンテナを切り
替えることで、いつでも望遠鏡からデータを受け取ることができます。 その
データは、画像処理の担当者に送られます。

波長ごとの画像から、カラー画像を作成します。 完成した画像の多くが、
すぐに世界中に公開されます。 研究者だけでなく、誰でも見ることができる
のです。 観測は、1年ごとの提案制。

初年度には、世界中の研究者から、1200件の提案が寄せられました。
研究者にとって、ジェイムズウェッブは、今、最も熱い望遠鏡なのです。

私たちは、自分のためだけではなく、人類のためにジェイムズウェッブを運用
しています。 アイデア次第で、この望遠鏡を利用して、誰でも新しい研究が
できます。 私たちは常に、提案を募集しています。 そのため良いアイデアを
持つ人が多ければ多いほど科学は、より進歩するはずです。

ジェイムズウェッブによって、大きく解明が進むと考えられる謎が、2つあり
ます。 1つは、宇宙に最初に誕生した星、ファーストスターから迫る、宇宙
初期の謎。 もう1つは、系外惑星を詳しく探査して迫る、生命誕生の謎です。

すでに、系外惑星の大気中から、二酸化炭素の存在が確認されています。
生命活動のカギを握る更なる物質の発見に大きな期待が寄せられています。
一方、宇宙初期の銀河の発見も相次いでいます。

今回は、宇宙の始まり、その最前線を見ていきます。 宇宙は、138億年前に
始まったと考えられています。 ビッグバンのあと、星も銀河もない暗黒時代が
訪れます。

漂っていた水素やヘリウムが集まり、第1世代の星、ファーストスターが
生まれます。 星は、銀河の中で生と死を繰り返し、ほとんどの銀河は、
第2世代以降の星で占められるようになりました。

私たちが住む、天の川銀河の星も、そして太陽も、世代交代をした星です。
私たちは、まだ、ファーストスターを目にした事がないのです。 宇宙の歴史の
中で、大きな謎に包まれている暗黒時代。

その時代を理解するカギとなるのが、最初にできた星、ファーストスターです。
ファーストスターを観測できれば、星が、どのように生まれ、今の宇宙につな
がっているのかを、理解することができるのです。

これは、私たちの歴史、宇宙の歴史、すべての起源に当てはまります。
我々は、どこから来たのか? ビッグバンから銀河の中の惑星にいる私たち
まで、どのように進化してきたかという広大な1つの歴史になっていくのです。

宇宙の始まりを見ることは、宇宙の最も遠くを見ることを意味します。 過去の
ある瞬間に放たれた光は、秒速30万キロの猛スピードで進みますが、その
間も時間は進みます。

離れた所にいる観測者が目にするのは、現在ではなく、過去の姿です。
その為、遠くを見ることができれば初期の宇宙を探求する事ができるのです。

宇宙のかなたの光を捉えるために、100億ドルをかけて開発されたジェイムズ
ウェッブ。 従来の望遠鏡と比べて観測装置にも、さまざまな工夫が凝らされて
います。ハッブル宇宙望遠鏡は主に目に見える光、可視光を捉えていました。
一方、ジェイムズウェッブは、主に赤外線を捉えて観測します。

宇宙は膨張しています。 光が進むにつれて、光自体が引きのばされます。
それを赤方偏移(せきほうへんい)と呼んでいます。 なぜなら波長の長い光は
赤くなるからです。 ジェイムズウェッブが、赤外線望遠鏡であるゆえんです。

遠い天体から放たれた光は宇宙空間の膨張によって波長が引きのばされる
という性質を持っています。 可視光で放たれた光は、100億光年以上かけて
地球に届くころには、波長が引きのばされて赤外線に変わります。

つまり遠くの天体を観測するためには赤外線を捉える事が不可欠なのです。
これまでに観測できた最遠方の銀河は、ハッブルが見つけた、GN-z11銀河
でした。 およそ134億年前、つまり宇宙の始まりから4億年後の光を捉えた
画像です。 ハッブルでは、この解像度が限界でした。

ジェイムズウェッブが目指すのは、このさらに先、誕生まもないころの宇宙
なのです。 最遠方銀河を狙っている研究チームの一人が、カリフォルニア
大学にいます。 最遠方の銀河を見つけるために、目を付けたエリア。
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それが… ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド。 かつて、ハッブル宇宙
望遠鏡が観測した領域で、視野に明るい星が少なく、遠くの銀河が見やすい
エリアです。 教授は、この中から遠くにあると思われる4つの銀河を候補に
挙げ、その距離を特定することにしました。

銀河のスペクトルの中に、ライマンブレイクと呼ばれるサインが見えますね。
これは、その場所の紫外線を吸収した、非常に特徴的なサインです。 この
ライマンブレイクが発生する場所で、銀河の距離が正確に分かるのです。

銀河の距離を特定するときに使う、ライマンブレイクとは、どのようなもので
しょうか? 銀河から光が放たれます。 この時、波長の短い紫外線の光は、
宇宙空間にある中性水素ガスによって吸収されます。 これがライマンブレイク
という現象です。

ライマンブレイクが起きる紫外線の位置は遠い銀河ほど、より赤く観測される
ため、ライマンブレイクの観測波長から、銀河の距離が特定できるのです。
こちらが、赤外線で取得した、4つの銀河のデータです。

横軸が波長で、縦軸が明るさを示しています。 この明るさが急激に変化して
いる所が、ライマンブレイクです。 ライマンブレイクの観測波長の比較です。
上の銀河ほど、より赤い、つまり、より遠い銀河であることを示しています。

一番上の銀河は135億年前、宇宙誕生から、3億年後の銀河であることが
判明しました。 こちらが、その最遠方の銀河。 ハッブルが捉えていた
GN-z11銀河から、1 億年遡ることができました。(JADES-GS z13-0)

ジェイムズウェッブは、本格稼働から、たった1年で最遠方銀河の記録を更新
したのです。 現在、知られている中で、最も遠方の銀河を見つけました。
ビッグバンから僅か3億2000万年後に生まれた、初期の銀河を発見できて
とても興奮しています。

さらに、その記録を塗り替えようとする研究者が日本にました。 東京大学の
宇宙線研究所の助教で、遠方銀河を観測する専門家です。助教はジェイムズ
ウェッブが世界中に公開した画像から、最遠方の銀河を探し出そうとしました。
注目したのは、ステファンの5つ子と呼ばれる、銀河が集まった画像です。

それが、この天体になっていまして、これが、僕たちが見つけた中で、一番、
昔の銀河の候補、136億年前の銀河の候補になっています。

教授たちが見つけた銀河は、135億年前の銀河でした。 今回、発見した
銀河は、さらに1億年遡る可能性があるのです。 助教は、まず、ステファンの
5つ子のデータを、解析ソフトに読み込ませました。

そして天体の明るさや位置を数値化。 その結果、およそ100個の遠方銀河の
候補が見つかりました。 しかし、ここからの作業が大変だったといいます。

こちらは、銀河の候補だと言っているものになっているのですけども、これ、
実際に画像を見てみますと、銀河の形とは全然、ほど遠いものになってます。
これ、なぜかといいますと、宇宙から降り注いでいる宇宙線によって、この
検出器が反応してしまって、その結果、現れたものになっています。

こういうもの… 機械だと、これ、昔の銀河… 銀河かもしれないということ
判断してしまうのですけれども、実際に、これ、僕たちの目で見ると、いや、
これ、全然違うよということになりますので、こういう天体を、どんどん除いて
行かないといけません。

一つ一つ自分の目で見て、機械が誤認識したデータを省いていきます。
作業を進めること2週間、ある銀河に、たどりつきました。 それはステファン
の5つ子の左下の、この辺りにありました。 136億年前の銀河の候補です。

さらに、観測を進めて距離が特定できれば、最遠方銀河の記録を更新する
ことができます。 このジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡も本当に、一言でいい
ますと、すごいです。 感動するぐらい、すごいです。

僕たち遠方銀河、昔の銀河を研究している研究者が、この10年、20年ぐらい
ずっと、ずっと、見たい、見たいと思っていたものを、どんどん、どんどん見せて
くれる。 もっと、もっと昔の137億年前の銀河の候補とかも、どんどん探して
いく。 どんどん、ステップ・バイ・ステップで、どんどん昔の宇宙に遡っていき
たいと思っています。

遠方銀河の発見を支えている装置が、近赤外線カメラ、ニアカムです。
その仕組みは、まずジェイムズウェッブの大きな鏡が集めた天体の光を反射
させて、装置に取り込みます。

それから赤外線を波長の長さによって二手に分けます。短い波長の赤外線は
右上の方向へ、長い波長の赤外線は、まっすぐ進みます。その後フィルターを
通過して、観測に必要な波長域が選別されます。

最後に、それぞれの光が2つの検出器に入り、赤外線の波長ごとのデータが
取れるのです。 この2つの検出器を用意したのが、従来のカメラと大きく
異なる点です。
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長い波長を分けて捉えることで、より遠い星からの微弱な赤外線を正確に
測れるようになりました。 そのニアカムの観測から、予期していなかった
事実も見つかりました。

ペンシルベニア州立大学の助教は、オーストラリアやヨーロッパの研究者と
遠方の宇宙を調べています。 これは、ジェイムズウェッブが撮影して最初に
公開された画像です。初めは信じられませんでした。私たちは、この望遠鏡を
何十年も待っていたのです。

助教が気になったのは、131億年から133億年前とみられる、6つの銀河の
大きさでした。 宇宙初期に、これほど大きな銀河が存在したことは、想定外
でした。 この時期なら、小さい銀河を見つけると思っていました。

2歳の子供がいると思ったら大人がいたのです。 従来の銀河の進化モデル
では、説明がつかない大きな銀河の存在。 助教たちはジェイムズウェッブの
データから、AIを使って銀河のモデルを作成。

これまで、実際に観測された銀河と、照らし合わせていきました。 私たちの
太陽系が属する天の川銀河。 従来のシナリオでは、130億年ほどかけて
合体を繰り返し、現在のサイズになったと考えられています。

しかし宇宙初期に、現在の天の川銀河と同じ大きさまで成長していた銀河が
存在していたのです。 従来のシナリオの見直しを迫る発見でした。

とても興奮しました。これをユニバースブレイカーと呼びました。説明するには
これまでのいくつかの考えを修正する必要があるのです。

助教たちは今回の観測結果を、銀河の成り立ちのスピードを変えてしまう
ユニバースブレイカーと名付けました。 ジェイムズウェッブは、本格稼働から
1年で、早くも宇宙論に修正を迫る事実を見つけた可能性があるのです。

では、なぜ、このような早い時代に、大きな銀河が生まれたのでしょうか?
その謎に挑んでいるのが東京大学の教授です。 星や銀河が生まれる様子を
シミュレーションで解き明かそうとしています。

これ、すべてシミュレーションから作ったものです。 最初に、これ、お見せして
いるのが、宇宙の、ある広い領域の中の物質分布。 実際には物質の多くは
ダークマターですので、ダークマターの分布を表しているのですけども、
何となくイメージとしては、この中に薄いガス、水素のガスが広がっていると
思って下さい。

こちらは、教授が再現した、暗黒時代に星が生まれる様子です。 ゆらゆらと
漂っているのが、水素やヘリウムなどのガスです。 この揺らぎが大きくなると
ガスの密度が上がります。

そして、ダークマターの重力によって、そのガスが引き寄せられ集まる事で、
星や銀河が生まれます。 今回、ジェイムズウェッブが発見したような、大きな
銀河が形成されるまでには、少なくとも10億年はかかると、教授は言います。
これが、標準宇宙モデルといわれるものです。

そこから予想できる、これぐらいの時代には、これぐらいの銀河があったの
だろうという、そういう予測をすることができるわけですけども、それを大きく
超えて見つかってますので。

今回のジェイムズウェッブの観測で見ると、その始まりのころで少し、あるいは
もしかしたら大きく違う様子になっていく、ということが考えられています。

教授は、ジェイムズウェッブの観測データをもとに、シミュレーションの前提
条件を変えて計算することにしました。 発見した銀河の大きさから逆算して
宇宙初期の密度の揺らぎの大きさを5倍に修正しました。

従来の宇宙モデルと、前提条件を修正したモデル。 138億年前のビッグバン
から、時間を進めていきます。 宇宙誕生1億年後、もう違いがあることが
分かります。

修正したモデルでは、ガスが早く集まっています。 6個の大きな銀河が見つ
かった、131億年前の宇宙です。 この光り輝く点が、銀河が生まれた所を
示しています。 ジェイムズウェッブの観測結果に近い、シミュレーションの
結果を再現できました。

本当に変えるのは、宇宙が生まれた時、それよりもっと前、本当に宇宙が
生まれた時の物質の分布の具合なのです。 どれくらいの揺らぎ方をして
いたか? そこを実は、ほんの少し変えるだけなのです。

逆にいいますと、ジェイムズウェッブの観測で宇宙の始まりの頃の物質分布が
どれぐらいになっていたのか?というのは、実は結構、詳しく分かるかもしれ
ないという、期待まで持てるようになりました。

シミュレーションによって宇宙初期に物質が、どのように分布していたのか?
条件を絞り込んでいくことが可能です。 更に観測が進めば、宇宙の始まりの
様子を正確に再現できる可能性があります。 宇宙の歴史の解明に一歩ずつ
近づいているのです。
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コズミック・ヒストリー
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡の活躍を支える、近赤外線カメラ、ニアカム。
その開発の裏側には、知られざるエピソードがありました。 装置の責任者は
2001年から、チームを率いています。 ニアカムの最大の敵は熱でした。

重要なのは、低温で赤外線を観測できることです。 低温であればあるほど、
いいのです。そのため、太陽光を遮る大きなシールドを搭載。更にニアカムを
冷却装置で冷やしマイナス233度に保ちながら観測できる様に設計しました。

しかし、宇宙空間は極寒でも、地上で開発する時は室温で組み立てるしか
ありません。 その温度変化だと、すべてが少しずつ変化します。 縮み、
レンズの形が変わり、性質も変わるのです。

ですから、冷えた時にどうなるかを全て計算し、そのデータをもとに地上で
組み立てたのです。 開発は困難の連続でした。 パーツごとに耐えられる
温度が違うため、素材を変えて調整を繰り返しました。 開発を初めて10年。
ようやく、ニアカムの基本設計が完成。 ここから、地上試験が始まります。

しかし、予期せぬ事態が開発チームを襲ったのです。 この時、地上試験を
担当していた、アリゾナ大学の教授です。

ちょうど、本当に試験の時で、それで僕と装置の責任者が、ハリケーンが、
ヒューストンに到着する日に、飛行機でヒューストンに入ることになっていて。

そうしたら、もう、ハリケーンが、その日の夜にバーッと来て、それでもう、
ヒューストンの町じゅうが水浸しになって、高速とかも全部、止まってしまう
ような。 ちっちゃな空港が、そばにあるのです。 完全に、水の中に浸って
しまうような状況で…。

2017年8月。ハリケーン・ハービーが、テキサス州を襲いました。地上試験を
行っていたヒューストン周辺にも、甚大な被害をもたらしました。 それでも、
ニアカムのテストは続行されたのです。

空いた部屋にエアマットレスを敷いて、そこで仮眠を… 2人ぐらいのチームで
1人が仮眠をとって、1人がやって、もう1人が起きてきたら、もう1人が入る
みたいな、そんな感じで、やってたのが結構、大変だったですね。

雨漏りもしてきて、コンピューターの上に、ビニールシートを引いてカバー
しなきゃいけないとか。みんな、もう本当にハリケーンが来て怖いというよりも
とにかく、この試験を、じゃあ今、これ、どうやって、ちゃんと計画通りやるか
そっちの方に神経が、みんな、いってたので、あんまり試験を止めるとか、
自分の日々の生活はどうなるのだろうとか、あんまり、そこは考えてなかった
ですね。 さまざまな困難を乗り越えていった、ニアカム・チーム。

2020年、開発を始めて20年をかけて、ついにニアカムが完成したのです。
望遠鏡というのは本当に、もう、打ち上げが失敗して爆発しても、それで
おしまいだから、そういう意味での葛藤って、あるのですよね。

そういう…そういう中を抜けていく為の資質っていうのは、やっぱり楽観的で
いられるかということに、かかってくるような気がするのですよね。 どれだけ
準備しても、駄目な時は駄目だし、それを、あまり深く考えずに日々、楽しみ
ながらコツコツ続けていくという。

この20年の間には、無理かと思うこともありました。 今は望遠鏡も、うまく
機能し、データを手に入れて、本当に楽しい時間です。

では、ここからは、ジェイムズウェッブの観測開始から1年の間に届けられた
宇宙絶景の数々を、ご覧いただきましょう。(映像はコズミックフロント4Kで!)

こちらは地球から、およそ1万5000光年先の宇宙。 美しく輝くガスの雲を
まとった星、WR124です。 太陽の30倍もの質量がある星で、超新星爆発が
近づいています。 命が尽きる前の最後の輝きです。

続いては地球から、およそ1万1000光年の距離。 星が、超新星爆発をした
後の姿、カシオペヤ座A。 猛スピードで、宇宙空間に広がるガスや塵が、
詳細に見てとれます。

こちらは、おとめ座の方向にある銀河、NGC5068。 まるで、スプレーを吹き
かけたような、膨大な数の恒星が映し出されました。 内部にある星に照ら
されて、ガスの雲が赤く輝いています。

こちらは、天王星です。 周囲のリングが、これまでにない鮮明さで捉えられ
ました。 さらに、白く輝く部分が雲です。 初めてクッキリと映し出されました。
最後は、地球から20万光年ほどの小マゼラン雲にある星団です。NGC346。

ジェイムズウェッブと、ほかの宇宙望遠鏡など、6つのデータを組み合わせま
した。 さまざまな波長の光が織り成す、色鮮やかな宇宙のハーモニーです。
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ファイル-2 ファーストスターをねらえ!
ジェイムズウェッブの大きな目的の一つは、宇宙の始まりの謎を解き明かす
こと。 そのためには、ファーストスターを見つけることがカギを握っています。
東京大学の教授は、このファーストスターについても長年、研究してきました。

こちらが、教授のシミュレーションから解き明かしたファーストスター誕生の
物語です。 宇宙の暗黒時代、このころに漂うのは水素とヘリウムでした。
密度の高い所は、重力により周囲のガスが引き寄せられ、ガスのかたまりが
出来ていきます。中心の密度が高くなるにつれて温度もどんどん上昇します。

そして、1億度に達した時、核融合が始まり、上下のガスを吹き飛ばします。
ビッグバンから、およそ2億年が経過したころ、ファーストスターの誕生です。
明るさは太陽の100万倍。 ファーストスターは、青白く輝く巨大な星だった
のです。

ファーストスターは、定義上、宇宙の始まりのころにあった物質だけで出来て
ますので、それは、すなわち水素とヘリウムだけで出来ているはずなのです。
ですので分光観測というのを、もしすることができて、その星の表面の組成、
どういうもので出来ているのかというのを、詳しく知ることができれば、例えば
水素とヘリウムしかないと、ということが分かると、これはファーストスターで
あるということが言えます。

分光観測とは、望遠鏡による観測手法の一つです。 太陽光を観測してみま
しょう。 望遠鏡の先端に巨大なプリズムを置くと、点に見えていた1つ1つの
星の光が、細い帯状の虹になります。太陽の光をプリズムに通したものです。
よく見ると、虹の中に何本も黒い線があります。

これは太陽の中にある元素が、特定の色の光を吸収した痕跡です。 こうした
黒い線は、吸収線と呼ばれます。 吸収線が現れる位置は、元素の種類に
よって決まっています。 吸収線の位置を調べれば、その星が、どんな元素を
含んでいるかが分かります。

実はジェイムズウェッブにもこの分光観測ができる装置が搭載されています。
それが、ニアスペック。 宇宙初期の天体の組成を調べられるのです。 

実は、これまで133億年以上先の遠方銀河で、詳細な分光データが取れた
ことはありません。 ファーストスターがある遠方の銀河でも、ニアスペックは
分光観測できるのか?

そのニアスペックで観測を行ったのは、最遠方銀河を特定した、教授の研究
チームした。 チームは、ジェイムズウェッブやハッブルで見つけた銀河など
250の天体を対象に観測を行いました。そして、ある天体から詳細なデータを
取得することができたのです。

それは、ハッブルが捉えていた134億年前の遠方銀河、GN-z11でした。
これは、ニアスペック分光器で測定した、GN-z11銀河のデータです。
これらの線は、炭素や窒素・酸素・マグネシウムがあることを示しています。

こちらが、ニアスペックで取得したデータ。横軸が波長で、縦軸が明るさです。
窒素や酸素・水素・炭素などの反応が見られました。 これほど遠方の銀河
から、初めて詳細な分光データが取れたのです。

このデータは、ハッブル宇宙望遠鏡や地上の望遠鏡が見る事のできる範囲を
超えています。 データが非常に良いので、このまま観測を続ければ、
ファーストスターを見つけられると確信しています。

ジェイムズウェッブのプロジェクトチームは、この結果に大きな手応えを感じて
いました。 しかし観測データから、もう1つ明らかになったことがありました。
これらは、第2世代の星の元素を表しています。 もっと遠くを見なくては
ならないのです。

水素とヘリウム以外の元素が見つかったため、この銀河はファーストスターの
次の世代、第2世代以降の銀河だと判明しました。 ジェイムズウェッブは、
これからニアスペックを使って、さらに初期の宇宙を探っていきます。

しかし、質量が大きいファーストスターは寿命が短く、数百万年ほどで超新星
爆発を起こしたと考えられています。 そのため現在まで残っている可能性は
低く、遠い昔に放たれた、かすかな光を探すしかありません。

ファーストスターを見つけるのは難しいです。 ジェイムズウェッブでは比較的
狭い範囲しか調査できませんし、望遠鏡を向けた場所にファーストスターは
ないかもしれません。 ファーストスターを見つけるためには、広い範囲を
非常に深く探さなければならないのです。

この広い星空から、ファーストスターのかすかな光を探し出す、途方もない
ミッション。 ジェイムズウェッブの次なる一手は…。
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コズミック・チャレンジ
ジェイムズウェッブの打ち上げから、およそ7カ月後。 衝撃的なニュースが
発表されました。 1年ほど前、予想以上に大きな衝突がありました。 5年に
一度はあると予想をしていましたが、打ち上げから半年で起きました。

鏡に衝突したのは、砂粒よりも小さい天体と考えられています。 しかし、
ジェイムズウェッブは、毎秒30キロものスピードで移動しているため、正面
衝突すると、大きな衝撃を受けるのです。

原因究明と復旧に活躍したのが、赤外線観測装置ニアカムです。 実は、
ニアカムには、自らの機体を見ることができる、人間の目のような役割がある
のです。

ジェイムズウェッブは、18枚の鏡で集めた光を調整して、天体の画像を作成
します。 ニアカムで確認したところ、天体が衝突したのは右下の鏡だという
ことが分かりました。

その結果、衝撃によって鏡が、200ナノメートルほど、ゆがんでしまったの
です。 そこでニアカムで見ながら、鏡の位置を調整することになりました。
鏡を調整して、反射の仕方を変えました。

衝突した鏡と、ほかの鏡との位置関係を調整することで、ほとんどの影響を
取り除くことができたのです。 これ以上、衝突しなければ大丈夫です。 でも
あまりに早く起きたので、私たちは怖くなりました。 計画を変更するか、検討
しました。 エンジニアチームを中心に衝突についての対策が議論されました。

“2年目の観測計画が送られてきましたが、回避ゾーンが、どう影響するか
分かりましたか?”  “はい、あとは観測計画の最終決定を待っている段階
です”   “事前に計画日程チームに知らせるのはどうでしょうか?”
“可能性はありますが見込みはどうでしょうか?実際は、我々は、期間を変え
ないので…”

対策チームが考えたのは、事前に小天体の情報をキャッチして回避ゾーンを
設定すること。 小天体が来る方向には鏡を向けないようにして、正面衝突を
防ぐことにしたのです。

私は、ジェイムズウェッブに携わって、26年になります。 このミッションに恋を
しているので、ジェイムズウェッブに長生きしてもらうため、最善を尽くしたいと
思います。
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ファイル-3 未知なる領域へ
果てしなく遠くにあるファーストスター。 この広大な宇宙の中から見つけ出す
のは、至難の業です。  そんな中、ファーストスター発見に向けて注目を
集めている現象があります。

こういう所ですね。 これ例えば、レンズで、のびたみたいに、ここに質量が…
中心があって、そうすると、もう周りのものが全部、こういう風にストレッチされ
のびているのです。 これ全部、重力レンズの効果なのですけど。

重力レンズとは、遠くの銀河の光が巨大な重力によって、レンズのように曲げ
られる現象です。 しかし、この現象の特徴は、ただ光を曲げるだけではあり
ません。

銀河の周りに細かい点が見えるのですけど、これは、この銀河の周りにある
星団で。 普通だったら見えないような細かい構造が、重力効果によって
後ろにあるものを、より細かく、そして明るく拡大されて見えてきて…。

実は重力レンズは、遠くの銀河の光を拡大して見せてくれる、虫眼鏡のような
効果があるのです。 ジェイムズウェッブの観測から、カナダの研究チームが
論文を発表しました。 重力レンズの効果で新しい星団を発見したのです。

南半球の、とびうお座の方向にある銀河団(SMACS0723)。 拡大すると、
不思議な形の銀河があります。 スパークラー銀河。 スパークラーとは、
線香花火という意味です。

このオレンジ色の丸1つ1つが星の集合体だということが分かってきました。
これらの天体を赤外線で、さらに詳しく調べます。 すると、12個のうち5個が
非常に古い恒星の波長と一致。 球状星団だということが分かりました。

球状星団とは、10万から100万個の恒星が、お互いの重力によって、丸く
集まっている天体です。 しかも球状星団は、とても古い時代に形成された
ものです。 そのため、この球状星団の中にファーストスターが含まれている
可能性があるというのです。

重力レンズ効果と、ジェイムズウェッブの能力を組み合わせた観測に、大きな
注目が集まっています。 さらに現在、NASAは、次の宇宙望遠鏡の開発も
進めています。

2027年に打ち上げを目指しているナンシー・グレイス・ローマン宇宙望遠鏡
です。 この望遠鏡の最大の魅力は視野の広さ。 ジェイムズウェッブの視野の
100倍にも及ぶといいます。

闇雲に宇宙を探すよりも、ローマン望遠鏡の広い視野で観測することで、
より多くのファーストスターの候補が見つけられます。 見つけた候補を、
ジェイムズウェッブで観測すれば、ファーストスターだと特定できるのです。

将来的には、ローマン望遠鏡とウェッブ望遠鏡のデータを組み合わせることで
ファーストスターが見つかるかもしれません。 ジェイムズウェッブが本格稼働
して1年。 2年目の観測にも、大きな期待が寄せられています。

世界中から1600を超える観測が提案され、そのうち250件が選ばれました。
あのユニバースブレイカーを見つけた、助教のチームの提案も採択。 6つの
大きな銀河をニアスペックで、分光観測することになりました。

これによって、銀河の質量が特定できると、宇宙初期の歴史が変わってくる
可能性があるのです。 一方、最遠方銀河の候補を見つけていた東京大学の
助教も提案を出していました。

採択されたのは、南米・チリの望遠鏡で見つかった遠方の銀河の観測です。
134億年より前で、とても明るい銀河とみられていますが、まだ距離や性質は
ハッキリ分かっていません。 (XMM3-3085)

ジェイムズウェッブで分光観測をすれば、最も明るい最遠方の銀河だと特定
される可能性があるのです。

こういうのを皆さんに伝えることで、宇宙って、こんなにいろいろ面白いのだと
いうことを分かってもらって、そのワクワクするような気持というのを皆さんに
与えることなのかなと思っています。 そういう皆さんの知的好奇心を頑張って
刺激するような研究が、続けられるのがいいのかなと思っています。

天文学者になるには、すばらしい時代です。 これまで見ることができなかった
遠方の銀河を発見し、多くのことを学んでいます。 今、天文学者でいられる
ことは、本当にエキサイティングで楽しいことだと思います。

宇宙の深淵を理解することは私たちが、どのような存在であるかを理解する
のに役立ちます。 私たちの誕生から何十億年も前に、どのような種類の星が
生まれてきたのか、地球が誕生する前に起こった宇宙の偉大な叙事詩です。
これは、最後のフロンティアなのです。

人類が手にした最も遠くが見える望遠鏡ジェイムズウェッブ。 観測は2年目に
入りました。 一体、これから、どんな発見があるのでしょうか? 未知の領域
への挑戦は、まだまだ続きます。